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第139話 巻き上げられた砂

スーパーゴリ押しタイム!

 グリムには答えが見えていた。

 目の前で悠然とした姿を見せる砂の手。

 HPが微かに削られたせいか、少しだけ焦っているように見え、砂がボロボロと汗のように崩れ落ちている。


「グリムー、一体なにが見えたの?」

「答えだけじゃ分からないよね。でも、すぐに見えるはずだよ」

「すぐにって、いつー? 地球が何時何分何秒何回回った時?」

「子供かな?」


 フェスタがあまりにも子供だってせいか、グリムは眉根を寄せてしまう。

 するとDもクスクスと笑ってしまう。

 フェスタだけがプクーッと頬を膨らませると、グリムは機嫌を取るように「まあまあ」と合いの手を入れた。


「それじゃあ試してみようか。フェスタ、一緒に巻き上げるよ」

「巻き上げるって?」

「この場合は捲り上げるとでも言っていいかもね。砂を包み込んで、回転を利用して散らす。簡単でしょ?」


 グリムの提案はあまりにもシンプルだった。

 誰もが小さい頃、砂まで一度はやったことがある筈。

 両手で掬い上げた砂をホイッと捨てる。

 すると砂が宙を舞い、何処かへと散らされ消えて行く。

 その正体の一つも掴めないまま、指の間からすり抜けてしまうみたいにだ。


「そんなことしても、さっきと同じでしょー?」

「そうですよ、グリムさん。それでも砂の手は倒せなかったですよね?」

「それはそうだね。でも私が攻撃した時は、ダメージがあった。その違いは?」

「それは……」


 Dにも分からなかった。

 グリムが一体何を考えているのか。

 この場に居る全員の思考使っても、グリムの思考の先を読むのは難しい。

 だからだろうか。余計な思考をするのを辞め、信じることにだけ全力を尽くした。


「もういいやー。とりあえず、やってみよっかー」

「そうですね、グリムさん、フェスタさん。私もできる限りの協力をします。戦えませんけど……」

「ありがとう二人共。私とフェスタは攻め。Dは頃合いを見て、魔法で援護して」

「こ、頃合いですか?」

「そのタイミングは私達で作るから。それじゃあ削ろうか」

「OK」


 グリムとフェスタは話し合いを軽く終えると、早速攻撃を仕掛けに行った。

 大鎌と大剣を振りかざすと、砂の手目掛けて振り下ろす。

 しかし砂にはいくら攻撃を仕掛けてもダメージは無い。

 そんなことは百も承知で、グリムは背後を覗き見るように、大鎌を引っ繰り返す。


「やっぱり来た!」

「嘘でしょ? 反撃して来るってことー」


 グリムの予想は当たっていた。

 砂の手は拳を作り、グリムとフェスタを殴りに掛かる。


 この質量に押し潰されれば強制ログアウトは必至。

 とは言え少しでも乱せば攻撃の波を搔き乱せる。


「そこっ!」


 グリムは自分の体を軸にして回転した。

 大鎌を振り回し、丸い円を描いてみせる。

 砂の手の内、指の関節部分が掠められ、砂が宙を舞ってしまった。


「うわぁ、全然痛くない! 流石はグリムだねー」

「いや、痛くないこともないけど……」

「えっ? あっ、痛い! 痛い痛い痛い痛い、チクチクして痛いよー」


 砂粒がグリムとフェスタのことを襲った。

 HPをチクチク奪い取って行くと、攻撃をする間が無くなる。

 体が痙攣し、攻撃を神経から強制キャンセルすると、グリムとフェスタを驚かせた。


「まさかこんな変幻自在な攻撃ができるなんて……」

「流石は砂だねー。うわぁ、怖いなー」

「とか言いつつ楽しんでるけど?」

「うん、とっても楽しい。だって砂が宙を舞って、私達を波で包み込むんだよー? それってさー、むしろ好都合って奴じゃないかなー?」


 フェスタは個の状況を楽しんでいる。

 むしろニヤケ顔で嗜んでいる。

 大剣を肩に掛け一気に振り下ろし、ドスン! と重たい音を立て、砂の手を巻き上げる。


「せーのっ!」

「流石のパワーだね。だけどこれなら充分だよ」


 砂の手の形が散り散りになる。

 縦烈の切れ目が浮き彫りになると、奥側にいるDの姿が露見される。


「で、ここからどうするのかなー?」

「そうだね。……見えないかな」


 グリムは砂の中に視線を右往左往させる。

 見えない。全く浮かばない。

 正体は分かっているはずなのに、その答えを見いだせない。


「仕方ない。ここはもう一回……うわぁ!」

「グリム!? ちょっと、待ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 ジッとしていたことが災いした。

 グリムとフェスタは砂の波に押し負ける。

 体を飲み込まれると、形状を変えて砂の手が抗ってみせ、グリムとフェスタを壁際まで寄せてしまう。


「あっ! グリムさん、フェスタさん!」


 Dだけは反対側に居たので助かった。

 けれどグリムとフェスタが流される姿を見届けるしかできない。

 急いで手を伸ばして届くはずもなく、目に涙を浮かべ、グリムとフェスタが消えるのを追うだけしかできなかった。


「ど、どうしよう……こんな時、わ、私がなんとかしないと……落ち着け。落ち着け私……私は、一人じゃないんです!」


 Dは慌ててしまう。

 心拍数がバクバクと上がっていき、冷静な思考を妨げる。

 これが頃合い。Dの脳裏にグリムの言葉が強く過ると、やるべきことを成せと心が騒ぐのだった。

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