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第137話 砂の手は動かない

砂のモンスターだから、やっぱり復活するのですよ。

 グリムの号令で、フェスタもDも呼応する。

 それぞれが武器を取り、目の前の砂の手を迎え撃つ。

 ボロボロと砂を零しながらも、一つの生き物として蠢くと、攻撃をしてくる余地はない。


「でもさー、グリム」

「分かってるよ、言いたいことは」

「で、でしたらどうするんですか?」

「そうだね。どうしようか?」


 グリム達は困っていた。

 そのせいで動けないのだ。

 何を隠そう、グリム達に勝機は無い。

 HPバーが存在しているだけで、まともにダメージを与えられる余地が無かった。


「どうやって攻撃しよう?」

「「だよね(ですよね)」」


 グリムも困り顔を浮かべるが、フェスタとDは余計に困る。

 この中でまともに知恵が巡るのはグリムのみ。

 そんなグリムが話にならないとなれば事態は一転。

 圧倒的なピンチを迎えると、一つだけおかしなことに気が付く。


「でもさ、おかしいよね?」

「おかしいってなにが?」

「砂の手、動いて来ないよ」


 グリム達が対峙するモンスター、砂の手は攻撃をしてくる動作が無い。

 ここまで棒立ちなグリム達だ。

 いくらでも攻撃を加える隙はある筈。


 にもかかわらず、砂の手は堂々としている。

 体の形を維持できないとか、そんな容易い話ではなく、一切動かないのだ。


 もしかすると、砂の手には考えがあるのかもしれない。

 こちらが動いた瞬間、攻撃を仕掛けて来るやもしれない。

 無暗には動けない中、フェスタはジッとして居られなくなる。


「グリム、先手必勝だよー!」

「あっ、待ってフェスタ!」

「問答無用。そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 フェスタは〈戦車の大剣槍〉を振りかざすと、大剣モードで攻撃する。

 砂の手目掛けて振り下ろすと、サッと砂の手を素通り。

 軽く空を掻き切ると、「あれ?」と首を捻った。


「おっとっと。あれれ? 攻撃が……」

「フェスタ、後ろ!」

「後ろ? うわぁっと!」


 フェスタは攻撃が空振りに終わり、砂の手の前に成す術が無かった。

 一瞬考える状態に入り、しゃがみ込んだまま頭を使う。

 けれど理解をする前に、グリムは叫んだ。

 振り返りざま、フェスタのことを襲ったのは、ここまで微動だにしていなかった砂の手の拳だった。


「くっ、チリチリして痛い……」


 フェスタは大剣状態のまま、しっかり受け止めようとする。

 しかし大剣で弾いた砂の拳が、チリチリと音を奏でて、頬を切り裂く。

 HPが少しずつ削り取られると、知らぬ間にHPが五分の一も奪われてしまった。


「D、少し私も前に出るから。それっ!」


 グリムはフェスタを助けるべく、大鎌を振り上げる。

 ソッと砂の中に鎌の刃を通すと、そのまま攻撃が空ぶる。

 ダメージを与えた感触は一切無い。

 如何やら本当にダメージを与えられないらしい。


「ダメだよ、グリムー。こいつ、全然倒せる気がしないよー」

「そうだね。それじゃあこれはどうかな?」


 グリムは体を捻り、〈死神の大鎌〉を振り上げた。

 下から上へと上昇気流を生み出すと、砂の手の拳が巻き上げられる。

 風の網に捕らわれると、そのままバラついて崩れる。


「やっぱりね。いくらダメージは与えられないとはいえ、正体は砂。攻撃は通らなくても、散らすことはできる訳だ」


 グリムが感心していると、フェスタは砂の手から攻撃が外れる。

 魔の手を追われ、ようやく一安心かと思えば、砂の手はすぐさま復活する。

 散らされていた砂はそのまま床に零れ落ちると、壁の隙間に挟まっていた真新しい砂を自分の体の一部へと変えた。


「ま、また復活しちゃいましたよ!」

「そうだね。だけど攻略法が無い訳じゃないと分かっただけ、前進じゃないかな?」

「呑気だねー」

「そ、そんなことないですよ。流石はグリムさんです。何処までだって付いて行きます!」「あはは、それはいいかな」


 グリム達は軽口を叩き合い、雑談に華を咲かす。

 かと思えばそんな暇は何処にもない。

 砂の手はみるみるうちに大きくなると、再び関門として立ちはだかる。


「だけど攻撃はして来ないんだねー」

「おそらくは攻撃しない理由がある筈だよ」

「理由?」

「そんなのがあるんですか!?」

「まあ、答えは分からないけどね。だからもう少しだけ、情報を仕入れてみようか」


 何故かは分からないが、砂の手は攻撃をして来ない。

 その状況にある種の違和感を覚えざるを得なくなると、グリム達は再び武器を構える。

 この一時でさえ、ピリ付いた空気が張り詰める中、砂の手は堂々としておきながらも、悠々と宙に浮き、砂を零し続ける始末だ。


「それでグリム、どうやって仕入れるの?」

「そうだね。本当はこんな手段を使うのは嫌なんだけど……」

「大丈夫です。グリムさんのためなら頑張れます!」

「ありがとう、D。それじゃあ二人共、あれをやろう!」

「「あれ?」」


 グリムは大鎌を使って合図を取るが、フェスタにもDにも通じない。

 ポカンとした顔をすると、グリムはニヤけた笑みを浮かべる。


「決まってるよ。変化が出るまで総攻撃。それが一番手っ取り早い」

「「まさかの攻撃命令なの!?」」


 グリムにしては大雑把。けれど今はそれが一番の作戦。

 フェスタとDは分かっていながらも、それしかないことに驚きを隠せない。

 だがしかし、決して嫌がりはしない。

 むしろシンプルで分かりやすいとなれば話は別で、グリムの指示にちゃんと従うのだった。

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