第197話 タクト・ムジュウム
タクトなムジカです。
グリム達はいつも通り馬車に乗り、フォンスを離れた。
目指す音楽の町は馬車を使っても片道三時間。
それなりの距離があり、グリム達は馬車に揺られて移動した。
「二人共ごめん。勝手なことをして」
「そんなことないよー」
「はい! 目的ができるのは、取っても凄いことだと思います」
グリムは反省していた。
ここまで自分の意見を突き付けて来た。
フェスタとDを巻き込んでしまい、無性に自分らしくないと思うも、フェスタとDは優しかった。
ここまでの行動を全て目的として捉える。
寛容な二人に支えられ、グリムはホッとすると、馬車に揺られて考える。
「タクト・ムジュウム。なにかヒントがあればいいけど」
「そこだよねー。実際、ヒントってあるのかなー?」
「はい……」
タクト・ムジュウムに行けばヒントが見つかる。それはあまりにも荒唐無稽だ。
グリムはムッとした表所を噛み締め、一体なにをすれば騒めき野森攻略に繋がるのか見当は……付いていた。
「ミュージュが首を縦に振ってればなー」
「仕方が無いよ。他人の意見や価値観を変えることは容易じゃない。むしろ不可能だからね」
「グリムさん……」
「でも、ミュージュはヒントをくれたよ。あの森を攻略するためには、音と共にあることは必須」
騒めき野森を攻略する糸口はそこにある。
幸い、グリムもフェスタも音が着は多少齧っている。
もちろん本格的にではない。短い期間の間、本気で触れた。ただそれだけの付き合いで、語れるほど物事は甘くはない。
「グリムさん、きっと大丈夫ですよね!」
「そうだよ、大丈夫じゃないと話は進まない」
「流石はグリムだねー。そう来ないとー……おっ!」
フェスタは馬車の窓から顔を覗かせる。
もはや頭が全部出てしまうと、馬車の行く先に小さな建物の群れが見えた。
如何やら町に着いたらしい。御者台に座る男性が声を上げた。
「おーい、もうすぐタクト・ムジュウムに着くぞ」
「「「おっ!」」」
グリム達も声を上げると、馬車の向かう先に小さな町が浮かび上がる。
赤茶けた屋根が町並みを豊かにすると、建築様式はバロック様式の様だった。
雰囲気だけでも素敵。そう思わせてくれるほど、歴史の深みを感じ取る。
「タクト・ムジュウムは、いい町だよ。長閑で何処からでも音楽が聴こえる。そんな素敵な町なんだ」
「へぇー」
「なんだか安らぎそうな町ですよね」
「うんうん。早く行ってみたいなー」
「あはは、そう急かさなくてももう直着くからよ」
グリム達は馬車を操るNPCの御者に連れられ、タクト・ムジュウムに辿り着く。
一体どんな町なのか。どんな音楽が聴こえて来るのか。
楽しみになるグリム達は目的の前に心の平穏を取り持ちたかった。
「ここがタクト・ムジュウムですか」
Dはタクト・ムジュウムにやって来ると声を上げる。
そこは現実でいう所のバロック様式を思わせる建物が並んでいる。
地面は奥に向かう形で坂道になっており、天然のコンクリートとタイルが敷かれていた。
おまけにタクト・ムジュウムの噂は本当だった。
耳を澄ますと、愉快なメロディーが心地よく耳に馴染む。
しかもギターやキーボードのような当り障りのないものでは無いのが面白い。
「アコーディオンの音聴こえない?」
「そうだね。なんだか胸が躍るような愉快な音楽だね」
路上でアコーディオンの音楽が聴こえるのは珍しい。
これぞゲームと思わせてくれると、グリムは口を噤んだ。
更に耳を澄ましていると、聴こえてくるのはトランペットの軽やかで昂る音色だ。
「おっ、これファンファーレだ。なにか始まるのかな?」
「分かりませんけど、楽しいですよね」
「そうだね。この町は本当に音楽で溢れているよ」
タクト・ムジュウムは噂に違わなかった。
本当にそこら中から音楽が聴こえてくる。
明るい音楽が絶え間なく続き、そのおかげか町行く人達の顔も明るい。
プレイヤーもNPCも気楽な雰囲気だ。
それだけ過ごしやすいのだろうが、噂話もメロディーに乗っている。
何処までも音楽に親しみを込める町の風景に、グリムは少しばかりのヒントを期待する。
「なにか見つかってくれればいいけど……」
「なにいってるの、グリム」
「そうだね。見つかってくれるかじゃなくて、見つけないとね」
この町に来た目的を果たす。
まずは情報を集めよう……の前に、グリム達にはやることがある。
シルキーとした約束を守ろうと、レコード屋を探すことにした。
「それじゃあレコードを買いに行こうか」
「そうだったー。って、レコードなんて何処に売ってるの?」
「そうだね。この世界にはCDなんて近代的なものは無いだろうから、レコードショップかな?」
「「レコードショップ?」」
レコード屋=レコードショップを探しに行く。
きっとそこなら、音楽に精通するプレイヤーやNPCも多い筈。
それならばヒントも見出せるだろう。グリムは率先してNPCに声を掛ける。
「すみません、行きたい所があるんですけど知りませんか?」
「はい?」
「この近くに、レコードショップってありませんか?」
グリムは女性のNPCに声を掛ける。
見た目的には三十代で、主婦のような雰囲気を放っている。
とは言えそんなことは関係ない。グリムはレコードショップについて訊く。
「レコード? ああ、それなら向こうにあるよ」
「向こう?」
「その道を入って、奥の方に行ったら年代物のレコードを売ってる店があるよ。行ってみるといいわ」
「年代物のレコード……そうですか、ありがとうございます」
目当ての店が見つかった。
グリムはフェスタとDの元に戻り、路地を指さした。
「この先にレコードショップがあるらしいね」
「おっ、ちゃんとあるんだー。よかった」
「はい。せっかく約束をしたのに、無かったらと思うと内心不安でした」
「そうだね。でも目当ての店は見つけたから、とりあえず行ってみようか」
グリム達は路地に入る。
この先にあるレコードショップに向かう。
どんなレコードが置いてあるのかは分からないが、未知の土地は心が跳ねた。
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