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第181話 誰であろうと弔わないと

「グリムって優しいよね」って思ってくれたら、高評価を!

 ボッターKリンの怨霊は消えた。

 グリムの手により、首を断ち切られると、頭だけがゴロンと転がる。

 グリムは汚れた鎌を手入れすると、フェスタとDに話し掛けられた。


「グリムー」

「なに?」

「お疲れ。でも、なんだか切ないね」

「うん。まさかシルキーがあんな選択を取るなんて。私が未熟だったからかな」


 グリムは切ない気持ちになっていた。

 けれど今更気にしても仕方が無い。

 シルキー自身が決めたことを、そして起こってしまった結果を、今更悔いても仕方が無い。

 そんなことで前に進めないので、グリムは目を伏せるのではなく、考えを変えた。


「でも、シルキーはこれで、両親の元に還れたのかな」

「グリムさん……」


 Dの心配そうな声音が聞こえる。

 鼓膜に心地よく聞こえるも、グリムは笑みを浮かべる。

 痩せ我慢じゃない。グリムの手がソッとDの頭に伸びた。


「大丈夫だよ、D」

「グリムさん……くすぐったいです」


 Dは撫でられて顔が赤くなる。

 こんな時でもDは可愛い。

 グリムは見事にたらし込むと、フェスタにジト目を向けられた。


「グリムー」

「ごめん、フェスタ。さてと……」

「あれ、もう終わりで……グリムさん?」


 グリムはDを撫でるのを辞めた。

 代わりに二人の亡骸の下に寄る。

 まずは床に転がるボッターKリンの遺体だ。

 白骨化している上に、破損も酷く、触ればボロボロと崩れる。


「グリム、なにするの? そんなの放っておこうよ」

「それはできないよ」


 グリムはインベントリから麻袋を取り出す。

 ザクロ石を採取する際に使ったものの余りだ。

 それからスコップも取り出す。

 どちらもピジョンから無料で貰った物で、グリムは一度手を合わせてから作業を始める。


「グリムさん、なにをするんですか?」

「決まってるでしょ。弔ってあげるんだよ」

「「弔う!?」」


 フェスタとDは何故か驚いていた。

 一体何をそんなに驚くことがあるのか。

 グリムは不思議でたまらないが、関係無い素振りを見せ、スコップで一つ一つ、骨を回収する。


「ちょっとちょっと、グリムなにやってるの!?」

「どうしてこんな人を供養してあげなくちゃダメなんですか!?」

「D、結構厳しいこと言うね。でも、どんな悪人でも、丁重に弔ってあげれば、少しは報われるでしょ?」

「「報われ……る?」」


 フェスタもDも道徳はちゃんとある。

 けれど一線を画すのはグリムだ。

 あれほどまでに非道な行いをした殺人犯であっても、一応は供養する。

 遺骨を回収しながら、グリムは呟く。


「確かにボッターKリンは殺人犯だよ。シルキーの魂と体を糧にした。正直、腹は立つよ」

「グリム、それじゃあどうして?」

「でも、それは関係ない。こんなものがあっても、気持ち良くないからね」


 グリムがボッターKリンの遺骨を回収する理由は大きく分けて二つある。

 一つは生理的に無理があった。

 遺骨を屋敷の敷地内に、そのままの状態で留めておく。

 どんな怨念が集まってくるか分からないので、グリムとしても回収は最優先だ。


 とは言えもう一つは別にある。

 それはグリムの優しさで、フェスタとDの考えていない部分にある。


「相手がどんな人であっても、可哀そうには思うよ。だから、せめてね」

「グリムさん、優しいですね」

「そうそう、グリムって優しいねー」

「優しい……ねっ」


 そうこうしているうちに、遺骨はある程度回収した。

 麻袋一杯とはいかなかったのは、ボッターKリンの骨が、かなり摩耗していたからだろう。

 そのせいもあり、残っていた部分はボロボロで、原形を取り留めることさえできなかった。


「さてと、ボッターKリンの方はこれくらいにして……」


 ここからは一番大事だ。

 台の上、シルキーの遺体の傍へ寄る。

 炭になっていて、もはや原形も留めていない、真っ黒になっているので、直視は遠慮したかった。


「シルキーさんの遺体ですか」

「そうだよ。シルキーの方は、みんな手伝ってくれるよね?」

「「うん」はい」


 グリムの号令もあってか、フェスタとDも協力してくれた。

 シルキーの遺体をできるだけ丁重に、残っている骨は一つ残らず回収する。

 もう戻って来ないもの。たとえ、ゲームの中だとしても、悲しい気持ちが強まる。


「シルキーさん、もういないんですね」

「うーん、なんだかねー」

「仕方ないよ。何度も言う通り、シルキーは両親の元に……ねっ」

「はい」


 グリムの言葉は芯があるが弱々しい。

 けれどそれを払拭できるだけの腕を持っている。

 強い眼光には魂が宿り、シルキーの分まで、何度も言うが、ゲームの中でもグリムは強い感情を持って、向き直っていた。もはやシルキーへの切ない気持ちは吹っ切れ、麻袋の中にシルキーの遺骨を納める。


「これで終わりかな」

「うん、もう残ってないよ。それじゃあ、どうする?」

「今日はもうログアウトするよ。シルキーとボッターKリンの埋葬は、また明日で」


 麻袋に納めた遺骨。

 グリムは地下室に置いて管理をすると、とりあえずログアウトすることにした。

 なんだか疲れる一日だったと、心底思う気持ちが強まる中、グリム達は肩を撫でた。

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