第144話 ゴールドラッシュ・イベント結果発表1
果たして、二回目があるのか。
「ん?」
童輪はスマホがバイブレーションしていたことに気が付いた。
如何やら祭理からメッセージが来たらしい。
「なにかあったのかな?」
童輪は気になってスマホを開いた。
SNSアプリROAD開き、新着メッセージを確認する。
祭:ちわーっす
祭:お疲れ、童輪
祭:今ちょっと大丈夫?
「急用かな?」
如何やらこの調子は急用らしい。
なにか惨事でもあったのかと思い、童輪もすぐさま返信する。
童:どうしたの?
童:課題が終わっていないとか?
童:残念だけど、講義が違うから力にはなれないよ
祭:そうじゃないよ!!
祭:まあ課題は手伝って欲しいけどさ
祭:イベントの結果発表、マジでヤバいよ!
童輪はそれを受けて、目を見開いた。
祭理に言われるまで気が付かなかったが、如何やら結果発表が出たらしい。
これだけ頑張ったのだから、結果を出したい。
そう思ったのも束の間、祭理の反応を見るに、童輪は嫌な予感がした。
「まさか……」
童:ダメだった?
童:祭理?
童:結果はどうだったの?
童:自分で見るべきかな?
童:そっか。分かったよ
童輪は反応が無い祭理の気持ちを汲んだ。
一体どんな幕引きになったのか。
この反応を見るに芳しく無いのは明らかで、極力良い結果を求めたかった。
「確か公式のホームページに行けば分かるはず。これかな?」
童輪はスマホのタブを改めて開き、PCOの公式ホームページを開いた。
上から滝のように情報が流れ込んでくる。
ここに表示されたコンテンツの中、真っ先に童輪はゴールドラッシュ・イベントの結果発表を探した。
「おお、これだね」
開くとすぐさま飛び込んできた。
そこには〔第一回ゴールドラッシュ・イベント結果発表〕を表示されている。
タップして開いてみると、今回の結果が表示される。
童輪はそれを見た瞬間、「うわぁ」と嗚咽を漏らした。
「全然知らない人が一位なんだね。しかも私達は誰一人として入っていない……まあ、それはそうかな」
童輪は呆れるくらい素直だった。
この結果を受け入れるしかない。それは事実であり、童輪は悔しさも噛み締める。
「とは言え霧ガクレさんだっけ? どんな人かな」
童輪は圧倒的なポイント差を付けて堂々の一位を手にした相手が気になった。
恐らくは強豪プレイヤー。
金を単純に集めるのではなく、奪うことに特化したプレイスタイル。
そうでなければ、ここまでのポイント差が生まれるはずが無かった。
「二位の鬼修羅さんも聞いたことが無いな。まだまだ強いプレイヤーは多いんだね」
童輪はプレイヤーとの交流がほとんど無い。
それはもちろん全く無いわけではない。
けれど〈《アルカナ》〉の面々は、あまり他プレイヤーとの交流が薄めで、致し方が無かった。
そのせいもあってか、情報の層が薄い。
強豪プレイヤーの存在も童輪に至ってはほとんど知らない。
だからだろうか。新鮮味があり、逆に高揚感を抱いていた。
「とは言え、238には悪いことしたな。せっかくポイントを奪えたのに」
正直残念な気持ちも抱えていた。
童輪達は吸収してきた238を倒した。
けれど、その時点で一位を倒したのにこの醜態。
悔しいの一言に付きはしないが、童輪達のミスでもあった。
「まあ仕方ないよね。今回のイベントはソロが前提だったからね」
童輪はここに来て、改めて自分達の失態を恥じた。
今回のイベントはソロが圧倒的に有利。
もちろんパーティーでもギルドでも勝ちの目はある。
だがしかし、童輪達はそれを怠っていた。
「まさかポイントの譲渡が最後間に合わなかったなんて……はぁ、私のミスだな」
童輪は悔いてしまった。
頭を押さえ、あの日の後悔が蘇る。
それは何を隠そう砂の手を倒して愉悦と高揚感に浸っていた時で、気が付けばイベントは終わっていた。
意気揚々とフォンスまで戻る道中。
砂の手を倒した追加ポイントに期待していた時。
荷車に揺られ、背中を預けていた時に思い出したのだ。
誰もポイントを譲渡せず、それぞれがポイントを持っていたことに。
「あれさえなければポイントが……いや、後悔しても遅い。とりあえず私達の結果は七位か。上位は上位なんだけどね」
一番ポイントを稼いでいたのはもちろん童輪だった。
それでも上位には届かなかった上に、全員分を足しても一位には遠く及ばない。
童輪は終わったことは忘れることにし、とりあえず無事にイベントを楽しめたことに安堵するのだった。
「明日ログインした時に、打ち上げでもしようかな」
童輪はギルマスとしてできることを決めた。
まずは落ち込んでいる祭理を励ますこと……は必要ないだろう。
スマホを片手のベッドに横になると、仰向けのまま目をソッと閉じる。
「今日は疲れたから休もう」
そう唱えると、童輪は静かに眠りへと着く。
まるで自分に言い聞かせるようで、童輪は現実逃避を止めた。
できることをした。できることさえすればいい。その想いを胸に、明日を迎えるのだった。
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