第248話 龍の罠
龍は賢い。このゲームだと大抵そう。
フェスタとリュウマは先行した。
森の中へと突入すると、しばらく走っていた。
しかし立ち止まって腹の底から声を出す。
「おーい、何処―。いたら出て来てよー」
「そうやぞ。いたら返事くらいしぃや!」
フェスタとリュウマは叫んだ。
けれど一切返事は返って来ない。
そのせいか、二人して立ち尽くしてしまった。
「出て来ないねー」
「そうやねや」
フェスタとリュウマは放心する。
先程聞いた鳴き声は一体なんだったのか?
気のせいだったとは言わせない。それだけは誰が何と言おうと許さなかった。
「叫んで出てきてくれたら、美味しすぎないかな?」
「そうですよね。ですがグリムさん、どうして吠えたのでしょうか?」
そこにやって来たグリムとD。
正直な話、マジレスしてしまった。
一体何故龍が吠えたのか。明らかにバカな真似だと悟る。
「そんなの決まっているよ。私達は、誘き寄せられたんだ」
「誘き寄せられたんですか!?」
グリムは確信に突いた言葉を吐く。
あくまでもグリム達は龍の手のひらの上。
簡単に言えば、“誘き寄せられた”だけであり、その術中にハマっていた。
「どうしてそう思うがよ?」
「単純な話だよ。私達はここまで誘き寄せられたんだ。そうでもしないと、わざわざ存在を示すような証拠を残さないよね?」
リュウマに問われてしまった。
けれどグリムは臆したりしない。
ちゃんと返す札を持っており、グリムは淡々と自分自身の憶測を認めつつも、リュウマ達に問う。
「まあ、あくまでも私の意見。客観的に捉えただけだよ。それよりみんなはどう思う? ……あれ?」
グリムは全員の顔をしっかりと見た。
目と目を合わせると、何も思い付いていないらしい。
勝ち負けの話じゃないが、グリムに優勢ではある。
「どうしたの? なにか言って欲しいな」
「いやいや、考えてみればそうだよねー」
「グリムさんが言うなら間違いありませんね」
「うん、それはあまりにも押し付けが過ぎるよ」
グリムの言葉にフェスタとDは賛同する。
一瞬にして天秤が傾いた。
分水嶺は常にグリムの言葉に導かれると、Dに至っては心酔のし過ぎ。
グリムは困り果て、頬を掻いた。
「リュウマは? ……リュウマ?」
グリムはリュウマに視線を配る。
すると表情に陰を落としている。
ゆっくりとグリムに近付くと、目の前まで来て眼圧をぶつけた。
「グリム、確かにおまんの意見は正しいかもしれん」
「ありがとう」
「けんど、それだとつまらのうないか?」
グリムは褒められると同時に貶される。
もちろんリュウマとしてみれば、この不安さえ楽しみたいのだろう。
あらゆる困難を渡る船の様に乗り越える。
そんなイメージが伝わった。
「つまらないは別にしても、油断は禁物だよ」
「そうですよ、リュウマさん。今だってどんな罠が待ち受けているか分からな……はっ!」
グリムの意見はある程度正しい。どんな状況でも油断は禁物だ。
もちろんDもグリムに従うと、リュウマは渋い顔をした。
一触即発……とまではいかない状況下、Dは何かに気が付くと、後ろを振り返る。
「皆さん伏せてください。来ます!」
突然Dが叫んだ。
グリム達は耳を澄まし、背筋をピンと伸ばす。
体を突き動かされると、急いでしゃがんだ。地面スレスレまで伏せると、突然頭上を赤い熱線が走る。
「なにが起きたのー!?」
「儂が見ちゃる」
「リュウマ、顔を上げないで」
リュウマは顔を上げようとした。
もちろん第二撃が来ないとは限らない。
顔を上げないようにと言葉で圧を掛けると、流石に思い留まった。
「今のは熱線? しかも炎を直接……まさか!」
グリムは嫌な予感がした。
脳が高速で回転し、視界の先を映し出す。
そこには木がある。樹皮に炎が灯ると、今にも燃えてしまいそうだ。
「マズい、木が!」
「このままじゃ火事になっちゃうよー」
「で、ですが、頭を上げれば次に狙われるのは……」
またしても木が燃えている。しかも一本だけだ。
樹皮に火が灯ると、そのまま上へ下へと火が移動。
このままだと木が一本丸々燃えてしまうかもしれない。
今すぐにでも消した方がいいのだろうが、それさえ罠だった。
「キャッ!」
「D!? 一体なにが狙って……ん?」
Dの悲鳴が上がった。
微かな熱線が最小限の火力でDの頭を狙ったらしい。
まるでスパイ映画でよく投影される赤外線センサーのようで、細いが威力は高い。
何とか躱したDだったが、代わりに地面に穴が開く。
もちろん小さな穴だった。
けれどアレが頭に当たっていたらと思うと、想像もしたくない。
それにしてもどんな方法で攻撃しているのか。
きっと隠れてしまっている筈。
だから見つけることはできないと悟りつつも、グリムは振り返った。
「どんぶり?」
「そうだね。どんぶりだね」
まさか攻撃して来ていたのはどんぶりだった。
空になっている器をこちらに向けている。
奥に何か仕掛けがあるのか? 何故か宙に浮いているどんぶりはエネルギーを溜めると、再び熱線を放つ用意をする。
「嘘でしょー!?」
「いや、嘘じゃないみたいだよ」
溜め込んだエネルギーを一気にぶっ放す。
すると真っ赤な熱線が、烈火を伴い放たれる。
グリム達は逃げるような、避けるような隙も間もなく、熱線を直視していた。
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