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第157話 買うしか無くなってしまった

惨敗、心が痛い。

『み・な・さ・ん・は・ふ・た・ん・な・に・を・さ・れ・て・い・る・ん・て・す・か?』

「普段の生活? えっと、私とグリムは学生でー。Dは?」

「私も高校に通っています」

「そっか、全員学生なんだねー」

「うん。シルキーは?」


 グリムはシルキーに話し掛ける。

 するとコインが動いた。

 こっくりさんの紙を動くと、文字を辿っていく。


『む・か・し・は・わ・た・し・も・か・く・し・ゆ・う・い・ん・に・か・よ・つ・て・い・ま・し・た。い・ま・は……』


 そこでシルキーの動きが止まる。

 如何やらシルキーも昔は学生だったらしい。

 けれど今となってはシルキーは幽霊となってしまっているので、そんな日常は遅れない。

 ましてやグリム達が屋敷に足を運ぶまで、ずっと一人寂しく過ごしていたのだ。


「ごめん、変なこと聞いちゃって」

「「……」」


 グリム達は自分達の過ちを律した。

 シルキーのことを考えていない発言だった。

 目元を暗くすると、シルキーは高速でコインを動かす。


『い・い・え。わ・た・し・は・な・に・も・き・に・し・て・い・ま・せ・ん・よ。い・く・ね・ん・か・す・き・た・と・き・の・な・か。わ・た・し・は。ひ・と・り・で・す・ご・し・て・き・ま・し・た・け・ど、ま・い・に・ち・を・た・の・し・く・お・く・れ・て・い・ま・し・た・の・で。お・き・に・な・さ・れ・な・い・で・く・だ・さ・い』


 如何やらシルキーに気を遣わせてしまったらしい。

 グリム達はそれが相まってか、より一層申し訳ない気持ちになった。

 けれどそんな顔をすれば、シルキーを悲しませかねない。

 今できること。それはシルキーとの付き合い方だけだった。


「シルキー、私達、毎日は無理だけど、ここに住んでもいいかな?

「え!?」

「「グリムー」さん!?」


 グリムは迷いながらも声に出した。

 するとシルキーだけじゃない、フェスタとDも目を見開く。

 ここで結論を出すのは早いだろう。

 けれどグリムはもう決めていた。


「私達はそう長くここには居られないけど、ここを拠点にしたいんだ。どうかな?」

『わ・た・し・は・か・ま・い・ま・せ・ん・よ。む・し・ろ・た・れ・か・と・い・つ・し・よ・の・し・か・ん・を・た・い・せ・つ・に・し・た・い・て・す』


 シルキーは肯定的な反応を見せてくれる。

 これは好感触。そう思ったグリムはフェスタとDの顔を窺う。

 如何やら幽霊屋敷購入を踏み切ったグリムのことに引いている様子だ。


「フェスタ、D?」

「うーん、私は良いんだけどさー。Dは怖くないの?」

「えっと、その、私、怖いものは苦手で……」


 そう言うと、シルキーが高速でコインを動かした。

 あまりの速さに目で追うのが大変で、グリムは瞳孔を見開く。

 瞬き一つする隙が無く、グリムは必至に目で追った。


「えっと、なになに……わ・た・し・は・こ・わ・く・な・い・で・す・よ? 

だって」


 シルキーは必死だった。

 本気で人に居なくなられるのが寂しいらしい。

 それもそのはず、こんな大きな洋館の屋敷に一人ぼっちなんて、幽霊でも寂しい筈だ。


「Dはシルキーが怖い?」

「こ、怖くは無いです。でも……」

なにかいる(・・・・・)、ってことかな?」


 グリムは知っている。Dには【気配察知】のスキルが使える。

 そのせいだろうか。

 シルキー以外の何者かが潜んでいる気配をずっと感じているらしい。


「シルキー、この屋敷には他に誰かいるの?」

『そ・れ・は』

「やっぱりなにかいるんだね。……どうする?」


 グリムはこの圧倒的な不利な状況の中、フェスタとDに促し掛ける。

 もちろん正気なのなら、一瞬にして一蹴する筈だ。

 けれどフェスタは楽しそうに親指を立てた。


「ゾクゾクするねー。なんか気に入った。ここがダンジョンみたいなものでしょ?」

「そうだね。確かにそれだけで言えば楽しそうだ。Dは?」


 後はDの一声だけだ。

 貰えるだろうか。正直、怪しい。

 けれどDは考える素振りを見せると、シルキーに訊ねた。


「シルキーさん、シルキーさんは、こんな臆病な私ともお友達になってくれますか?」

『は・い』

「こんなに怖がってしまっているんですよ? それでも……」

『こ・わ・か・ら・れ・る・の・は・し・よ・う・し・き・な・れ・て・い・ま・す。た・か・ら・こ・れ・た・け・お・は・な・し・か・で・き・る・の・て・わ・た・し・は・う・れ・し・い・で・す』

「シルキーさん。……分かりました、グリムさん! 私もここが良いです」


 何か吹っ切れたらしい。

 Dの目の色が変わると、覚悟の火を灯している。

 グリムとフェスタの目にはそう映ると、シルキーに改めて訊ねる。


「って、ことだけど、大丈夫かな?」

『は・い。お・ま・ち・し・て・い・ま・す・ね』


 シルキーからの了承も得た。

 これが確実に“買う”以外の選択肢が消えた。

 グリム達はそう悟るも、誰も選択に後悔はない。

 むしろこれで良かったとばかりに笑みを浮かべ、明日納金することにした。

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