第205話 騒めき野森攻略作戦
総合評価1000を目標に頑張ります。
グリム達は騒めきの森にやって来た。
前回は酷い目に遭ってしまったが、今回こそは攻略する。いや、できる。
何せ秘密兵器を用意しているのだから、そんなもの決まっていた。
「いやぁ、二回目だね」
「うん、二回目だよ。でも今回は前回の私達とは違うからね」
「うん、うん。それじゃあ、行ってみよっか」
「はい!」
グリム達は威勢だけはよかった。
とても意欲的に取り組んでいて、前回の不安は無い。
何せ秘密兵器が面倒そうに髪をクルクル捩じっている。
「それじゃあやってみよう、GOGOミュージュ!」
「はぁ。結局私頼みなのね」
「「「そうだよ」」です!」
「貴女達ね。はぁ、まあいいわ。とっとと始めるわよ」
ミュージュはとても面倒そうだった。
退屈そう、いや鬱屈層にしているのが、顔色から判る。
溜息を吐き出したが、それさえ飲み込むと、ミュージュは全て諦める。
「それじゃあやるわよ」
ミュージュが騒めきの森に足を踏み入れる。
すると騒めきの森の音楽家達が演奏を始める。
まるで勝手に森に立ち入った侵入者を追っ払うみたいに、大合奏を開始した。
ガサガサガサガサ~♪
ガッサガッサガッサガッサ~♫
ガーサガーサガッサッサッサ~♬
複数の音が一つになろうとした。
同じ音、けれど高さの違う周波数が倍音として森の中を駆ける。
天然の音楽堂に不協和音を掻き鳴らすと、うるさすぎて仕方が無い。
「うっ、これは……」
「う、うるさいよ~」
「き、気持ち悪いです」
グリムはまだ平気だった。けれどフェスタとDへの影響が大きい。
膝を突き、頭を抱えてしまっている。
吐き気を催すと、助けを求める目をミュージュに向けた。
「ミュージュ、お願い」
「お願いします、ミュージュさん」
「はっ、分かったわよ。この乱れたオーケストラを、私が調和させてあげる」
ミュージュは得意気になって指揮棒を手にした。
否、それは指揮棒では無かった。
腰に携えていたレイピア状の棒なのか剣なのか、ミュージュは手にすると、ソッと振り出す。
「まるで指揮者だね」
グリムがそう表すると、指揮棒を振るうミュージュは目を瞑っていた。
鳴り響く雑音を少しずつ束ねていく。
調整をするみたいに少しずつ合わせると、指揮棒が微かに震えていた。
「あの指揮棒に秘密があるのかな?」
恐らくは音楽やバフ・デバフに特化した呪いの装備だからだ。
その効果として、指揮棒が少しずつ振幅する。
広がり出した音がやんわりと調和されると、ガサガサと乱れていた和音が収まった。
サササ~ササッ♪
サ~サササッササッ♫
サササ~タッタッタラララ~ン♬
「「「あっ!?」」」
音が調和され、無事に聞こえるようになった。
耳障りな音が消え、心地よくなっている。
胸の高鳴りを感じると、グリム達は顔を見合わせる。
如何やら調和が終わったようで、素敵なハーモニーがマエストロの手によって解消された。
「ふぅ。もういいわよ」
ミュージュの言葉がグリム達を呼び寄せる。
騒めきの森に立ち入ると、前回と明らかに違う。
気持ちの良い音楽と空気が広がると、頭も体も痛くない。
「よかった。本当によかった」
「はい、グリムさん。ミュージュさん、ありがとうございます」
「ありがとね~」
「別に感謝されるようなことでも無いわ。それより、さっさと行くわよ」
グリム達はミュージュに感謝した。何せここより先に行くのは初めて。
これもミュージュのおかげだとはっきりしている。
だからこそ、グリムは改めてミュージュに訊ねた。
「ありがとう、ミュージュ」
「ふん」
「ところで、その装備の秘密って」
「コレのこと? 見ての通り、指揮棒の形をした剣よ」
ミュージュが見せてくれたのは、指揮棒の形をした剣。
衣装からも分かる通り、音楽に関係はしている。
けれど名前はまだ分かっていない。グリムは特に意味もなく訊ねた。
「ちなみになんて名前なのかな?」
「この剣の名前? 別にそれくらいいいわよ。どうせ意味が無いから」
「確かに名前に意味は無いね」
「〈女教皇の奏剣〉よ。分かった? ……って、なにその顔。怖いだけど」
今、なんって言った? 呪いの装備だと分かってはいたが、そのシリーズについては何も分からなかった。
けれどミュージュの口から出た言葉。頭の部分が“女教皇”。つまりは大アルカナだ。
「もしかして、アルカナシリーズ?」
「アルカナシリーズって……それがどうした……まさか?」
「偶然って怖いね。まさか大アルカナが四つも揃うなんて」
この世界は広い、広大なマップだ。
その中でも大アルカナの数は決まっている。
そのうちの四つが同じ場所に集まる何てこと、三つでも奇跡的なのに、四つなんてバカげている。
「嘘でしょ、私は女教皇で?」
「死神」
「はいはーい。戦車」
「運命です」
「ちょっと、怖いんだけど。もう、怖いんだけど」
確かに恐怖さえ感じてしまう。この場に四つが揃い、ミュージュは全身を身震いさせた。
不安にさえ感じてしまうのだが、致し方が無い。
分かり切っていることを言っても先には進めないので、ミュージュは前進する。
「とにかく、この先に用があるんでしょ? 行くわよ」
「そうだね。行こうか」
「はい、皆さん行きましょう」
「あはは、面白いよねー。偶然って」
確かに偶然って面白い。これは必然だったのだったかもと思ってしまう。
けれども妙な親近感を覚えた。
グリム達は騒めきの森を突き進むと、軽やかで和みある音楽がグリム達を包んでくれた。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。