第152話 幽霊屋敷だけれども
事故物件でも幽霊付きの豪邸なら住みたいですか?
ガチャン!
「開いたね」
「当り前だよ。ここのマスターキーだから」
グリムが手にしている鍵は、露骨な程西洋風。ゲームの中でしか出て来ないような、金色の鍵だった。
「さぁ、入ろうか」
「GOGO、入ろう!」
「そんなに興奮しなくても……うわぁ、広い」
グリム達は洋館の屋敷の中に入った。
屋敷の中は思った以上、西洋の屋敷で、早速驚く程,エントランスからでき上がっていた。
「THE 西洋風だね」
「うん。玄関から入って、玄関ホールに賭けて、イメージ通りの構造だ」
エントランス=この場合の玄関ホールの中、そこは真ん中に二つの階段が向かい合わせに設置されている。
その奥には二つの扉。逆に左右にも扉がある。
全体的に明るめの黄白色が主になっており、天井のシャンデリアが無駄に爛々と輝いていた。
「私、シャンデリアなんて初めて見ました」
「私もあまり見たことは無いかな」
「テーマパークとかホテルぐらいだよねー」
「普通はね。でも、ここまで明るいと、少し目が痛いかな?」
グリムがそう呟くと、シャンデリアの光量が少しだけ減った。
チカチカとしていた輝きがぼんやりになると、目の痛みも消え、庶民には慣れた光量になる。
「そう言えば、誰が光量変えたの?」
「「えっ?」」
グリムは気になっていて如何でもいいことに着目する。
実際、シャンデリアの光量は急に減った。
まさか声に反応するようなタイプではない。そこまで来ると、AIが導入されいているとしか思えず、世界観が若干壊れてしまうと思ったのだ。
「まあ、少し科学的な要素も入って入るけど、流石にここは古い事故物件だ。そこまで最新の機能が搭載されている訳ない筈で……」
「なに言ってるの、グリム?」
「そうですよ、グリムさん。ゲームなんですから、気にしないことにしましょう。そうじゃないと、ちょっと怖いです」
グリムはDが怯える姿が少しだけ可愛く見えた。
しかしこの反応、まるで幽霊でも居るみたいな想像力だ。
(この屋敷には幽霊が居るらしいけど……あっ!)
そう言えば言い忘れていた。
もの凄く大事な要因をここまで忘れていた。
事故物件と言う時点で推測しているとばかり思っていたが、グリムはここまでひた隠していたつもりはない。この状況で言うのは、少し忍びなかったが、グリムは口走った。
「二人共、ごめんね。一つ大事な話をしていなかったよ」
「大事な話って?」
「なにかあるんですか、グリムさん?」
「うん。この事故物件、実は前の家主が謎の死を遂げているんだよ」
「それは資料に書いてあったよ? ねー」
「はい。グリムさんが作ってくれていた資料に書いてありましたよ」
確かにその辺は書いている。
実際、資料に書いてあった情報だ。
そこを忘れてしまうとなれば、グリムの大問題になり兼ねないので、ちゃんと書き起こしていた。
「いや、それじゃないんだよ。実際、こっちを忘れてたけど、この屋敷には幽霊がいるんだ」
「「えっ?」」
「でも安心して。何故かは分からないけど、曰くとか忌むべきとか、そんなのは一切無いみたいだから……多分ね」
「「多分!?」」
グリムの泳いだ目にフェスタとDは目を見開く。
流石に来てから言われるとは思わなかったらしい。
実際、グリムもその点に目を瞑れば素敵な屋敷だった。だからだろうか、自然と自分の頭の中から消していた。本当に申し訳が無く、グリムは仲間にも幽霊にも心の中で手を合わせた。
「本当にごめん。言い忘れてたよ。許しては……フェスタはなんで嬉々としていて、Dは予想通り怖がってるの?」
ふと顔を上げると、飛び込んできたのは二人の全く異なる表情。
フェスタは何故か嬉々とした目を浮かべ、キラキラと高揚感に駆られている。
一方Dは典型的で怖がっている。足が震えてしまい、ガクガクブルブル小刻みに体を揺する。動悸を打ちそうになっていて、心肺になってしまった。
「D、大丈夫?」
「は、はい。ごめんなさい、私、幽霊は、その……ちょっとだけ」
「苦手なんだね。それでフェスタは?」
「なーにそれ、めっちゃ楽しいじゃん。それじゃあこの屋敷って、幽霊屋敷なんだよね! ねぇねぇ、楽しいよね!」
「た、楽しくは無いですけど……あの、本当にここをギルドホームにするんですか?」
「それは全体像を見てから決めるよ。もしDが嫌なら、ここは辞めてもいいよ?」
「が、頑張ります」
何故だろう。Dの痩せ我慢が強かった。
グリムはギルマスとして困り顔を浮かべるも、一応来たからには見て行くしかない。
本当に幽霊が居るのかすらも怪しく、真実を見出すには自分の目で見届けるしかないのだ。
「もう少しだけ見て見てもいいかな?」
「私は大賛成!」
「は、はい。幽霊なんて怖くない、幽霊なんて怖くない」
「D、無理に恐怖心を克服する必要は無いよ。できないことがあってもいいんだから、人間、誰かと一緒じゃないとダメなんて理由、何処にもないんからね」
「は、はい……そうですけど、頑張れ、私」
Dは無理をしていた。グリムに付いて行くことだけが手綱なっている。
グリムはそんな震えるDの手を握ると、フェスタを先導にとりあえず部屋の一つに立ち入ることにした。
「それじゃあまずはこっちから」
「フェスタ、乱暴に扱わないでね」
「分かってるよーだ」
フェスタは楽しそうに屋敷の中を散策する。
その後ろ姿にハラハラしながらも、グリムはいつも通り立ち回る。
壁を凝視し、シミなどが一つもないなど、違和感が零れる中、隣の部屋に向かった。
・— ・・・ — —・—・ ・— —・・— ・— — —・
壁を叩く様な音は小刻みだった。
まるで少女が存在を誇示するかのようにか細いがとても力強い。
けれどその音が届くにはあまりにも小さすぎ、グリム達でさえ気が付かなかった。
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