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第195話 音楽家は意地っ張り

そう簡単に首を縦には振らないのだ!

「そう言えば、まだ名前を聞いていなかったね。私はグリム」

「ふん」

「はいはーい、私はフェスタ」

「Dっていいます。助けてくれてありがとうございました」

「そう、よかったわね」


 少女は目を合わせようとしない。

 そっぽを向いて面倒くさそうにあしらっている。

 フェスタとDは互いに目を合わせると、グリムは唇を尖らせた。


「名前を名乗ってくれないんだね」

「別に、教える必要なんてないでしょ?」

「それもそうだね。でも、名前くらい明かしてもいいんじゃないかな? 減るものじゃないよね」

「はぁ……ミュージュ。これでいい?」


 本気で面倒になったのか、少女は口を開いた。

 ようやく明かしてくれた名前はカッコいい。

 結構気取っているなとフェスタは思うも、グリムはにこやかに微笑み。


「いい名前だね」

「そう? ありがと」

「普通に嬉しいんだね。なんか以外―」

「フェスタ、余計なことは言わない」


 フェスタはミュージュを茶化した。

 グリムは咎めるものの、フェスタは揶揄うのを楽しんでいる。

 全くと思うが、ミュージュはこんなことでキレたりはしない。けれど視線がナイフの様にいたい。


「はい、名前も明かしたんだから、とっとと行きなさいよ」

「あの、待ってください。この森は騒めきの森なんですよね?」

「ええ、そうよ。名前だって書いてあるでしょ」


 Dはミュージュに質問した。

 確かに地図を見てもこの森には騒めきの森と名前が付いている。

 もっとも、この先に音楽堂があるかは定かじゃない。


「それじゃあ、この先に音楽堂はある?」

「音楽堂? ええ、あるわよ。かなり古いけどね」

「立ち入ったことは?」

「別に興味が無いわ。私はここで休んでいるだけなの。ほら、私の休憩の邪魔しないで」


 ミュージュは軽くあしらって、グリム達を追い払おうとする。

 しかしグリム達もただでは言うことを聞かない。

 グッとここで押し留まると、頭の中にビビッと来たので、ミュージュにお願いする。


「ねぇミュージュ、私達に力を貸してくれないかな?」

「えっ、嫌よ」

「そう来るよね。だけどこの先に行くのは、音を制御する必要があるんだね」

「それだけの理解力があるなら分かるでしょ? 行く必要は無いの、行っても無駄。子の先には古びた音楽堂しかないもの」


 ミュージュは頻りに首を縦に振らない。

 当然と言えば当然で、ミュージュには何の得も無い。

 グリムは分かり切っていたとはいえ、ここで引き下がる気は一切しなかった。


「それなら尚更だよ。私達は、この先に用があるんだ」

「この先に?」

「音楽堂の中に、私達の欲しいものがある筈なんです。それを手に入れるためには」

「どうしてもこの先に行くしか無いんだよねー」


 グリムだけではなく、フェスタとDも援護してくれた。

 音楽堂の中に欲しいものがあるのか。まだ確証はない。

 それでも行く価値はあるので、グリム達はもう一度ミュージュの頼む。


「お願いできないかな、ミュージュ」

「はぁ……悪いけど無理よ。私の邪魔しないでくれる?」

「やっぱりダメ?」

「ダメに決まってるでしょ。私の心でも躍らせてみなさい。そうしたら考えてあげるから」

「心を躍らせる?」

「ダンスってこと? それとも邦楽ってこと?」

「どっちでもいいわよ。とにかく邪魔なの、消えなさい。はっ!」


 ミュージュは腰に携えた細長い棒を取り出す。

 長さは短いがレイピアの様で先が尖っている。

 かと思えば音符のマークがあり、指揮棒の様でもあった、ミュージュが振ると音が鳴る。


 タッ、タッ、タッラタラァ~ン♫


 軽快な音楽が何処からともなく鳴り出す。

 空気を震わし、楽器なんて無い筈なのに、頭の中に音色が響く。


「な、なに!?」

「うわぁ、凄い凄い、体が軽い。なんだか走りたくなっちゃうよー」

「か、体が勝手に動いてますよ!?」


 グリム達は妙な感覚に浸った。

 体を内側から熱くするような感触。

 まるで体の周りに膜が張っているような不思議な感触がするのだ。


「ほら、早く行きなさい!」

「ミュージュ、これって」

「どうして貴女は耐えられるのよ。もう、早く行くのよ」

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 ミュージュに指示されるがまま、フェスタとDの足は動く。

 体が操られているというよりも、音楽に乗せられている気がする。

 森の外に追いやられるように足が動かされると、先に二人が居なくなる。


「ちょっと、二人共」


 フェスタとDが行ってしまったので、グリムも離れるしかない。

 少し気掛かりではあるが、ここは折れることにした。

結局グリム達はミュージュから遠ざけられてしまった。


「グリム、これどうなってるの?」

「私の精神には干渉できてないけど、二人は影響を受けている」

「もしかして、呪いの装備?」

「分からないけど、その可能性はあるね。音楽に関連付いた呪いの装備……なるほど、面白い」

「面白いですけど、面白くないですよ!」


 グリムとフェスタは小刻みに走りながら、何となくミュージュのことを想像する。

 恐らくは呪いの装備を持っている。精神に直接干渉するような、比較的強力な代物だ。故にグリムには効かなかったのだろうが、それでもフェスタとDは顔色が悪い。

 グリムとしてこれは面白いと笑みを浮かべると、ますますビビッと来た。ミュージュの実力の高さに、口角が吊り上がるとニヤリとした。

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