第249話 どんぶりを壊して?
そもそも木が燃えるのではなく、木の皮だけが燃えるのって、ヤバくない? これが龍の力?
非常にマズいことになっていた。
まさか両方から攻撃されるなんて思わなかった。
「どうしよう、グリム。このままじゃ炎が!」
「グリムさん、あのどんぶりは一体……」
フェスタとDの質問の板挟み。
両方からの攻撃を受けてしまうグリム。
どちらを優先させるべきだろうか。ひたすらに脳を使う。
(炎は直に広がる。そんなことになればこの森はお終いだ)
そうなれば精神的なダメージを受け兼ねない。
ただのゲームではない。だから怖い。
グリムはそう思うが、どんぶりも無視できない。
次ぎ、いつ熱線が放たれるかは分からないのだ。
(本来なら人数を分けるべき……だけど、それができないならどんぶりを優先……いや、勝利の糸口を見つけないと……)
様々な思考をグルグル掻き混ぜた。
そのせいか余計な心配まで浮かぶ。
グリムらしくなかったが、いつもと調子が狂っている。
「どうしようかな」
ふとリュウマに視線を飛ばした。
扱いが難しくて困ってしまう。
そんな思惑が眉間に皺を作るも、リュウマ自身、行動を制限する。
「ここは儂に任せ」
「えっ?」
まさかの提案だった。
しかし自分から動こうとしてくれている。
その善意を無碍にはしたくないと思った。
「消化できるの?」
「当然や。だからな、炎のことは気にしなさなんな」
「そっか……それじゃあ頼めるかな?」
ここは乗ることにした。
するとリュウマはフェスタに声を掛ける。
フェスタも巻き込んで消火作業に移るらしい。
「おまんが心配することやない。堂々としちょったらええがよ
「分かったよ。それじゃあ頼んだよ」
「がーはっはっはっ! 頼りにしちょーぞ」
リュウマは笑っていた。
よっぽど自信がありそうだ。
これは信じる他ない。
消化の方は二人に任せた。
けれどここからが大変だ。
どんぶりはグリムとDを見ているようで、攻撃は苛烈。
パシュン! パシュンパシュン!
どんぶりは熱線を放ち続けている。
流石に当たったらマズそう。木や地面が教えてくれていた。
「ううっ、怖いです、グリムさん」
「落ち着いて、D。大丈夫だからね」
根拠もなくDのことを励ます。
脇に抱え込むと、Dのことを安心させる。
とは言え安心できないのは確かだ。
「それにしても、どうやって近付けば……」
もちろん接近することは可能だ。
けれど隙がまるで無い。
そう思って注意深く、【観察眼】を使って周りを見回すと、「あっ」とグリムは唱える。
「グリムさん?」
「それにしても妙だね。威力の差があるのは何故?」
グリムはふと考えてしまう。
けれどそれが何の話なのか?
確かに威力にムラがあるのは不自然なことで、所謂時間遅延って奴なのではないだろうかと推測する。
「ラグ? そっか!」
グリムは気が付いた。
あまりにも単純な話だった。
アレだけの熱線だ。相当エネルギーを使うに決まっている。
「グリムさん、なにか分かったんですか?」
「分かったというより、試してみたいことかな」
「試す……あのグリムさん?」
グリムはある種の作戦を考えた。
もちろん作戦なんて言えない。
けれど試してみたいことで、グリムはDにも協力を仰ぐ。
「D、少しだけでいいから注意を惹き付けてくれないかな?」
「注意をですか?」
「うん。もちろん危険だから、絶対って訳じゃないけど……」
「やります、やらせてください!」
何故か目をキラキラさせるD。
やる気に満ち溢れていてむしろ怖い。
引いてしまいそうになるグリムは奥歯を噛む。
「ありがとう、でも無茶はしないでね」
「分かりました」
何だか無理も無茶もしてしまいそう。
不安が過ってしまうが、ここはDのやる気を買う。
グリムとDは立ち上がると、どんぶり相手に攻撃を仕掛ける。
「それじゃあ行くよ、D」
「はい、任せてください」
ここからは短時間が勝負になる。
グリムは余計な思考は排除。
D自身に自分のことを任せて突っ込む。
「〈運命の腕輪〉、モード:攻撃!」
Dも応戦する構えを見せた。
宙に浮かぶどんぶり目掛け、手にしている戦輪を投げる。
【投擲】のスキルも相まって、クルクル回転して飛ぶ。
小さなどんぶりを丁寧に狙っているようで、軌道は間違いない。
だけど、戦輪が届くことは無かった。
パシュン!
「えっ、戻って来ちゃいました?」
どんぶりから放たれた熱線。
それを受けて戦輪は悲鳴を上げる。
回転が殺されると、機動力も削がれ、素早くDの手元に帰る。
「そんな……ごめんなさい、グリムさん。私……あれ?」
Dは役に立てなかったことに酷く落ち込んだ。
隣に立つグリムの役に立てない。
それが苦痛で仕方が無く、震える口振りで謝るが、そこにグリムは居ない。
「囮役ありがとね、D。後は私は仕留めるよ」
いつの間にか姿勢を低くして駆け出していた。
Dが注意を惹き付けている間にどんぶりに近付く。
そのおかげか、グリムは素早くどんぶりの背後を取った。
「熱線を放った後はラグがる筈」
地面を蹴り、木の幹を蹴り上げ、三角跳びで襲い掛かる。
クルンと回り込んだどんぶりだけど、熱線は出ない。
やはり時間遅延があるらしい。
そのおかげか、熱線は繰り出されない。
「悪いけど、逃がさないからね」
大鎌を〈死神の大鎌〉を不意上げたグリム。
赤く光る瞳が怖い。
獲物を捉えて逃がさないと威圧すると、上から湾曲した刃でどんぶりを包み込む。
「取った……かな?」
パリン!
ドンぶりに大鎌を叩き込む。
パリン! と罅割れる音が聞こえ、どんぶりを粉々に破壊。
すると地面にバラバラになった破片は散らばるが、熱線を撃つことも、宙を飛び回ることも無くなる。
「とりあえず、これでいいのかな?」
正直手応えはあまりない。
それもその筈、コレが本体とは思えない。
霞を掴んだような感覚になってしまうが、そんなグリムの意識を、フェスタ達が引き戻す。
「おーい、グリムー」
「消火が終わったんじゃが」
呼び掛けるフェスタとリュウマ。
二人の役目は炎の消火だ。
一体どうなったのか。ふと視線を向けると、樹皮を燃やす炎は消えている。
「消火が済んだんだね」
「当然だよー」
「当り前やろ。がーはっはっはっ!」
どんぶりとの戦いの中? 無事に消火を終えていた。
あまりの対応の早さには驚愕。
けれど被害が拡大しなくて良かったと、一旦の安寧を得たグリム達だった。
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