第150話 事故物件を見に行こう
ついに150話! ブクマとか星とかくれくれ〜
っと、事故物件って買われる方が多いらしいですね。
場合によると、相場をグッと割るとか。
グリム達はいつもの喫茶店にやって来ていた。
陣取るように一番奥の席に着席すると、運ばれてきた飲み物を前に、グリムはフェスタとDに話し出した。
「二人共、一応物件を決めたんだけど……いいかな?」
「いいよー「ですよ」」
グリムはまだ物件の資料も見せてもおらず、ましてや間取りすら渡していない。
にもかかわらずフェスタとDは速攻でOKを出した。
あまりにも返答のレスポンスが速いので、グリムは一度咳き込んだ。
「二人共、もう少し会話をしようか」
「えー、会話? うーん、今日の講義だったんだけどさー」
「フェスタの講義は私達には関係ないよね。Dもごめんね、大学の話だから」
「大丈夫ですよ。むしろグリムさん達の大学の話が聞きたいです!」
「そうーそーう? それじゃあ話して……」
「そこまでだよ。フェスタ、D。一度これを見て」
グリムはフェスタとDの間に手を入れると、データ化した資料を配った。
強制的にメニューが開かれると、そこにはグリムが必死になって選んだ物件の情報が資料として表示される。
簡略化したもので、グリムが分かりやすいように、新しくプレゼン資料を作り直したものだった。
「あれー? これってグリムが作ったのだよねー? すっごく見やすいねー」
「そうなんですか!? グリムさんって凄いですね」
「褒めてくれてありがとう。それよりまずは大事な知らせなんだけど、その物件、事故物件だから」
「「事故!?」」
グリムは肝心な説明を始めにして置いた。
事前情報を叩き込もうとするが、フェスタとDは驚いて吹き出しそうになる。
それもそのはずで、グリムが事故物件を持ってくるとは思わなかったのだろう。
おまけに事故物件と言う言葉はネガティブワードだ。脳に染み込んでしまい、不安感を露わにさせてしまった。
「なーんでそうなるのー?」
「なんでとは? そうなるとは?」
「事故物件を選ぶなんて、グリムらしくないよねー?」
「そうかな? うーん、確かに私らしくは無いかもね」
「でしょ?」
グリムはフェスタに言われて気が付いたのではない。フェスタのおかげでより一層思い出したのだ。
この事故物件を選んだのは、あくまでもグリムの意思ではある。
けれどこの事故物件を選ぶきっかけを作ったのは、決める結論に至ったのは、自習室で出会った冠木の一言が強い。何故確信を付いて来れたのか、もしかしてこのゲームを遊んでいて、実際は狙っていたのか? 様々な憶測が飛び交うが、それは一つの要因に過ぎない。
「確かに考えれば考える程、私らしくは無い。けど、直感は働いたよ」
「ええっ!? うーん、じゃあ行ってみる?」
「フェスタさん、すぐに折れちゃうんですね」
「そういうDはどうなのさー?」
Dは珍しくフェスタに茶々を入れていた。
それだけ信頼が確立できる仲になっているのだ。
微笑ましい光景だったが、Dの意思は変わらなかった。
「私はグリムさんが良いならここにします」
「うーん、相変わらずだね」
「はい?」
Dは瞬きをすると、首を捻ってしまった。
一体何に起られているのか。Dには少し分からない。
グリムはその顔色に現代人特有のものを見出すと、頭を抱えてしまいそうだ。
「まあ、少しずつ慣らせばいいかな。とりあえず、事故物件の情報だけど……」
「すっごい大豪邸だね。大きい」
「こんなお屋敷入ったことも無いです」
「私も無いよ。だけど敷金も礼金も無し、おまけに税金もね」
「うわぁ、現実的―。ゲームなのに、ゲームなのにさー」
資料に映る豪邸は、超が付くほどのお屋敷だった。
にもかかわらず、事故物件として因縁があるのか、敷金も礼金も税金も無い。
あまりにも曰く付き過ぎて全身が震えると、明らかにヤバい臭いがした。
「これ、入って良い奴?」
「私も良くは分からないけど。一応鍵は借りて来たよ」
グリムはインベントリの中から鍵を取り出した。
先程不動産会社に立ち寄り、担当から鍵を受け取ったのだ。
一瞬見せた強張った表情。まるで「気を付けて」と言っているようで不気味だった。
「鍵を借りてきちゃったんだー。うーん、じゃあ行ってみる?」
「とりあえずはね。Dもこの後時間ある?」
「はい、大丈夫です! そのために早めに課題を終わらせてきましたから」
「そっか。それじゃあ今度課題を見てあげるよ」
「いいんですか!?」
グリムはDにも悪いと思い、一応訊ねてはみた。
しかし予想以上に返しの速い返答に驚く隙も無い。
グリムはDの頭を軽く撫でると、注文した飲み物に手を付ける。
「とりあえず飲んでから行こうか」
「OK」
「分かりました。えへへ、グリムさんに勉強見て貰えるんですね。嬉しいです」
「グリムー、私の課題も……」
「それは自分でやってくれるかな?」
「むーん、グリムー」
喫茶店の中に談笑が響く。
とは言え他の客は居ないので、誰の聞こえる訳でもない。
カウンターでグラスを磨くマスターとウエイトレスを除いては、誰も微笑ましい表情を浮かべていない店内だった。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。