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第191話 変換装置を作ったら?

凄いもの作ろうとしてない、これ!?

「まあ、それはいいとして」


 グリムはすぐに話を切り替える。

 あまり目の前のことに囚われたり、飲み込まれたりせず、忘れないように思い起こす。

 そう、デンショバトに来たのは、相談に乗って貰うためだ。


「ピジョン、少し知恵を借りたいんだけど、いい?」

「知恵ですか?」

「うん。実はね、私達もギルドホームを手に入れたんだよ」

「ギルドホーム!? グリムさん達も、ようやく拠点を手に入れたんですね。おめでとうございます」

「ありがとう。それで、私達のギルドホームには……」

「幽霊が住んでるんだよ!」


 グリムが説明している合間に、フェスタは割り込んだ。

 手を伸ばして話を遮ると、会話を引き継ぐ。


 けれどあまりにも突飛な話題だ。

 “幽霊”という言葉を聞いた瞬間、ピジョンと鋼一郎は固まる。


「「幽霊?」」

「そう、幽霊!」


 何の説明にもなって言う無い上に、謎が更に謎を呼んだだけ。

 ポカンとしてしまい、考え込むピジョンと鋼一郎。

 その姿に見兼ね、グリムは補足説明をする。


「私達の買ったギルドホームには、シルキーって言う幽霊が住んでいるんだよ」

「シルキーさん?」

「幽霊なんて、信じないな」

「まあ、そう言う人もいるよね。でも事実だよ。NPCの幽霊だけど、とても優しくて頼りになる存在なんだよ」


 シルキーのことをグリムはベタ褒めする。

 するとピジョンは信用し、何となく想像力を働かせた。


 一方の鋼一郎は本当に興味がないらしい。

 肘を突き、話を退屈そうに聞いている。

 いや、退屈などではなく、単純に理解しようと必死なのだ。


「鋼、無理に理解しなくてもいいよ。大丈夫、人それぞれ認識の違いはあるから。自分の信じたいものを信じればいいよ」

「そうか?」

「そうだよ。だから知恵を貸してほしいんだ」

「あの、グリムさん。その知恵って言うのは?」

「少し複雑になるんだけどね」


 グリムは極力話を噛み砕き、シルキーの存在を説明した。

 もちろん、一回で全てを理解して貰えるとは思っていない。


 けれども、ピジョンと鋼一郎の理解力は高い。

 所々不明な点はあったが、グリム達の冒険譚を聞き、ある程度納得してくれた。


「なるほど。では、シルキーさんという方は、意志疎通ができるんですね。凄い……」

「確かに凄い。けど、言葉を発せないのは、都合が悪いな」

「こら、鋼ちゃん。そんなこと言っちゃダメでしょ!」

「悪かった」


 ぶっきら棒なやり取りが展開される。

 けれどこのまま進めば、もう一度スタートに逆戻りしてしまう。

 そう感じたピジョン本人が舵を取り修正を図ると、コホンと咳を一つ。


「風邪か?」

「違うよ、鋼ちゃん。とりあえず事情は分かったけど、私達にどんな知恵を借りたいの?」

「単純な話、私以外モールス信号が解る人がいないんだよ。だから、いつまでもこっくりさんの紙やウィジャ盤を使うのは、疲労も溜まるから、もっと効率的な手法が思い付かないか、知恵が借りたいんだ」


 グリムの要望は非常にシンプルだった。

 けれどシンプル故に難しい面に触れてしまう。

 現に鋼一郎は神妙な顔をすると、腕を組んだまま眉根を寄せた。


「難しい話だ」

「やっぱりそうだよね」

「ああ。そんな都合のいい手段があれば、困っていないだろ」

「そうだね。正直、私一人の知恵だと限界があるんだ。多分ネットの海を探索すれば、なにか見つかるとは思うけどね」


 とは言え、広大なネットの海を一人で探すのは大変だ。

 ましてや屋敷の書斎を隅々まで見て回るのも酷だ。

 グリムは面倒になった訳では無いのだが、時間効率なども加味し、ピジョン達に訊ねる。


「正直厳しいことなのは分かっているよ。ピジョン達にとっても、知る由もない話なのもね」

「でも、私達だけじゃ無理なんだよー」

「あの、なにか少しでもいいので、ヒントになりそうなものは知りませんか?」


 グリム達は烏滸がましいことを解った上で、ピジョン達を困らせる。

 もちろん、ヒントが貰えるとは思えないし、嫌われるかもしれない。

 けれどピジョンと鋼一郎は同じ気持ちになって必死に考えてくれると、鋼一郎が何か閃く。


「変換装置は作ったのか?」

「変換装置?」

「「変換装置?」」


 鋼一郎の突飛な言葉はグリムに衝撃を与える。

 グリムだけは何かを掴み、フェスタとDは頭の上にはてなを浮かべた。


「鋼ちゃん、変換装置って?」

「単純な話だ。モールス信号が使えるなら、それを音声変換すればいい」

「うわぁ、凄く難しいこと言ってるよ」

「だからなんだ。ここはゲームだ。そのくらいのことはできる」

「と言うと、なにか知ってるんだね」

「まあな」


 鋼一郎はたくさんの顧客から情報を漁っていた。

 良い物を作る鋼一郎だからこそ、プレイヤーやNPCから、知らなくてもいい有益な情報を教えて貰える。それだけ腕があるからだが、鋼一郎自体、初めて誰かに漏らす話だ。


「その話って、教えて貰って大丈夫な話しですか?」

「ん? ああ、別にいいぞ。実際、あくまでも噂レベルの話で、興味が出る話題でも無いからな」


 Dが不安そうに訊ねるも、鋼一郎は依然として変わらない。

 自分が持っている情報を口にした。


「私が聞いた話だと、このゲームでは特殊なアイテムを作れるらしい」

「特殊なアイテム?」

「ああ。いわゆる魔道具と呼ばれる物だ」

「魔道具? つまり、魔法の道具……」

「その中でもこれは特殊な代物で、声無き者に言葉を与える道具らしい」

「声無き者に言葉を与える……興味深いね。是非もっと知りたいな」


 グリムは頭の中で直感が冴え渡る。

 明らかに今グリム達に必要なもの、求めている物のニオイが立つ。

 そんなグリムを嗜めるように、鋼一郎も淡々と話した。

【カクヨム版のお知らせ】


本作を読んでくださっている皆様、ありがとうございます。

カクヨムコン10が始まり、たくさんの人に知って貰えている気がします。


そこて9月より書き続けてきた本作品のスピンオフ作品を、現在21:55分より投稿いたします。

今回の主人公は……《白銀剣姫》。


一体どんな活躍を見せてくれるのか。皆様の目で追ってくださると幸いです。

尚本作品はスピンオフのため、カクヨムコン10の間のみ更新、その後は未定です。


お星様やブックマーク・感想などなど待ってます。

励みなるので、よろしくお願いします。

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