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第156話 こっくりさんをやってみる

皆さんは“こっくりさん”やったことありますか?

私はないです。

 グリムは幽霊を連れて一階に下りて来た。

 階段の下にはフェスタとDの姿がある。

 心配した様子でグリムの顔を見ると、ハッとなった顔をする。


「グリムー、どうだった? なのかいた?」

「なにかって?」

「幽霊だよ、幽霊! 本当にいたの?」


 グリムはフェスタに真正面から言われて表情を歪める。

 するとグリムは「さぁ、どうかな」と返してみた。

 するとDが震えた様子で、グリムに訊ねる。


「ぐ、グリムさん! 幽霊、いたんですか?」

「幽霊は……まあ置いておくとして、窓が開いてた」

「「窓?」ですか?」

「うん。私達以外誰もいないのに、不思議だよね」


 グリムは明らかに幽霊が居ますよ、と断言した言葉を掛ける。

 するとフェスタは目をキラキラさせ、嬉々とした態度を見せる。

 代わりにDは顔から色が抜けると、今にも膝が折れてしまいそうだった。


「D、大丈夫?」

「グリムさん、止めてくださいよ。その、そう言った話、苦手です」

「そっか、Dは苦手なんだ。……って言いたいけど、少し我慢してくれるかな?」

「えっ?」


 悪いけどここはDを優先できない。

 グリムは手にした紙をフェスタに見せびらかすと、首を捻る。

 紙に何が描いてあるのかなんて一切覚えていないようで、そんなのグリムも同じだった。


「グリム、それなにー?」

「今から試したいことがあるんだ。リビングに行こう」

「試したいこと?」

「ですか?」

「うん、試したいこと。付いて来て」


 グリムは楽しげに先導する。

 するとフェスタとDは不思議なので、互いに顔を合わせる。

 首を横に捻ると、先にリビングに入るグリムの姿を追い掛ける。


「「待ってよー」ください」


 フェスタとDはグリムの背中を追った。

 開け放たれたリビングの扉を潜ると、ゾワリと肌が冷たい。

 身震いして鳥肌が立つと、閉めてもいないのに扉が閉まる。


 ガチャン!


「ひやっ!?」

「おお、閉った閉まった、勝手に閉まったー」


 Dは怯えてしまうが、フェスタはばんざいをする。

対照的な二人の反応を楽しむと、グリムはテーブルの上に紙を置く。


「後はコインを用意して……」


 インベントリの中から一枚のコインを取り出した。

 少し大きめで、コイントスに丁度良さそうな、表裏異なる模様が描かれている。

 この間デンショバトでピジョンに無料で貰ったもので、如何やらこのゲーム世界で昔使われていたお金らしい。ただの骨とう品かと思っていたが、こんな形で役に立つとは思わなかった。


「なにこれ、五十音?」

「紙に書いてありますね。それから、はいといいえ……数字が〇から九まであって……鳥居は……コレって、なんですか?」

「知らない、こっくりさん」

「「こっくりさん!?」」


 グリムが用意した紙。

 そこにはひらがな五十音に、意味深なはいといいえの文字。数字の羅列と鳥居が描かれている。

 明らかにヤバめな雰囲気を感じるが、ずっと昔に流行ったもののパクリ。

 そう、これは日本の降霊術で昔から親しまれている、こっくりさんと言うものだった。


「こ、こっくりさんってなんですか?」

「こっくりさんは、降霊術の一種だよ」」

「「こうれいじゅつ?」」

「幽霊を呼ぶ儀式ってこと。まあ、成功する保証は無いけどね。そもそもこれは子供騙し程度なもので、実際に霊能力者でも無ければ……あれ?」


 グリムはそこまで話すと、Dはガクガクブルブル震えていた。

 如何やら怖くなってしまったらしい。


「D?」

「あ、あの、はい、大丈夫です。グリムさんがやるっていうなら、私頑張れます!」

「ありがとう。でも本当に悪い子じゃないんだよ? ねっ」


 グリムが声を掛けると、ラップ音がコツンコツンと響いた。

 モールス信号じゃないので読めない。

 グリムは眉根を寄せるも、ここはこっくりさんの出番だ。


「ねぇ、ここにコインを置くから、コインで文字に連続して動かして話してくれない?」


 グリムは幽霊に頼むことにした。

 モールス信号だと効率が悪いし、知っていないと話しができない。

 ならばと思い、グリムはこっくりさんの真似事をしようと思ったのだ。


「OKだったら、コインを動かしてみてくれないかな?」


 グリムが幽霊に対してそう尋ねると、ラップ音が完全に聞こえなくなる。

 もしかすると嫌われただろうか。

 グリムは若干の静寂が不気味に思う中、隣を何かが横切った気がした。


「えっ?」

「グリム、見てよ!」

「こ、コインが、コインが!?」


 フェスタとDが動揺した。

 一体何が起きているのか、ふと紙に目を向けると、コインが動いていた。

 丁寧に一つずつ文字を刻んでいくと、会話が成立する雰囲気を持つ。


「は・じ・め・ま・し・て。わ・た・し・はし・る・き・い・と・い・い・ま・す。こ・の・い・え・に・す・ん・で・い・る・ゆ・う・れ・い・て・す……だって」

「「……」」


 グリムが代表して読み上げると、フェスタとDは言葉を失う。

 それもそのはず、まさかこうも上手く会話が成立するとは思わなかった。


 おまけにグリムの予想も当たっていた。

 屋敷に立ち入った瞬間から、存在を示そうとしていた。

 とは言え危害を加える気は一切無く、ましてやもてなそうとしてくれていた。

 それだけ育ちが良い証拠で、言葉遣いも綺麗。


 おまけに物理的に干渉ができるタイプの幽霊だった。

 そのおかげか、コインを動かすことができている。

 ましてや疲れた様子もなく、コインが微かに震えていた。


「シルキーっていうんだ。私はグリム、この騒がしいのはフェスタで、怯えているのはD。私の友達で、大切な仲間だよ」

『お・と・も・た・ち・な・ん・で・す・ね。あ・の・わ・た・し・と・も・な・か・よ・く・し・て・は・く・れ・ま・せ・ん・か?』

「仲良くだって。私は構わないよ。二人は?」


 グリムはフェスタとDに問い掛ける。

 今までも放心状態は困る。

 せっかくシルキーが話してくれているのだ。返す言葉を持つべきだった。


「えっ? 全然いいよ、むしろ大歓迎!」

「フェスタはいつも通りだ」

「あ、あの、その……怯えちゃってごめんなさいでした。わ、私で良かったら、仲良くして欲しいです」

「Dまで……だってさ」


 グリムが促し掛けると、シルキーはコインを動かす。

 優しく丁寧に。しかし高揚感を抱いている。

 それが伝わるのはコインの動き方が嬉しそうだからだ。


『こ・ち・ら・こ・そ・あ・り・か・と・う・こ・さ・い・ま・す! よ・ろ・し・く・お・ね・か・い・し・ま・す』

「うん、よろしくね」

「「よろしくー」お願いします!」


 グリム達はシルキーと言う幽霊と仲良くなることができた。

 そこに恐怖心と言うものは微塵もない。

 コインが楽しそうに右往左往すると、話ができて楽しいのが伝わり、グリムも試してよかったと胸を撫でた。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

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