表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/253

第160話 姿が見えないのは何故?

あっという間の一年。

今年も残り二ヶ月ですか……

 リビングに通されたグリム達。

 そのままソファーに座り込むと、放置していたこっくりさんの紙が優しく揺れる。

 置いてあるコインがひらがなをなぞると、早速シルキーは話し始めた。


『み・な・さ・ま・は・な・に・か・お・の・み・に・な・ら・れ・ま・す・か?』


 シルキーがそう呼びかけると、カタカタとティーポットとカップが動いていた。

 その横には乾燥された茶葉の入った筒が置かれている。

 如何やら給仕がしたいらしく、シルキーはこの屋敷の主人にもかかわらず、律義にグリム達をもてなそうとしていた。


「貰おうかな」

「私もー。あっ、でも私さ、上品な飲み方とか知らないよー?」

「わ、私もです。音を立てちゃったりとか……」

『か・ま・い・ま・せ・ん・よ。そ・れ・て・は・い・れ・さ・せ・て・い・た・た・き・ま・す・ね』


 そう言うと、突然ティーポットが宙に浮く。

 ティーカップの中に紅茶が注がれると、グリム達の下に置かれる。

 初めから用意されていたみたいで、グリム達は丁度良い温もりと、湯気を立たせる紅茶に唇を付けた。


「うん、美味しい」


 グリムはゆっくり味わうと、紅茶独特の苦みが喉を潤す。

 それでいて奥深さがあり、風味の豊かさを感じる。

 どちらかと言えばダージリンよりもアールグレイの方が近いかもしれない。

 けれどこの独特の味と香りの層は一体……

 真剣に紅茶を剥き合うと、グリムはふとフェスタとDを見た。二人の意見が聞きたかったのだ。


「二人はどう感じた?」

「「うーん」」


 何故だろう。二人は悩んでいた。

 グリムは首を微かに傾げ、シルキーは不安だからか、コインで言葉を交わす。


『お・き・に・め・し・ま・せ・ん・て・し・た・か?』


 シルキーの感情は他にも伝わった。

 点いている灯りが点滅し始め、リビング内に置いてある家具や小物が微かに揺れる。

 不安が電磁波を介して物体に直接影響を与えていた。


「いや、さー?」

「はい、私には紅茶の味の違いが判らなくて……」

「そうなんだよねー。苦いけどコーヒーみたいに苦くもないしさ、香りも豊かってなに? って感じで……うーん、難しいよー」

「あはは、別に紅茶の味が判らないからと言って落ち込む必要は無いよ。その人が感じる“味”には変化があるからね。美味しいものを不味いと感じる人もいれば、その逆もある。それだけの話だよ。うん、私は嫌いじゃないかな」


 そう言うと、グリムは紅茶を軽く飲む。

 苦みと渋みはあるものの、奥深い何十もの層を舌で感じる。

 それを分解して意識していけば、徐々に甘みを感知できる。

 これは良い紅茶の茶葉を使っている。グリムだけはその事実に気が付くと、シルキーは嬉しそうに飲んで貰えたことを喜ぶ。


『み・な・さ・ま・あ・り・か・と・う・こ・さ・い・ま・す』


 シルキーのコインの動きに高揚感を感じる。

 正直、それはこちらがするべき反応だ。

 グリムはそう思うものの、ここはシルキーを立てることにした。

 代わりにグリムはコインの動きを見守ると、ふと気になってしまう。

 “如何して死んだのか”じゃない、別の疑問だ。


「シルキー、訊いてもいいかな?」

『は・い・な・ん・て・し・よ・う・か?』

「シルキーはどうして姿を見せてくれないの?」

「「確かに!?」」


 ここまで来てあれだが、姿を見せてくれないのは何か理由があるとしか思えない。

 もしかすると、いや、もしかしなくても、姿を見せられない理由があるのだろう。

 どっちだろうか? 一つは単純に姿を見せたくない。もしくは見せられない。

 グリムの中である程度の推測を立てるも、シルキーは無言になる。


「訊いちゃダメだったかな?」


 シルキーは無言だった。コインが震えていて、怯えているようにさえ感じる。

 一体何に? 一体誰に? グリムはコインの動きから読み解こうとした。


「そうだよねー。こーなに楽しそうなのにさー」

「は、はい。もしかして、恥ずかしんですか?」

「それはありそうだね。シルキー、ごめんね」

「ご、ごめんなさいです。私も、私も、恥ずかしいがりなので」


 シルキーのことを考えると、訊いてはいけない領域の話でもある。

 だからこそ無言を貫いている。

 黙秘権を発動され、グリム達は黙るしかない。


「そっか。それじゃあ仕方ないね……」

「ごめんねー、シルキー」

『わ・た・し・も……』

「「「ん!?」」」


 コインが動き出した。

 もしかすると、グリム達のことを思って、建前だけでもと判断したのかもしれない。

 そう感じたのだが、コインが震えながら動いている。


「な、なに?」

「ちょっと黙って。えーっと……私も、姿を見せたいです?」

「み、見せてくれるんですか? えっ、“見せたい”? もしかしてなにか持病でもあるんですか?」

「幽霊に持病? ああ、ゲームの中だからね。可能性は無くはないけど……」

『ち・か・い・ま・す。わ・た・し・に・は・す・か・た・が・な・い・ん・て・す』

「「「ん??」」」


 グリム達ははてなが二つも浮かんでしまった。

 と言うのも、シルキーの言っている意味が分からない。

 “姿が無い”? の謎発言に頭を悩まされると、シルキーの動かすコインが更に震えていた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ