第146話 幽霊屋敷の噂
いよいよ第4章の幕開け。
ギルドホームを手に入れろ!
・・・これはある家族と屋敷に関する噂だ。
あるところに仲の良い三人の家族が住んでいた。
家族は××で大商人として有名で、それは街の人達から慕われていた。
そんなある日家族は近くの森の中に一軒の屋敷を建てた。
大商人らしく立派で造りは良く、休日は家族揃って屋敷で過ごしていた。
・・・しかし家族の日々はそう長くは続かなかった。
ある朝、母が熱を出した。今まで病気の一つもなったことのない母がだ。
それから程なくして父も病に倒れた。骨が軋み、体が動かなくなってしまった。
段々と意識が遠のいて行った。間もなく、家族は離れ離れになってしまった。
・・・一人残された娘は孤独に震えてしまった。
それは優しくて美しく可憐な娘で、家族の自慢の娘だった。
けれど一人ぼっちになったことで心を痛めてしまった。
街の人達は娘を心配して、屋敷から連れ出そうとした。
しかし娘は屋敷から離れようとはせず、街の人達もそれを受け入れた。
・・・娘は弱っていた。段々と体から力が抜け、若々しい姿のまま窶れて行った。
娘は体を動かせなくなった。屋敷の地下室でそのまま意識を失った。
程なくして娘は亡骸となっていた。
けれど娘の遺体を街の人達は触れることができず、そのまま地下室で消えてしまった。
・・・それからと言うもの、屋敷には誰も近付こうとしなかった。
時を同じくして、屋敷では奇妙な噂が立ち始めていた。
ある晩、肝試しにやって来た男女が居た。屋敷に近付き、噂の真相を確かめようとしたのだ。
・・・屋敷には一人取り残されて孤独に死んだ娘の霊が出る。
娘は自分と友達になってくれる人を捜している。
友達になってしまったが最後、娘のいる場所へと連れて行かれてしまう。
そんな奇妙な噂が長年流れ続けていたのだ。
・・・屋敷の中は当時と何ら変わっていなかった。
まるで何者かが定期的に掃除をしているようだった。
不思議に思った男女はそれから屋敷を散策して回った。
しかし何も無く、嫌気が差した男女は屋敷を出ようとした。
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壁を叩く様な音が響いた。
男女は急に怖くなり、背筋をゾクリとさせた。
意を決して振り返り、何か居るのかと探った。
・・・男女が見たのは青い人型だった。
男女は怖くなり、屋敷を急いで後にした。
それからと言うもの、屋敷に近付こうと思う者はいなくなった。
・・・あれから更に数十年。
その屋敷は今も存在している。
しかし名前も過去に何があったのかも誰も知らない。
それでもなお売られ続けていた。
・・・けれど奇妙なことにその屋敷の名前だけはこう呼ばれていた。
幽霊少女の住む屋敷。君が悪るがられ、誰も近付こうとしない屋敷。
そこには今も済んでいるのだろうか。
たった一人、孤独に彷徨う娘の霊が・・・
「って、設定どうかな?」
ユカイは楽しそうに自分が考えた設定を企画書にまとめて話していた。
それを聞いていたアイとナミダ。それからフシギは首を捻る。
本当は怖くなるような口調で話せばいいのに、ユカイは絶えず楽しそうに愉快に話し続けていたからだ。
「ユカイ、それじゃあ誰も怖がらないよ?」
「全然怖くない」
「おまけに話として重い筈なのに、カジュアルになりすぎだ」
酷評の嵐を喰らってしまった。
ユカイはせっかく考えて考えて、渾身の出来となった話を蹴られてグサリと心に楔を撃たれた。
けれどユカイはすぐさま立ち直る。僅か十分で書き上げた設定にはそこまでの思い入れは無いのだ。
「そっかー。良い出来だと思ったんどなー」
「いや、出来自体は悪くないぞ。あの屋敷の話だろ?」
「そうそう、あの幽霊屋敷。凄いAIを搭載したNPCを置いているだけど……だーれも近付かないよね?」
フシギのアシストもあってか、ユカイは饒舌に話し始めた。
実際、今話した話は全て設定として組み込まれている。
既に存在しているものを、より一層際立たせるための売り文句だった。
「そろそろ誰か友達になってくれないと可哀そうだな」
「そうだね。……あの子には悪いことしちゃったから」
「それは生みの親である私達の責任。だから、なんとかする」
アイ達は責任感に駆られていた。
屋敷に一人取り残された少女。
それを生み出したのは、運営であるアイ達自身だからだ。
けれどあの屋敷を買ってくれる人が現れるのだろうか。
いくら売り文句を上げようが、屋敷をギルドホームにしてくれるとは思えない。
そんな現実味を感じ取ると、アイ達は頭を悩ませながら、屋敷の今後の行く末を考え尽くす始末となり、手が回らないのだった。
「とりあえずできることをしてみよう」
「それがいいな」
「そうしようそうしよう! よーし、それじゃあ新しく台本を書き直して」
「「それはいい」」
「あ、あはははは……」
ユカイはナミダとフシギに止められてしまった。
アイは可哀そうなユカイを流し目すると、頬をポリポリと掻く。
それから放り投げられた台本を片手に収めると、ひたすら書き直すマシンとなるのだった。
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