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第211話 植物の化物

植物の敵って炎がないと厄介だよね。

多分ですけど、イメージですけど。

 一体何が起きたのか、目の前の光景を口にする。


「植物が凄いね」


 グリム達は蠢く植物に慄く。

 職種のように蔓がグリュングリュンと座席の中から這い出ている。

 危機感を感じると、団子状になってDが前に出る。


「ちょっと、Dがなにするのよ!?」

「Dを甘く見ない方がいいよ。お願い、D」

「任せてください。〈運命の腕輪〉、モード:防御(ディフェンス)


 久々に発動したDのユニークスキル。

 その効果により、Dを中心にして光の円が生まれる。

 ドーム状に広がると、グリム達を中に閉じ込めた。


「ちょっと、なによコレ!?」

「ミュージュさん、動かないでくれますか。来ますよ」

「来ますって……うわぁ!」


 ステージホールに立ち入ったグリム達を待っていたのは、明らかな罠。

 座席からは謎の植物が蔓を伸ばし、侵入者を叩き潰すみたいに蠢く。

 そのうちの一本が躍り出すと、グリム達を狙って打ち込まれる。

 まるで鞭のようなしなりと威力。当たれば即死は間違いないが、Dの前では無力だ。


 バァン!


 蔓はDを捉えようとしたが、目の前で弾かれてしまった。

 防御状態のDに触れることはまさに不可能。

 圧倒的な防御力で蔓を弾き飛ばしてしまうと、ビックリしていたミュージュは視線を右往左往させた。


「一体なにが起こってるのよ」

「これが〈運命の腕輪〉の力です」

「大アルカナの運命の力ってこと? なによそれ、私の女教皇よりも強いじゃない」

「そんなことは無いですよ。この状態だと、私は攻撃ができませんから」

「はっ、それってつまり……」

「私が皆さんを守っているうちにお願いします」


 Dの大アルカナ、運命の武器は相当強い。

 〈運命の腕輪〉の絶対的な防御力は随一で、恐らくは一定時間無敵だ。

 けれど攻撃or防御どちらかしかできない点がかなり厳しい。

 一人では真価を発揮しない装備とスキルに、ミュージュは重ね合わせた。


「私と同じじゃない……」

「ミュージュは戦える?」

「私? 渡しは戦えるけど……そこまで強くないわよ」


 ミュージュは戦えると訊かれ、相槌を打った。

 けれどそこまで自身は無いのか、険しい表情である。

 何せ武器が一応剣とは言っても戦うためのものではない。

 ここはグリムとフェスタが前に出るとアイコンタクトで合図を出し、蔓が戻った瞬間を見定める。


「それじゃあフェスタ、行くよ」

「分かってるって。せーのっ!」

「それっ」


 グリムとフェスタは早期決着を実行する。

 蔓が戻った瞬間、Dの防御から抜け出した。

 これで当たれば即死の状況が返り、グリムとフェスタはヒヤリとする。


「当たったら即死だよねー」

「うん、死なないよに気を付けようか」

「OK。んじゃ、よっと!」


 フェスタは大剣を持ったままでは移動ができない。

 圧倒的な重量を背中に背負うと、座席を軽やかに飛び交う。

 ジャンプしつつ蔓の袂に向かうも、ビシバシ植物の蔓は鞭のように唸った。


「あはは、危ないなー」

「笑い事じゃないよ、フェスタ。一気に決めようか」

「そうだねー。よっと!」


 バコン!


 フェスタが膝を立てていた座席が破壊される。

 蔓は容赦が無く、動くものを優先的に狙っている。

 しかも蔓は一本じゃないので、何本も何本もけたたましく唸る。


 バシュン、バコン!

 バシューン、バッコン!!

 バキバキバキ、グギッ!!!


 座席が何個も潰される。

 それもその筈、座席を盾に使ってグリムとフェスタは移動していた。

 おかげで悲惨な音が何重にも重なって聞こえるも、気が付けばグリムとフェスタは蔓の根元まで辿り着く。


「よっしゃ、このまま一気に!」

「仕留めようか」


 グリムとフェスタはしなる蔓をギリギリで躱す。

 少しでも位置を間違えれば頭が吹き飛んでしまいそう。

 そんな恐怖心さえ拭い去ると、大鎌と大剣を思いきり振り下ろす。


「「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 目の前に突き出された蔓を、二人は見事に叩き切る。

 腹の奥底から沸き上がった声が、けたたましく空気を震わす。

 けれどこれで邪魔をするものは無い。一体なにが邪魔をしていたのか、正体が明らかになる。


「ついに追い詰めたよ。覚悟しろぉ!」

「待ってフェスタ。床になにか落ちてる」

「床? うわぁ、気持ち悪いねぇ」


 グリムとフェスタの視線は床に誘導された。

 そこにはバイオリンが落ちていて、蔓はバイオリンから伸びている。

 もはや原形を保っているだけで奇跡的で、ピクピク動いていて気持ちが悪い。


「どういうこと? なんでバイオリンが動いてるの?」

「分からないけど、この植物はバイオリンを苗床に使っているみたいだね」

「うわぁ、気持ち悪。どんな悪趣味なの?」

「そうだね。でもこのバイオリンを壊せば、きっとこの蔓は……」


 バイオリン目掛けてグリムは鎌を振り下ろす。

 グサリ! バイオリンに鎌の切っ先が触れると、奥まで切れ込みが入る。

 パキッと絶命する音が聞こえると、バイオリンは動かなくなる。それに合わせ、蔓の動きもたちまち止まる。


「あれ、本当に止まっちゃった?」

「そうみたいだね。どうやら、原因はこのバイオリンだったみたい」

「ってことは、これでもうお終い? よかったー、万事解決だね!」


 フェスタは一人喜んで、親指を立てていた。

 けれどグリムの顔色はすこぶら無い。

 なにせバイオリンが動き出し、植物を操ってしまうとは考え辛い。

 そもそも、如何して植物の蔓を操っていたのか。カタカタ動いていたのは本体だけではなく、弦事態も触れていた。謎ばかりが残る中、グリムは嫌な予感がした。


(このままみすみす返してくれるとは思わないけど……)


 そう思った矢先のことだ。

 安堵した様子のDが防御を解こうとする。

 けれど何故か踏み止まると、扉の方を見て叫んだ。


「きゃぁぁぁぁぁ!」

「どうしたのよ、D……って、嘘でしょ?」


 ミュージュまで扉の方を見て固まっている。

 一体何が起きているのか、やはりまだ終わりではないのか。

 グリムはフェスタを連れて急ぎDとミュージュの元へ向かう。

 けれどそんなに易々と合流ができるような空気は、もはや広がっていなかった。

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