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第230話 幻は現実に

第5章終了です。

次回からSSに入ります。

「さてと、全員揃った所で」

「ん?」


 全員揃ったことに意味がある。

 グリムはインベントリからアイテムを取り出す。


「ナニヲサレルノデショウカ?」

「コレを聴こうと思ってね」


 インベントリから取り出したのはレコードだ。

 かなり古いものだが、手入れはされている。

 一応グリムも安っぽい知識だが、レコードの手入れをしてきた。


「レコードね。って、それ言ってた奴!?」

「そうだよ。シRキー、プレーヤーを借りてもいいかな?」


 リビングには立派なプレーヤーが置いてある。

 けれどシRキーに許可を貰わないとダメだ。

 そう思い訊ねると、シRキーは了承してくれた。


「構イマセンヨ」

「ありがとう。それじゃあ試してみようか」


 グリムは早速レコードを試してみることにした。

 溝が一つしかないと言うことは、一曲分しかない。

 つまりどれだけ聴いてもこの曲がループする訳だ。


「さてと、どんな曲が流れるかな」


 レコードの針を合わせると、四十五回転で試してみる。

 シングルなので四十五回転にしてみた。

 それは如何やらあっているのか、レコードがクルクル回り出す。


「……」

「「……」」

「……ん?」


 フェスタは声を上げた。喉を震わして首を捻る。

 正直言いたいことは分かる。

 グリム達も同じ気持ちで、瞬きをしてしまう。


「おっ!?」

「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」


 感想が淡白になってしまった。

 だけどそれも仕方が無い。

 このレコード、(ファンタズマ)レコードは共感ができないのだ。


「アノ、皆サン。ドウサレマシタカ?」


 シRキーには聴こえていないらしい。

 確かにこの音楽は変だ。あまりにも変過ぎて気持ちが悪い。


 一体なにを意味しているのか。

 もちろん簡単な話だ。

 この音楽は、完全に“脳に直接流している”。


「なるほどね。こんな感じか」

「そうね。面白いわ」


 一曲辺り五分ちょっとだ。

 最後まで聴き終えると、ループしそうになるので、一旦曲を止める。

 

「ううっ、なんか頭がポワポワする―」

「そうですね。気持ちがいいです」


 このレコードには一種の中毒性がある。

 それもその筈、常に脳を刺激している。

 そのおかげか、聴いているだけで頭の中がフワフワするのだ。


「凄いリラックス効果……なのかな?」

「リラックスだけじゃないわ。ストレス効果も高めてる」

「洗脳されそうだよね」

「そうね。それで、貴女達はどんな曲が聴こえたのよ?」


 このレコードには特殊な作用がある。

 それこそ、“聴く人により曲が変わる”のだ。

 そのせいか、それぞれの意見をすり合わせることができない。

 ちなみにミュージュには柔らかい曲調に聴こえたらしい。


「私はクラシックみたいだったわ。ピアノの主張が強かったけど」

「そうなのー? 私はロックだったよー」

「ロック? フェスタらしいわね」


 人によってまるで違う。

 ミュージュにはクラシックが、フェスタにはロックが当てられる。

 それだけ個性が出ているらしく、Dは恥ずかしそうにする。


「あ、あの、私は、その……」

「あれー? もしかして、Hな奴とか……」

「い、いえ、違います! 私はファンシー系でした」


 Dは可愛い物が好きそうだ。

 歳相応と言うべきか、Dらしい音楽だったらしい。

 グリムはにこやかな笑みを浮かべると、ソッと頭を撫でた。


「可愛いよ、D」

「ううっ、なんだか恥ずかしいです」

「いいよ。人によって違うから」


 Dは本気で恥ずかしそうだった。

 顔が赤らむと、体が震えている。


「そういうグリムはどうだったのよ?」

「私? 私は……」


 するとミュージュ―がグリムに訊ねる。

 一体どんな音楽が聴こえたのか、気になってしまった。


「なにも聴こえなかったよ」

「「「ん?」」」

「もちろん完全な無音じゃなかったよ。だけど、無数の音楽がぶつかり合って、互いに邪魔をし合ってた。そのせいかな? 上手く聴き取れなかったんだよ」


 グリムは誰よりも違った。それだけ感性が違った。

 そのせいかレコード側が判断できなかった。

 頭の中に聴こえた音楽が絡み合うと、無音ではない、むしろ様々に絡み合った。


「聴き取れなかった?」

「うん。不思議な話だよね」


 不思議というよりも不自然な話だった。

 一つのレコードから複数の音楽が同時に聴こえることはない。

 ましてや溝は一つだけだ。この時点でややこしい。


「不思議って、それで片付ける気?」

「そうだよ。なにせこのレコードは」

「幻だもんねー」

「正解」


 フェスタはノリがよかった。

 残念なことにミュージュは納得ができない。

 けれど納得していないのはグリムも同じことで、楽しみにしていたものが一つ潰れた。


「でもいいんだ。今はそれで」


 もはや痩せ我慢のような口振りだった。

 グリムは諦めてしまうと、ポツリとDが口にする。


「ですがグリムサンだけ聴こえないのは寂しいですね」

「だよねー」


 Dとフェスタはグリムのことを思ってくれた。

 けれど致し方が無いことだ。

 上手く聴こえないのならそれが聴こえるようにするしかない。


「なにか方法は無いのかしらね?」

「それは……まぁ」


 いや、グリムには察しが付いている。

 コレを良いと捉えるか悪いと捉えるか。

 結局はそれだけの話だ。


 だからだろうか。グリムはこう思った。

 “まだ定まっていないなら、可能性は無限に広がっている”。

 

 今は幻のレコードの音楽がハッキリとは定まっていない。

 つまりそれだけ可能性も広がっている。

 いつの日か帰着することを楽しみに待つと、雑音混じりの幻のレコードに耳を傾けていた。

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