第251話 空飛ぶどんぶり!?
昔遊んでたゲームに出て来たキャラを思い出したら、何故かラーメンっぽくしたくなった。
酷い揺れだ。日本は地震大国とは言うものの、非常にけたたましい。
グリム達はそんな揺れに何とか耐える。
本当は避難するべきなのだが、そんな暇がなかった。
「グリムさん!?」
「落ち着いて。ここは森の中。燃えるものも無ければ、波も来ない。幸い地面も割けてない……それなら大丈夫。このままジッとして」
二次災害は無い場所だった。
そのおかげか、恐怖と戦うだけで済む。
それがとても辛いのだが、気が付くと揺れは収まっていた。
「揺れが、収まった?」
「そうみたいだね」
「グリム、今の揺れはなんや?」
「さぁ、それは分からないよ」
グリムでさえ答えは出せない。
これが自然災害による、偶発的なものなら尚更だ。
けれどつい考え込んでしまうと、眉間に皺が寄った。
「でも、怪しいね」
つい口ずさんでしまった。
明らかにタイミングが見事すぎる。
これはモンスターの仕業? それとも土地の魔力?
どちらにせよ、安心はできない。
「今の揺れがなにかしら原因があるとすれば、あるいは……」
奇妙なことを考えてしまった。
モンスターも生息していない、確認されて居ない森の中。
そこにふと人間が立ち入り、嫌われた。自然が生きているのは一度置いておくとして、別の原因があるとすれば、まさしく龍の存在を強調しているようなものだった。
「本当に龍が……ん?」
その時だった。グリムは不思議な感覚に苛まれる。
スキルとか一切関係ない。
気が付いた者にだけ見せる、一瞬の境地だ。
「ファドラァァァァァァァァァァァァァァァ!」
耳の奥、鼓膜を突き破るような咆哮。
耳障りにさえ感じるそれを受け、つい耳を押さえる。
頭の中がキーンとするが、そんなことは如何でもいい。
「今のは!?」
ふと視線が奪われる。
咆哮の聞こえた方向に視線を向けた。
すると木々が揺れ、木の葉が舞う。その奥で、巨大な物体が蠢いた。
「アレは……えっ?」
「な、な、な、なんですか、グリムさん!? アレは一体……」
木々を押し退け現れる。
フワリと宙に浮きあがる物体。
それは完全にとんぶりだった。
「がーはっはっはっ! 面白いねや」
「す、凄い。なんかヤバい!?」
確かにヤバいかもしれない。
もうそれ以上には言えない。
何せ巨大などんぶりの周りを五つの火球がクルクルと回っている。
どんぶり自体もそうだが、あの火球の正体、何かは分からないがグリムは危機感を覚える。
「全体的になにか引っ掛かるな」
何処からツッコんでいいのか分からない。
そんな状況が間を奪い去ると、どんぶりはクルクル回って移動。
宙を掛けて木々の頭上を悠然と去る。
視線で追い掛けてみるが、一向に龍が現れる様子は無い。
咆哮がまるで意味をなさないと、グリム達はポカンとしていた。
「ん? なにも起きないのかな?」
「お、起きないですね」
「あはは、起きないねー」
本気で何も起きなかった。
グリム達の戯言が雑談になる。
誰も答えはくれないが、貰ってもよく分からない。
もしかして龍の正体はどんぶりだったのでは?
所謂“新説”って奴なのだろうか?
グリムの思考が完全に消し炭になると、白紙になってしまった。
「えっと……その」
それからしばらく立ち尽くしていた。
グリム達は放心状態になっていた。
けれど「ねぇ……」とフェスタが話しかけるので、ようやく解放される。
「ねぇ、今の見た!?」
フェルノが鼻息を荒げている。
おまけに拳まで握っている。
よっぽど興奮したらしく、グリムは頷く。
「見たよ」
「私も見ました。飛んでましたね、どんぶり」
「うん、どんぶりがね」
宙を舞っていたのは明らかに人工物だった。
自然界にはあり得てはいけないもの。
しかも相当なサイズ感で、どんな原理でクルクルUFOの様に飛び回っているのかは不明だ。
「確かにどんぶりだったね。じゃないよー!」
「いや、どんぶりだったよ?」
「それはそうだけど……そうじゃないんだよ!」
何故かフェスタは納得してくれない。
アレは如何見たってどんぶりだった。
それ以外の何物でも無いのだが、言いたいことが違うらしい。
「あんなのが宙を舞ってたんだよ。絶対なにかあるよ!」
「だろうね」
「だろうねって、あっさりしてるなー。もっとテンション上げようよ!」
「上がってるよ。でもここは冷静にならないとね」
フェスタの熱い熱弁を喰らった。
それでもグリムは冷静でいようとする。
けれどフェスタも、隣に居る同じ貉のリュウマにも、そんな気持ちは伝わらない。
「冷静でなんかいられるか。とにかく追い掛けるで!」
「リュウマまで。そんな軽率なこと……あっ、ちょっと待って」
「グリム、私も追い掛けるよ」
「フェスタまで!? ……あっ、行っちゃった」
リュウマとフェスタは森の中に直進。
グリムの話なんて全然聞いてくれない。
溜息を付いてしまうと、Dは慌てていた。
「ど、ど、ど、どうしましょう、グリムさん!? 皆さん、行っちゃいましたよ」
「そうだね。はぁ……これも個性かな?」
「それでいいんですか!」
グリムは“個性”だと割り切った。
こんなことが言えるのは、流石にグリムくらいだ。
全て受け入れると、それをまとめ上げる。
「いいよ、私はね。さてと、それじゃあ追い掛けようか、D」
「わ、分かりました」
「ありがとね、D」
グリムはDに感謝した。否、全員Dに感謝するべきだ。
本島なら全員で行動した方がいい筈。
それができない今、ここは折れるしかない。
グリムはDと共に追い掛けることにした。
それにしてもあのどんぶりの正体は何か。
嫌な予感がすると、グリムの直感が訴え掛けていた。
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