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第250話 当然ができる人

当然のことって、なんなんですかね?

「みんな、怪我はしてない?」

「なんとかねー」


 グリムは無事にどんぶりを破壊した。

 鎌の湾曲した部分で逃がさないようにしたのは功を奏したらしい。

 自立して動いているのか、それとも本体に戻ろうとしていたのか。

 今となってはどっちでもいいものの、そのパターンを潰せたのは大きい。


「とは言え、油断したね。もう少し早く動いていれば……」


 グリムは自分の爪の甘さを痛感した。

 肩に掛けた鎌が震え出す。

 そんな姿を見せてしまったせいか、突然Dがグリムの服の袖を引っ張った。


「D?」

「凄いです、やっぱりグリムさんは凄いです!」

「凄くないよ。でも褒めてくれてありがとね」


 グリムは煽てに乗らない。

 けれどDは目をキラキラしている。

 信じたものを疑わない。その姿勢は綺麗だ。


「でも、グリムさんのおかげで助かりました。ありがとうございました」

「そんな畏まらないで」

「はむっ……」


 グリムはDの頭をソッと撫でる。

 柔らかい髪が手のひらに吸い付く。

 するとフワフワしていて、Dの顔色も自然と赤くなる。

 恥ずかしいのかな? と思いつつも、人目なんか気にしなかった。


「ひゅ~」

「アレなんだよねー、グリムはアレが分かってないんだもんねー」


 何やらリュウマとフェスタがチラ付く。

 適当なことを言っているが、よく分からない。

 けれどグリムは首を捻るも、Dを撫でるのを止めずに黙らせた。


「グリムさん、も、もう、大丈夫です」

「本当にいいの?」

「えっと、それじゃあもう少しだけ、お願いしたいです」


 Dは貪欲に噛み付いた。

 もちろんグリムは嫌な気がしない。

 けれどいつまでもこうしていられない。グリムは気を取り直して撫でるのを止めると、Dは名残惜しそうで物欲しそうにする。


「それより……」

「なんじゃ?」


 ふとグリムの視線がリュウマに向く。

 何故だろうか? Dは慌てる。

 オドオドしてしまう中、グリムは笑みを浮かべた。


「リュウマもありがとう」

「ん?」

「消化してくれて助かったよ」


 グリムはリュウマの行動を見ていた。

 燃えている木を消化してくれた。

 それは命懸けの行動だと、グリムは知っている。


「がーはっはっはっ、気にするな、当たり前のことや」

「当り前のことね。でも、行動ができるのは凄いことだよ」


 目の前で火災が起これば誰しもが行動に変化が出る。

 そこで慄いてしまい、怯えて動けなくなるのか。それとも、身を奮い立たせて行動に起こせるのか。どちらかが基本だ。


 その中でもリュウマの取った行動は後者。

 身を奮い立たせると、率先して危険の中を動いた。

 熱線の恐怖さえ顧みない行動はまさに漢だ。


「あのままこの木が燃えちょったら、儂達も危険やったろ?」

「だろうね」

「ほんじゃあきに消しただけや。まあ、ありがたがられるのは嫌やないがな。がーはっはっはっはっはっ!」


 リュウマは笑って済ませてしまう。

 それだけ自然なことだったらしく、あのまま木が燃えていれば大変だった。

 最悪の場合、森が全焼。もちろんグリム達の精神もタダでは済まない。

 それを未然に防いでくれただけ、命の恩人だ。


「それだけの行動が取れるのが凄いんだよ」


 グリムは素直に褒めた。

 けれどこれ以上煽てたりはしない。

 リュウマの扱いを考える中、グリムはふと脳の許容量(キャパシティ)を奪われる。


「それにしても、あのどんぶりは一体……」


 グリムはつい考え込んでしまう。

 何せどんぶりが宙を浮いていた。おまけに熱線を放っていた。

 あんなもの、怪しいに決まっている。

 何とか割ることには成功したが、それでも不自然だ。


「まあ、考えても仕方がないかな?」

「そうやぞ、グリム。考えたち碌なことがないさな」

「リュウマ……説得力が違うね」

「そうろ! がーはっはっはっはっはっ」


 リュウマの言葉には説得力があった。

 本当に何も考えていないみたいだ。

 この状況を常に楽しんでいる。

 確かに見習うべきかもしれないと、グリムは諦めた。


「そうだね。そうするよ」

「グリムさんが思考放棄しちゃいました!?」


 Dは愕然としてしまった。

 そんな顔しなくてもいいのにと、グリムは思う。

 けれどDにとっては、カッコいいグリムの方がいいらしい。

 難しいものだと思った矢先、グリムは違和感を覚えた。


「ん?」


 グリムの目が捉える。

 【観察眼】が発動すると、木の葉が揺れている。

 別に無風って訳じゃない。けれどグリムは嫌な予感がした。


「なにか、嫌な予感が……はっ!」


 その時だった。

 突然地面が割けるように揺れた。

 無性に恐怖が湧き上がると、グリム達即席パーティーを襲う。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタ!!!


 けたたましい轟音が響き渡った。

 地響きが全身に伝わる。

 立っていることさえ困難になると、グリム達はしゃがみ込んだ。


「な、なにこれー?」

「グリムさん、怖いです」

「一体なにが起きてるんだ!」

「さぁ、私に言われても分からないよ」


 少なくともリュウマがキャラを放棄するくらいにはパニックになっていた。

 それだけ凄まじい揺れだ。

 明らかに原因がある筈。地震の恐怖を感じると、冷静ではいられない。だからこそ、グリムだけは冷静でいようと思った。

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