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第153話 埃一つ落ちてない?

不思議な不思議なお屋敷。

 部屋を開けると、そこはリビングだった。

 間取り的にもかなり広く、快適にくつろげるように配慮されている。


 不動産会社が定期的に管理しているおかげか、家具には目立った傷も無い。

 とは言え新調されたものではなく、どれもこれもがレトロなアンティーク品だった。


「凄い、凄い凄い! なーんか、凄い」

「本当に凄いです。観たことも無いものが一杯あって」


 フェスタとDはとてもはしゃいでいた。

 もはや会話に中身は無く、パッションで会話をしている。

 しかしながら、それも分からなくはない。

 グリムもリビングに入った瞬間、広がる面白いものに、多少なりとも興奮していた。


「確かにね(古いものが多いな。この世界の歴史は知らないけど、百年くらいは経っているものもある?)」


 グリムの見立てでは年代物も多かった。

 それにしてはあまりにも不気味で、テーブルとソファーを見る。

 指でテーブルをなぞり、ソファーも手のひらで撫でる。


「やっぱり……」

「やっぱり?」


 グリムは指で拭き取り自分の目で見る。

 すると気になっていた疑問が湧いた。

 答えを求めるように周囲を見回すと、所々が変に奇妙だ。


「あの不動産会社の振る舞いを見るに、この屋敷は……それに、鍵も」


 グリムはこの洋館の屋敷の鍵を再度見る。

 ゲームでよく見るようなファンタジー色の強い西洋風の鍵。

 それは変らないのだが、先端の部分が妙に汚れている。


「私の予想が確かなら……」


 鍵の先端をハンカチで拭き取る。

 するとハンカチの拭いた面が少し汚れる。

 埃が付いたように黒ずむと、相当長い間人の出入りが無いことが窺えた。


「ってことはこの違和感の正体は……」


 グリムはソファーに腰を下ろすと、フカフカなことにも疑問を持つ。

 時間が経っているから中のクッションが弱いのは分かる。

 けれどそれを抜きにしても気になってしまうのは、カビ臭さが一切無いこと。

 それに座った瞬間、抜けるような感じも無く、むしろフカフカで心地が良かった。

 かなり高級なソファーなようで、丁寧に扱いたい。


「ふぅ、変な家」

「どうしたのー、グリムー? なにが変なのさー?」


 グリムが一人達観視していると、フェスタは気になってしまった。

 ソファーに腰を落ち着かせるグリムに話し掛けると、何が変なのか訊ねる。


「なにが変なの?」

「変なことでもあるんですか?」

「もちろんあるよ。実際、この屋敷には変なことが多すぎる」

「「えっ?」」


 グリムの問い掛けに、フェスタもDも付いてぉれない。

 首を捻り、なんのことかさっぱりなようだ。


「変なこと、起きてる?」

「えっと、私には分かりません」

「そう? この部屋だけでも変なことは多いよ」


 グリムは自分が見つけた変なことを話した。

 例えば今グリムが使っているテーブルとソファーだ。


「例えばこのテーブルとソファー。何処か違和感はない?」

「違和感ですか?」

「うーん、なににもないけど?」

「よく見て。埃が一つも落ちて無いでしょ? 変だとは思わない。こんなこと、ほぼ毎日掃除をしていないと起り得ないでしょ」


 グリムは第一の違和感を話した。

 フェスタとDも言われてみればな顔をしてそこら中を凝視する。

 すると埃が一つも落ちていないことに気が付いたようで、口元を覆ってしまった。


「「た、確かに!?」」

「埃が一つも落ちていない。つまり定期的に掃除をしている。一体誰が? 誰も立ち寄らない筈なのに……」ほら、考えれば考えるほど変でしょ?」


 グリムが謎を透過すると、フェスタは釘付けになってしまう。

 逆にDは怖くなったのか、身震いを始めてしまった。


「D?」

「なんだか怖いですね」

「そうだね。不思議ではあるよね。でも、少し面白いよね」

「うわぁ、この状況を楽しんでるよー」

「それはフェスタも同じでしょ」


 本当に不思議な屋敷だった。

 ふとグリムは頬杖を付きながら部屋の中を見直す。

 ふと気になったもの。それはリビングに聞こえる微かな音だ。


 チクタクチクタク……


 この音の正体。それはリビングの壁に備え付けられた時計だ。

 現代のデジタルなものではない。古いアンティーク調の壁掛け時計。

 アナログタイプの文字盤だが、それは螺子巻き式だった。


「本当に、不思議だよ」


 そこに掛けられた壁掛け時計は今日も“正確な時を刻んでいる”。

 埃一つも残さない。文字盤が汚れてもいない。油が注され、螺子も撒かれ、今も誰かが手入れをしている証拠がすぐ近くに置いてあった。

 まさに今もこの瞬間でさえも誰かが住んでいる。

 その痕跡を残すと、面白さが倍増すると同時に、奇妙で変な屋敷だとより一層際立たせていた。

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