第154話 ラップ音が響いてる?
ラップ音って、聞いたことありますか?
グリム達は不思議と不気味が入り混じる洋館の屋敷を探索する。
リビングを見ただけだと、まだ判断を付けてはいけない。
そう思ったからか、他の部屋も見て回る。
「とりあえず、他の部屋も見てみようか」
「えっ、他の部屋もですか!?」
ブルブルと身震いするDからしてみれば、恐怖でしかなかった。
できるだけ早く退散したい。
そんな気持ちを抱きながらも、必死にグリムに付いて回る。
「D、やっぱり怖い?」
「は、はい」
「そっか。それじゃあこの屋敷は止めておこうか?」
グリムはそう答えた。
ギルマスとして、メンバーのことを気遣うのは当然だ。
ここ以外にも良い物件はある。決してここで決めてしまってはいけないのだが、その瞬間、何故かシャンデリアの灯りが点滅する。
「ひやっ、な、なんですか!?」
「うーん、幽霊を怒らせちゃったかな?」
「ぐ、グリムさん!?」
「あはは、冗談だよ」
正直シャンデリアが点滅するくらいでは、グリムは動じない。
けれどDはより一層怖くなると、グリムの腕を掴んで離さない。
「ねぇねぇグリムー。シャンデリアが点滅するってことあるの?」
「あると思うよ。電気が通電している筈だから」
「おおっ、そこはリアル思考」
「確かにね、何処から電気を供給しているのかな。太陽光パネルでも屋根に取り付けらていれば、面白いかもね」
グリムはフェスタが面白いことを言ってくれたので嬉しかった。
和ませようとしているのが伝わると、頬を掻く。
薄っすらと笑みを浮かべると、グリムはDの頭を撫でる。
「D、大丈夫だよ。実害が出るなら、既に出ているから」
「実害が出たらもう手遅れですよ」
「確かにそうだね。でも、今の所大丈夫だから、Dも怖がらないで。だって……」
グリムはDの耳元で声を掛ける。
フッと息が掛かると、Dは背筋を伸ばす。
耳の先まで真っ赤になると、グリムは呟く。
「ここはゲームなんだから。実際にはいないんだよ」
忘れてはいけないのはここはゲームの中である事実だ。
とは言えこの世界で生きるNPC達はしっかりと生を受けている。
その事実と上手く折り合いをつけることで、正体不明な幽霊さえ上手く理解できる。
「は、はい……」
「うん、分かってくれてよかったよ」
Dも如何やら分かってくれたらしい。
グリムは嬉しく笑みを浮かべると、背後ではフェスタが朴念仁を見る目で居た。
ふと溜息を漏らすと、「あーあ、グリムらしいー」と、フェスタに聞こえないように呟いていた。
「それじゃあ他の部屋を見てみようか。まずは隣の部屋からだね」
「リビングがやけに庶民的だったけど、こっちは洋館っぽいかな?」
「さぁね。少なくとも右側が屋敷の人が使うもとして、客人を出迎える部屋が無いのは考え辛い、となれば……」
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「ん?」
「どうしたの、グリムー?」
適当に喋っていると、グリムは変な音を聞いた。
壁を伝う様に響くと、まるで会話をしているみたいだ。
「フェスタ、D、今なにか聞こえなかった?」
「なにかって?」
「な、なんですか!?」
如何やらはっきりと耳で聞いたのはグリムだけらしい。
となれば気のせいだろうか。
そう思ったの束の間、あまりにも規則性のあった音に、グリムは不自然に感じた。
「ラップ音……にしては、会話じみていたけど」
考え込むグリムだったが、その脇をフェスタは通り抜ける。
それから左の部屋を開けると、そこには広い間取りが取られていた。
如何やら待合室のようで、大きな長い机に全く同じ大きさの椅子が陳列されていた。
「待合室だね」
「待合室かー。ってことは、こっちの部屋の向こうには?」
「大広間かな? それにしてはスペースが……」
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「やっぱり聞こえる」
明らかにラップ音の長さが先程よりも長い。
しかもこの音の具合、丁寧に振舞おうとしているのが判る。
育ちの良さが伝わると、グリムはハッとなった。
「もしかして大広間は少し奥?」
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「やっぱり、誰かいるんだ」
明らかに会話が成立しているラップ音だ。
しかもこの音は階段を伝っている。
いてもたってもいられない。グリムは好奇心が競り勝つと、壁が伝った音を頼りにする。
「フェスタ、D、少し待ってて。私、調べて来るから」
「「グリム」さん!?」
グリムは壁を伝った音が一階では無いことを見抜く。
この音はここじゃない。恐らく上か下。
根拠は音の伝わり方で、グリムは一旦階段を上ってみることにして、待合室を出る。
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