第162話 未練が無いのにこの世に?
未練がない地縛霊?
それとも死を受け入れていない浮遊霊?
真相は何処に?
「未練が無い?」
「「ええっ!?」」
まさかのシルキーの発言。
屋敷に留まっているからてっきり未練があって地縛霊になったとばかりに思っていた。
しかし実際は違った。
シルキーには未練が一切無いようで、それが余計に事態を複雑化させる。
「ちょっと待って、シルキー。本当に未練が無いの?」
『は・い』
「嘘じゃないよね?」
『も・ち・ろ・ん・て・す』
「……それならどうしてここにいるの?」
グリムは代表して訊ねた。
シルキー自身が未練は無いと言っているが、実際には気が付いていないだけかもしれない。
その可能性を考慮するも、シルキーは一体どうしてここに居るのだろうか。
「どうかな?」
『そ・れ・は……わ・か・り・ま・せ・ん』
「分からない?」
『は・い。わ・た・し・が・と・う・し・て・こ・こ・に・い・る・の・か。ど・う・し・て・わ・た・し・ひ・と・り・た・け・が・こ・こ・に・い・る・の・か・な・に・も・わ・か・り・ま・せ・ん』
シルキーはコインを震わせていた。
如何やら本当に分からないらしい。
自分一人だけが屋敷に取り残され、何故屋敷に縛り付けられているのかも、姿を失ってしまったのかも、何もかもが謎に包まれていた。
「グリムー、全然分からないよー」
「グリムさん、シルキーさんはどうして?」
「分からないな。ちなみにシルキーは屋敷の外には出られる?」
『い・い・え、か・ん・か・え・た・こ・と・も・あ・り・ま・せ・ん』
考えたことも無いのなら、地縛霊だろうか?
そうとなれば少しニュアンスを変えてみよう。
グリムは考える素振りを見せてから、シルキーに訊ねる。
「シルキーは家族のことを覚えているよね?」
『も・ち・ろ・ん・て・す』
「それじゃあ家族はこの世に居ないんだよね? 家族の所には行こうとできる?」
『そ・れ・は……』
シルキーの動きが止まった。考えているのか、それとも無理だと悟ったのか。
悲しそうに泣いているのが伝わるので、グリムはそれだけで理解が追い付く。
「もういいよ、シルキー。大体分かったから」
『す・み・ま・せ・ん』
「謝らないで。それよりこれからどうしたい?」
ここまでのことで想像は追い付いた。
シルキーは何らかの理由で無くなってしまい、屋敷の中に囚われた。
いわゆる地縛霊と言う奴で、屋敷の敷地内から出ることは愚か、無くなった家族の下へ旅立つこともできない。あまりにも悲しい現実は、シルキーを縛り付ける何かがあるから。
それはシルキー自身が要因ではなく、未練の外側にある何かで、外的要因。
それがシルキーのことをこの世に縛り付けていて、取り除かないことにはシルキーは解放されなかった。
「シルキーは解放されたい?」
『え?』
「ずっとここに居たいのならそれでもいいよ。だけどそれが嫌なら私は手伝うよ。シルキーが解放されたいのなら、できることはする。それがこの屋敷を借りさせて貰ったお礼になればだけどね」
グリムはシルキーにそう言い切る。
とは言えこれはあくまでも建前だ。
本当はグリム自身が何とかしてあげたいという優しさと、真相が気になるという興味の塊でしかない。
「二人はどうしたい?」
「えっ、ここで私達? うーん、うん、なんとかしてあげたいなー」
「私もです。シルキーさんが良ければの話ですけど……」
グリムはフェスタとDにも促し掛けた。
一瞬迷った様子を見せた二人だったが、シルキーの状況を知ってしまっている。
だからだろうか。もはや何とかしてあげたい。
そんな欲求に駆られると互いに手を挙げてくれて、後はシルキー本人に委ねられた。
「シルキーはどうしたい?」
『わ・た・し・か・て・す・か?』
「そうだよ。シルキーがこのままでいいのなら、私達も不干渉になる。だけどそれが居やって少しでも思うんだったら、私達は協力する。もちろん、そのせいで思いだしたくもない過去が明るみになるかもしれないから、後はシルキー次第だけどね」
『わ・た・し・し・だ・い……』
グリムはシルキーを迷わせてしまった。
しかし最後に決めるのは自分自身だ。
それはどんな時代でも変わらず、本人が嫌がることを強要しても仕方がない。
だからだろうか。シルキーは迷ってしまっている。
一体何が正解なのか分からず、コインが震えていた。
そんな中、Dは口を開いた。
「シルキーさん。私も真実を知るのは怖いと思います」
『て・い・さ・ん?』
「ですから、嫌なら嫌って言ってもいいんですよ! 私達は怒ったりしません。否定もしません。だからシルキーさんが決めていいんです」
『わ・た・し・か・き・め・て……』
Dの呼びかけに答えるためか、シルキーは迷いながらコインを動かす。
本当に真実を知ることが解決への糸口になっているのか。
そのせいで余計に傷口を広げてしまうんじゃないだろうか。
様々な可能性が浮かび上がるも、シルキーは覚悟を決めていた。
『わ・た・し・も・し・り・た・い・て・す』
「シルキーも知りたいの?」
『わ・た・し・た・け・か・こ・こ・に・と・と・ま・り・つ・つ・け・る・り・ゆ・う。い・ま・ま・て・は・み・な・い・ふ・り・を・し・て・き・ま・し・た。で・も・い・ま・な・ら・い・ま・た・つ・た・ら、わ・た・し・は・か・り・に・お・も・い・か・え・し・た・く・な・い・し・ん・じ・つ・で・も・し・り・た・い・と・お・も・え・る・ん・て・す』
シルキーの覚悟は決まっていた。
その気持ちに応えたい。グリム達はそう思うと、シルキーの望みを叶えに行く。
そうと決まればやることは決まった。
早速グリム達は行動に移ると、シルキーと共に向かった。
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