第231話 D、依頼を受ける
ついにEX開幕。
完全にネタ切れの閑話休題です。
今回の主人公はDです。初めてソロ依頼を受けたDに待つのは……
【お知らせ】
新作……カクヨムで投稿していた作品をアップしました。ネトコン13、締め切りまであと僅か、ラストスパートです。
「【狂気】生贄にされた少年、最強冒険者パーティーに育てられ、“最狂”のサイコパス冒険者になりました」
→https://ncode.syosetu.com/n5491ku/
〈《アルカナ》〉がギルドになってからしばらく。
Dは一人でギルド会館に足を運んだ。
それもその筈、今日はグリムとフェスタ、ミュージュの三人で、依頼を受けることになっていた……のだが。
「ええ、グリムさん達、来られないんですか!?」
Dは送られてきたメッセージを読んだ。
そこにはこう書かれている。
グリム:ごめんね、D。私達、今日は遅くまで大学の講義を受けることになっているんだ。だからPCOにはログインできないから、突然だけど予定変更にするね。私達のことは気にせずに、Dも自分のやりたいことに時間を使って欲しいな
グリムらしい丁寧なメッセージだった。
如何やらこれを送るためだけに、PCOにログインしたらしい。
既にフレンド欄にグリムの名前はあっても、ログイン中の表示は無い。
即座にログアウトした様子で、Dは受け止めた。
「それじゃあ私一人だけ……ですか?」
今日はグリム達は忙しい。PCOにログインしない。
もちろんそんな日があるのも当然だ。
けれどDの予定では、グリム達と遊ぶことになっていた。
それが崩れてしまうと、何をしたらいいのか分からなくなる。
「どう、したらいいんですか。私、一人で……」
一人でギルド会館に居るのは気まずい。
何せ何もすることが無いんだ。
ましてや依頼を受ける気なんて慣れない。
しどろもどろになって、その場に立ち止まり、タジタジになっていた。
「あっ、N:ブルさんだ」
ふと顔を上げると、Dの視線の先の受付カウンター。
そこに居たのはN:ブルだった。
何故か手招きをすると、Dのことを呼んでいた。
「こんにちは、N:ブルさん」
「こんにちは、Dさん。本日はお一人ですか?」
「は、はい……皆さん忙しいみたいで」
N:ブルはギルド会館で働いている受付嬢のNPCだ。
グリム達〈《アルカナ》〉とはいい付き合いをしていて、ここまでの関係値はそれなりに高い。それだけ信用されている証拠の様で、ここまでマメに頑張って来た甲斐があった。
とは思いつつも、今日はD一人だ。いつもはグリム達と一緒だが、その姿が無いことに、少しだけ違和感を感じている。
「そうですか。では丁度良いので、なにか依頼を受けてみませんか?」
「ええっ!?」
何が“丁度良い”のかは分からない。
それでもN:ブルは一人で居たDに声を掛けた。きっと都合がよかったのだろう。
もちろんDは声を上げて慄くと、自身が空っぽに無かった。
「また突然ですね」
「数日前に別のギルドから依頼がありました。どうされますか?」
あまりにも突然で、Dは驚いた。
もちろんそれは織り込み済みで、数日前に他のギルド、つまりはプレイヤーから依頼があったのだ。
だから突然のことで何も不思議ではないのだが、Dは些か慎重になる。
「私、一人ですか?」
「はい。報酬が一人分しか用意なかったみたいです」
報酬はギルド側が出してくれるけれど、個人間の場合は個人で何割かは出資しなければいけない。ギルドはそれに対して色を付け、補填を行う。
もちろんギルド側も補填した分は、買い取った素材などを加工することで、様々な形で資金源にする。
プレイヤーやNPC同士で、上手い具合のコミュニティが出来上がっていた。
「ちなみにその依頼って、なんですか?」
「はい。〔アップルビーの捕獲〕です」
「あ、アップルビー?」
全く知らないモンスターの名前だった。
当然Dは首を捻ると、頭の中でリンゴとハチを想像する。
だけどどんな形でくっ付いているのかは、あまり想像できなかった。
「その、アップルビーを?」
「捕獲する依頼です」
「捕獲……それじゃあやっぱり、モンスターなんですね」
如何やらモンスターであることは確定した。
何となくだけど、ハチは凄く怖い。
きっと難しい依頼で、それを一人でなんて、とてもじゃないけれど、無理だった。
「それを一人で、ですか?」
「はい。アップルビーは、そこまで強いモンスターではありませんから」
「強くないんですか?」
「巣を襲えば反撃してきますが、それ以上に危険なことは無いですね。ハチですが、独は無いので」
Dは心配になったから、N:ブルに訊ねた。
如何やらアップルビーはあまり強くない魔物らしい。
毒が無いとはいえ、それでもハチはハチだ。
危険に飛び込むのは変わりないらしい。
「どうされますか?」
「どうされる……って、言われても」
完全にN:ブルの口車の上。
Dは追い詰められてしまうと、モジモジしてしまう。
視線をキョロキョロさせ、挙動不審な態度を取る。
「えっと、その……私じゃないと、ダメなんですか?」
「そんなことはありませんよ。ですが」
「ですが?」
如何やらDが依頼を受ける必要は無いらしい。
けれどN:ブルは言葉に含みを持たせた。
Dは目を見開くと、瞬きを二回する。
「Dさんが一人で寂しそうにしていたので、提案してみただけです」
「ええっ!?」
Dは喉を詰まらせそうになる。
それもその筈、まさかのNPCに手を差し伸べられた。
それが恥ずかしいのと同時に、どうしようもなく自分が嫌いになる。
ただでさえ小さいのに、心まで小さく情けなく見えた。
「N:ブルさん。私、そんなに寂しそうでしたか?」
「はい、そうですね。私の目では」
「ううっ……」
確かにDはぐぅの音も出なかった。
それもその筈、本当に寂しい。
グリム達と遊ぶことがDにとって、凄く楽しくてワクワクしていた。
それが一日減っただけで、心が擦り減ってしまう。自分の小さな小さな支えだった。
「勘違いだったらごめんなさい。それではこの依頼は……」
「受けます!」
「えっ? 受けられるんですか?」
N:ブルは別の人に依頼を振ろうとする。
その瞬間、Dの中の何かが蠢く。
思考よりも先に体の方が働くと、「えっ?」と自分でも声を上げた。
「あっ、えっと、その……」
「受けられるんですね、この依頼?」
言ってしまった以上仕方が無い。
Dは断る勇気が無かった。
N:ブルから少しだけでも信頼されている。だからこそ、この依頼を任せてくれたんだ。
そう思ってしまうと、Dは破裂しそうな心を勇気で一杯にした。
「はい、頑張ってみます」
「では、お願いしますね、Dさん」
「はい!」
DはN:ブルの口車に乗せられた。
今回の依頼は個人的な物。ギルドにはpが入らない。
それでもDは頑張ってみることにして、ギルド会館を後にした。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。