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第17話 アイテム屋:デンショバト

 鉄鉱石も手に入れた。モンスターも無事に倒した。

 大満足の結果で初めての鉄鉱石採取を終えることができた昨日。

 今日もログインすると、早速依頼主の下へと向かっていた。

 幸いなことに地図がセットで付いて来たので、それを頼りに街中を散策。

 フォンスの一角、人通りもまばらにある通りにその店は構えてあった。


「ここかな?」


 住所によると、如何やらここらしい。

 外観はベージュ色の煉瓦を積み上げて出来ていて、四隅や大事な部分は太くて分厚い四角形の柱が格子状の支えになっていた。

 かなり頑丈な造り、しかも柔い朱色の屋根。目に優しくて周りに溶け込む建物で、第一印象から好感が持てた。


「まあそんなことより、居るよね?」


 流石に居て貰わないと困る。

 馳せる気持ちを押し殺し、扉を開けた。

 するとチリンチリーン! と、優しい鈴の音が聴こえた。


「いらっしゃいませ」

「こんにちは。ピジョンさんですか?」

「はい、そうですけど?」


 グリムの前で呆然とする女性は首を傾げていた。

 それも当然だ。初対面で名前を知っているなんて普通変に思われる。

 だけどグリムがインベントリの中から鉄鉱石の入った袋を取り出すと、全てを理解したかのように手を合わせた。


「もしかして依頼を引き受けてくださった方ですか?」

「はい、グリムって言います。それで鉄鉱石なんですけど……NQのものしか採れなくて……」

「十分です。それにしてもまさかこんなに。大変だったんじゃないですか?」

「まあ、ボチボチです。それでこれで依頼は達成ですよね?」

「はい。本当にありがとうございました」


 とりあえず依頼は無事に達成できたようだ。

 自分でもまさかこんなにたくさんの鉄鉱石が手には入るとは思わなかった。

 そのおかげでたくさん感謝されて気分が良かった。

 グリムは薄ら笑みを浮かべていると、ピジョンは店の奥に何かを取りに行く。


「それにしてもアイテム屋なんて初めて来たけど……結構たくさん置いてあるんだね」


 グリムは店内を見回す。たくさんの物が売られていた。

 アイテム屋とはいわゆる雑貨屋みたいなもので、なかなか面白かった。

 店内を物色していると、しばらくしてピジョンが店の奥から戻って来た。

 手には巾着袋を持っている。ずっしりと中身は重そうで膨らんでいた。


「グリムさん、こちらが報酬になります」

「ありがとうございます」


 グリムは報酬としてたくさんのゲーム内通貨を貰った。

 鉄鉱石を集めて来るだけにしてはかなりの金額になった。

 満足した笑みを浮かべると、グリムは一つに気になった。


「あのピジョンさん」

「ピジョンで良いですよ」

「それじゃあピジョン。これだけたくさんの鉄鉱石を集めて如何するのかな? まさか転売とかじゃないよね?」


 グリムはフラットな口調に変えピジョンに尋ねた。

 もちろん答える義理も義務もない。

 それでもピジョンは快く答えてくれた。如何やらやましいことはないらしい。


「私が使うんじゃないですよ。これは私の友人が必要としているもので、大量に仕入れておかないといけなかったんです」

「大量に仕入れる?」

「はい。私の友人はいわゆる鍛冶職人なんですよ。だから鉄鉱石がたくさん必要なんです」

「なるほど合点が行くよ。それじゃあここは仲介役ってことで良いのかな?」

「はい。それよりグリムさんは敬語と常語の使い方がお上手ですね」

「昔から飲み込みは早い方だからね。それよりこのお店だけど、もしかしてピジョンが一人で切り盛りしているの?」


 グリムは気になっていたことをもう一つ尋ねた。

 するとピジョンは「はい」と答える。

 顔を上げて店内を見回した。今の所かなり空いていて、グリムとピジョンの二人しかいない。

 その様子を何処か儚そうに見つめていて、グリムは気にしてしまった。


「ごめんね。変なこと訊いちゃった」

「良いんですよ。実はこのお店、まだ始めたばかり何です。それに変に盛り上がってしまっても騒がしいだけなので、このくらいがきっと丁度良いんですよ」


 何処か諦めの様に感じてしまった。

 グリムはやや居た堪れない気持ちになるが、それを全て振り払う。

 代わりに、せっかく来たのだからと何か買っておくことにした。

 それで穴埋めになるかは分からないが、ピジョンが経営するこの店は良い感じがする。


「この店、繁盛しますよ」

「えっ?」

「ピジョン。ここはアイテム屋なんだよね。回復ポーションとか売ってる?」

「もちろん売っていますよ」

「それなら……一箱貰えるかな?」

「一箱ですか!」


 ピジョンは驚いていた。

 まさか一箱購入で、中に何本入っているかは知らないが、相当の値段になる。

 しかしあって損はない。

 幸いなことに金銭面にはかなりの余裕があるので、グリムは否定もせずに即決で買ってしまった。ピジョンは一瞬表情を歪ませたが、すぐに我に返ると驚きの中に笑みを浮かべた。ちょっと泣いているようで、涙袋が濡れている。


「こんなに買ってくれるんですか!」

「はい。今度対人戦イベントがあるみたいだから、それ用にと思って。仮に使わなかったとしても有って腐る事もないからね」

「確かにそうですね。それにしてもまさかこんなに買っていただけるとは……あっ、そうだ。グリムさん、私とフレンド登録しませんか?」


 突然ピジョンにそう誘われた。

 一瞬何事かと思い気を引き締めたが、そんなことかと思いすぐに気を許す。

 警戒を完全に解くと、フッと腹から力が抜けた。


「フレンド登録? いいよ」

「ありがとうございます。今後ともごひいきにしていただけると……」

「あはは、必要な時は立ち寄りますから」


 グリムはピジョンとフレンド登録をする。かなり良い人とフレンドに慣れて、グリムはついていた。

 登録はすんなりと終わり、フレンド欄にはピジョンの名前とIDが刻まれる。


「それでは頑張ってくださいね」

「ありがとう。まあぼちぼち勝ちには行くよ」


 ピジョンに応援される形でグリムは店を後にした。

 これがアイテム屋デンショバトでの初の出来事だった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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