第159話 新しい屋敷の表向きの主人達
ここから最大の謎へ!
グリム達は屋敷にやって来ていた。
手には何の荷物も無い。
あるのは鍵と契約書で、今日からここが〈《アルカナ》〉の拠点になる。
「いよいよだね」
「そうだねー。ここからかー」
「お金もほとんど無くなっちゃいましたよね。もう、引き返せません」
「そうだね。それじゃあ行こうか」
マスターキーを使って扉を開けた。
ガチャン! と音を立て、閉っている扉を開ける。
グリム達は互いに顔を見合わせて、全員でドアノブを握ると、引いて開けた。
「「「ただいま」」」
全員思う言葉は一緒だった。
揃って屋敷の中に入ると、スッと冷たい空気が撫でる。
決して悪くはない空気だ。グリム達は澄んだ表情を浮かべると、壁を叩く音が聞こえた。
・—・・・ ・—・・ —・— — — — —・ ・—・ —・—・— ・— ・・—・— ・—・ —・—・— —・・—
「ねぇ、なんって?」
「えっと、お帰りなさい、皆様、だってさ」
グリムはモールス信号を解読した。
とは言え、シルキーから掛けられた言葉は妙だ。
グリムとDは表情を歪めると、シルキーに返した。
「シルキーさん、それっておかしいと思います」
「そうだね。ここはシルキーの家だから、そんな畏まった態度を取らなくてもいいよ。あくまでも私達は間借りさせて貰っているだけだからね」
シルキーは勘違いをしている。
グリム達はこの屋敷の主人じゃない。
あくまでも表向きには買い取っただけ。けれど本当は元の持ち主に返しただけだ。
だから間違った言葉を吐かれたので、ここはちゃんと訂正する。
「だってさー。ん?」
すると再び壁を叩く音が聞こえた。
耳を澄ましてグリムは聞くと、頭の中で変換する。
モールス信号で、シルキーはこう呟いた。
—— —・ — — — ・—・— — ・・ —・・—・ ・・—・— ・—・ —・—・— —・・— ・—・・ ・・ — — — — ・・— — ・— — — —・—・
—・—・・ ・・— — — —・—・ — —・—・ ・・ ・—・—・ ・—・—— ・・ — — —・—
「それでも皆様がこの屋敷の主人です、律義だね」
「あはは、ここまで来たら頑固だよー」
フェスタの言う通り、シルキーは硬かった。
きっと真面目に育てられてきたのだろう。
丁寧な口調に加えて正しいと思える判断を下す。
そんなシルキーを咎めるのは悪いと思いつつも、グリムは言葉を吐いた。
「それじゃあ私達は、”表向きの主人”でいいよ」
—・— — —
シルキーは驚いてしまった。
言葉が途切れ、考え込んでいる側面が見える。
グリムはここだ。そう思い、シルキーを丸めに掛かる。
「私達はあくまでも表向きの主人。だけど本当の主人はシルキーだ。この屋敷のことを誰よりも詳しく知っているシルキーじゃないと、なにかと不便でしょ?」
「そうだねー。シルキーがいてくれるから、この屋敷も管理できてるもんねー」
「私もそう思います!」
「ほら、全員同意見だ」
グリム達は分かっていた。この屋敷はシルキーが長く幽霊になっても済み続けてくれているから、ここまで維持が行き届いている。
きっと、いや、確実にグリム達ではここまでのことはできない。
その感謝も込め、グリム達はシルキーにこの屋敷を返す。
「ってことなんだけど、これでもダメかな?」
グリムはシルキーに再度訊ねる。
すると少し考える時間を要され、シルキーのモールス信号が消える。
もしかして怒らせちゃった? そう思ったのも束の間。
モールス信号が優しく壁を叩いた。
・・—・・ ・・ ・・— — —・—・ ・—・— — — — —・ ・—・—・ ・—・— — — — ・・—・・ ・— — — —・—・— — — — —・— —・ ・・— —
・—・— — ・・ — — —・— ・—・・?
—— —・ ・—・—・ ・—・ —・・— — —・— ・— — — — —・—・ ・—・— — —・・—・ ・—・・ —・・— —・— ・—・ ・— ・・— —
・—・— — ・・ — — —・— ・—・・?
「いいよ。だってこの屋敷はシルキーの両親のものでしょ? 例え姿形は無くなったとしても、そこに居続ける限り、この屋敷の真の相続人はシルキーじゃないとダメでしょ」
グリムは真っ当なことを唱える。
するとシルキーは諦めたのか、モールス信号で合図を送る。
如何やら何か決めたようで、前向きな音が激しく奏でた。
まるで意思表明の表れのようで、グリム達は心躍らす。
「そっか。ありがとう、シルキー」
「シルキー、よかったねー」
「あ、あの、私達もお邪魔しても」
・—・・ —・・— ・— —・・— ・— — —・ ・—・—・
「構いません、ってさ」
「あ、ありがとうございます、シルキーさん!」
シルキーはこの屋敷の本当の主人になった。
対してグリム達は表向きの主人達となった。
そんな誓いを交わすと、グリム達はようやく屋敷で休むことができる。
「少し休もうか。色々と見て回りたいから
そう口ずさむと、モールス信号が楽しげに踊る。
コンコンと軽快に響き渡ると、グリムは解読する。
・— — —・ ・・ — —・・—
・・—・— ・—・— — —・・— —・— ・— —・ ・—・— — ・・・— —・
・・ —・—・— ・—
「是非、見て回ってください、か。ありがとう、そうさせて貰うよ」
これで一件落着だ。長かったギルドホーム案件も無事終了。
一番の功労者であるグリムは安堵すると、肩から力が抜けた。
これでようやく気兼ねが無くなる。そう思ったのも一瞬、グリムは気になることが生まれた。
「そう言えばシルキーはどうして死んだの?」
「「あっ!?」」
まだ最大の謎が残っていた。
シルキーやシルキーの両親は如何してこの世を去ったのか。
触れてはいけない領域に位置する、謎めいたことにグリムは首を突っ込む。
もちろん無粋だとは思った。
けれどシルキーのことを考えると些か気になる。
一体何があったのか、如何して死んでしまったのか。
気になる謎が残る中、シルキーは無言を貫くと、勝手にリビングの扉が開き、グリム達を招くのだった。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。