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第223話 三人目はメカニック?

この人がいなかったら、どうなっていたことか。

 あれから数日。

 グリム達は再びアイテム屋:デンショバトへと足を運んだ。


 しかも今日の所はアポ無しじゃない。ピジョンからの呼び出しだ。

 内容は単純明快。如何やら頼んでいた変換装置が完成したらしい。


「ついにできたんだねー」

「そうだね。それにしても早かったね」

「はい!」


 グリム達はデンショバトの扉を開く。

 カランカラーンと入店のベルが鳴った。


「ピジョン、言われた通り来たけど……ん?」


 グリムはピジョンに声を掛けようとした。

 いつも通りで迎えられると思ったのだが、今日の所は全然違う。

 目の前に現れたのはジト目で椅子に座る女性。赤と白のツートンカラーに染め上げた髪が特徴的で、縁の黒い眼鏡を掛けている。


「ん? 誰?」


 標準語の中に訛りがあった。訛りと言っても、言葉にではない。

 喋り方に特長が見えると、グリム達は立ち止まる。

 女性の所遺体は何者か? そう思ったのも束の間。奥からピジョンが出て来た。


「あっ、グリムさん達、来られたんですね」

「ピジョン。お疲れ様」

「「お疲れさまー」です」


 グリム達は軽く会釈を交わすと、ピジョンは赤白メガネ女性に声を掛けた。

 如何やら知り合いだったようで、口調もいつもに比べて柔らかい。


「ほら、ミソカツ。挨拶して」

「ミソカツ?」

「はぁ……(コホン)。私はミソカツ、よろしゅう」


 気怠そうな挨拶をして貰った。

 けれどやはり訛りが中途半端に残っていて、グリム達は会話に困った。


「この子はうちのメカニックのミソカツ。名前の由来は……ねっ?」

「味噌カツですか?」

「正解! ってことで、こんな感じで言葉足らずだけど、よろしくお願いしますね」


 確かに言葉は足りていない気がする。

 会話というよりもジェスチャーゲームで、コクコクと相槌を打たれた。

 変わった人。そうまとめるのは簡単だが、グリムはそんなことはせず、丁寧に頭を下げた。


「よろしくお願いします、ミソカツさん」

「ん」

「それじゃあミソカツ、例のもの、渡してあげて」


 ピジョンがミソカツに指示を出すと、インベントリからアイテムを取り出す。

 例のもの? もしかしてミソカツが作ったのだろうか?

 グリム達は期待する中、ミソカツが手渡したのは銀色の箱だった。


「はい」

「えっと、これ、なんでしょうか?」

「それが頼まれていた変換装置らしいです。そうだよね、ミソカツ?」

「ん」


 グリム達が受け取ったのは蓄音機のような形をしたアイテムだった。

 もちろん厳密に言えば違うのだが、蓄音機と集音機にアンプとサウンドボードを合わせたような代物。

 使い方が見えて来ず、おそらく前面のレバーを上げ下げすることで拾える音の範囲が変わるのだろう。


「あの、これってどう使うんでしょうか?」


 Dがミソカツに訊ねる。

 するとDと同じ目線になり、ミソカツは優しく教えてくれた。


「そっちの子、レバーを上げて

「ここをこうですか?」

「これで分かるはず」


 ミソカツに言われ、レバーを少し上げてみた。

 するとドンドン! と壁を叩く様な音が聞こえる。


「うわぁ!?」

「これは振動かな?」

「正解。この振動は、外から壁を伝って、内側に漏れたもの」


 かなり面白い道具だった。これが魔道具。グリムが興味を示す。

 というのもこの変換装置、単純に音を取り込むだけじゃない。

 擬音として変換してくれているのだ。


「面白いですね!」

「うん。凄いな、これだけの代物を作り上げるなんて」

「灰脳みたいだねー!」


 灰脳ならば、これだけの装置は作れるだろう。

 けれどミソカツも作れるとなると、構造としてはシンプルなのだろうか?

 グリムとフェスタは友達に対して同意見だった。


「あの、こっちのボタンは?」

「押してみて」

「は、はい。えいっ」


 Dはミソカツに言われ、ボタンを押した。

 すると装置の中でガチャと歯車が逆回転する音が聞こえた。

 レバーを操作すると、今度は違う音が聞こえる。


 アア……アア……

 突然人の声が聞こえ出した。

 これは一体何なのか? グリムはミソカツに訊ねる。


「これは?」

「音に言葉を持たせたの」

「音に言葉を持たせる!?」

「へぇ、凄いねー」


 確かあの実の正体が関係している筈だ。

 名前は“命の実”。音に命を吹き込む。

 特殊なアイテムで、コレが無ければ変換できなかったものもある。


「なるほど。それじゃあこのアア……アアは」

「壁の音ってことですか!?」

「そう言うことだね。凄いよ、ミソカツさん。こんな道具を作れるなんて」

「ほ、褒めてもなにも出んよ」


 ミソカツを褒めると、恥ずかしそうに照れ顔を浮かべる。

 けれどジト目は変っていないので、視線だけが背けられた。


「よかったね、ミソカツ」

「ん」


 グリム達は目的のものをついに手に入れることができた。

 それにしても面白いアイテムだ。

 他にどんな機能があるのか気になる。


「グリム、それじゃあ行こうよー」

「そうだね。ピジョン、ミソカツさん。またね」

「ミソカツでいい」

「えっと、食べ物ですか?」

「そう言うボケじゃないよ。それじゃあピジョン、ミソカツ、また」


 グリム達はデンショバトを後にする。

 店の外に出ると、フェスタはニヤッと笑みを浮かべた。


「終わったねー」

「うん。でもよかったよ」

「これだけ精度が高ければ、きっとシルキーの声も聞ける筈だよ」

「早く行きましょう、グリムさん!」

「そうだね。……の前に、少しいいかな?」

「「グリム?」さん?」


 やはりグリムは気になることがあった。

 いや、このままにしては惜しかった。

 そのせいだろうか、グリムは待ってもらうことにして、気掛かり解消を優先した。

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