表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
234/256

第234話 女王、アップルビー

 Dは焔の虎(※以下、焔虎)に問い掛けた。

 しかし何も返してくれない。

 ただ立ち止まったまま、メラメラと燃える炎を上げる。


 風にそよぎ、炎が揺らめく。

 今にも周りの木々に引火してしまいそう。

 けれどそんなことは無く、地面や草木に触れる前に、パッと消えた。


「もしかしてあの炎は、あのトラの体の一部みたいなものなんですか?」


 メラメラと燃える炎の正体。

 もちろんあくまでも仮説でしかないが、Dにはそう見えた。

 けれど今は関係が無く、もっと大事なこと。それはコミュニケーションを取り、自分が敵でないことをアピールし、次は何をすればいいのか、考えることだった。


「あ、あの……ん!?」


 Dは改めて声を掛けた。

 けれどそれを引き留めたのは、Dの持つスキルだ。

 【気配察知】が発動すると、ビシバシと嫌な感覚が突き刺した。


「この気配……あれ?」


 焔虎も何かを怪しんでいた。

 視線を上に上げると、睨み付けている。

 Dも気になって視線の先を追い掛けると、そこに居たのはモンスターだった。


「アレって、アップルビー? だけど少し大きいような」


 ブー――――ン! ブー――――ン!


 宙に浮かんでいたのはアップルビーだった。

 それにしては、他のアップルビーとは一線を画す大きさ。

 しかみ頭上高くに飛んでいて、完全に安全圏に居た。


「もしかして、あのアップルビーを倒さないとダメってことですか?」


 焔虎は睨み付けたまま動かない。

 如何して攻撃しないのかは分からなけれど、例のアップルビーを倒さないとダメらしい。


「そうなんですか?」

「(コクリ)メラトラァ!」


 Dは焔虎に訊ねた。

 すると焔虎はクルンと回り、Dに頷き返した。

 しかも「メラトラァ」なんて……何だかキャラ付けのようだった。


「頷いた……それじゃあ、私の言葉を理解しているってことですか!?」


 焔虎はDの言葉をシッカリと聞き取って理解している。

 高いINT(知力)が備わっている証拠で、Dの中でモヤモヤしていたものが形を成す。

 明らかに意思疎通ができていて、普通にモンスターとは思えない。


「やっぱり、プレイヤーなんじゃ……」


 Dは焔虎の正体がプレイヤーなのではと怪しんだ。

 けれど今はそれを言ってる暇は無い。

 答えなんて教えてくれないので、Dは真上のアップルビーに視線を飛ばす。


「今はあのアップルビーですよね? それにしても、変な動きをしていますね」


 頭上のアップルビーはおかしな行動を取っていた。

 何故かグルグルと八の字に回っている。

 ハチが八の字……は関係無いとして、Dはアップルビーの大きさが気になる。


「もしかして、女王ハチ?」

「メラトラァ!」


 焔虎はDの呼び掛けに応じた。

 如何やら当たっているらしい。

 つまりあの行動は、何かしらの合図。

 それでも他のハチ達が追従しないのは、全て焔虎が焼き払ってしまったからだ。


「もしかして、見えていたんですか?」

「メラトラァ……」


 焔虎はやけに視野が広かった。

 平面ではなく、立体的に物事を捉えている証拠だ。

 Dは虎にハッとさせられると、胸を押さえる。情けない自分がいたが、今は構っていられない。


「それじゃあ、あのハチを倒せば……終わりってことですね!」


 Dはパンと手のひらを合わせた。

 焔虎もコクリと頷いてくれた。

 女王を失えば、新しい女王が生まれるまで、ハチは命令を受けられない。

 活動に制限を掛けられると、そのまま息絶える。もちろん、残りは女王ハチ一匹だけなので関係無かった。


「でもどうしたら……えっ?」


 流石にあんな高い位置に居るので、Dの攻撃は届かない。

 もちろんバリアを解けば解決するかもしれない。

 Dには【投擲】のスキルがあるからだ。


 けれどそんな暇は無かった。

 他のハチ達が追従しないことに痺れを切らしたのか、珍しい行動を取る。

 翅をバサバサ動かすと、一際大きな体を活かして攻撃を仕掛ける。


「き、来ました!?」


 Dは叫んだ。けれど攻撃できない。

 そんな中、焔虎は地面を蹴る。

 高く跳び上がると、炎の牙を剥き出して、アップルビー(以下、女王ハチ)を噛み喰らおうとする。


「メラトラァ!」


 しかし巨体を活かした威圧(プレス)も効かなかった。

 一際他のアップルビーとは並外れた知性があるのか、焔虎が攻撃を仕掛けると、その場で停止。

 ホバリングを決めると、安全圏で立ち止まる。


「止まった!?」

「メラトラァッ!?」


 Dも焔虎も予想外だった。

 声を上げて慄くと、焔虎の攻撃は届かない。


空ぶってしまうと、成す術なく地面に落ちていく。

そんな無防備な焔虎相手に、女王ハチは攻撃を仕掛ける。

 お尻の小さな針を飛ばすと、黄色い汁が飛んだ。それを浴びた焔虎は突然顔を押さえて悶える。


「メラトララァァァァァァァァァァ!」


 焔虎は苦しんでいた。

 地面を転がって顔を押さえている。

 女王ハチの果汁が顔に掛かり、あまりの強烈な匂いに苦しみ悶えていた。


「ど、どうしたんですか。なにが……うっ!」


 Dはバリアの中から見ていた。

 一体何が起こったのかは分からない。

 けれど焔虎が苦しんでいる姿を視界に収めると、バリアを貫通して、匂いが漂う。


「これって、リンゴの匂い……にしては甘すぎる。気持ち悪い」


 尋常ではない甘い香りが漂っていた。

 Dは冷静にリンゴの匂いだと分かった。

 けれど他のアップルビーとは比べ物にならない。

 破壊的なまでの濃い匂いが充満すると、もはや甘さによる凶器。

 Dも焔虎もこの匂いに脅かされると、力を失った。


「うっ、こんなの……聞いてないですよ」


 Dは指先から力が抜けてしまった。

 地面に座り込むと、そのまま動かなくなってしまう。

 それでもバリアだけは絶えず展開されていて、中に居るDを守る。


 それでもバリアには制限時間がある。

 残りは五分も無いだろう。

 N:ブルから聞いていた話とは全然違い、Dは意識を飛ばしそうになっていた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ