第136話 砂の手
いや、“手のモンスター”って怖いじゃないですか?
学校の○談然りで。
グリムとフェスタは一緒に歩き出した。
とりあえずゴライム遺跡の中でキョロキョロ視線を泳がす。
しかし遺跡の隅々まで見回っても、面白い仕草は何処にもなかった。
「正直、ここまで上々かな」
「上々? なーんの成果も無いよ?」
「そうとは限らない。こうしている間にも、何処かで連鎖的に運命が必然に変わっているかもしれないね」
「……難しいよー」
フェスタには分からないらしい。
考える行為を即座に止めると、頭の上で腕を組み直す。
「そう言えば、Dはどの辺りを探しているのかな?」
「うーん、途中ではぐれちゃったからなー」
「そうなんだ。モンスターと交戦していなければいいけど」
「あれれ? プレイヤーはー」
「Dが負ける訳ないでしょ? なんたって、〈運命の腕輪〉はモード:防御が最強だから」
Dが負けるとは一切思えない。
だからだろうか、特に気負いしておらず、ましてやDを心配する必要は無いと感じる。
「問題はここからだね」
「ここからって?」
「気が付かないのかな。後ろ、付いて来てる」
「ええっ!?」
グリムがそう答えると、反射的にフェスタは振り返ろうとする。
けれど視線の端には何の姿もない。
フェスタは首を傾げるも、目の前の曲がり角を曲がろうとすると、Dが姿を現した。
「あっ、グリムさん、フェスタさん。ここにいたんです……う、後ろ!?」
「だろうね」
Dはグリムとフェスタの姿を見かけて安心する。
ホッと胸を撫で下ろすも、それすら奪う視線を感じた。
グリムとフェスタの真後ろ。そこに浮かぶのは、巨大な砂の手で、振り返ったグリムは予期していた。
「砂の手か……追って来ていたのは、細かくなった砂だったわけだ」
「感心している場合じゃないよー」
「そうですよ、グリムさん。ど、どうするんですか!? それよりも、なんでこんなに冷静に常軌を逸した光景が……」
確かに常軌は逸していた。
砂の手が目の前に広がり、グリムとフェスタを捕まえようとする。
ザラ付いた砂。ボロボロと空に消え、狭い部屋の中で粉塵を巻き上げる。
「グリムさん、どうするんですか!?」
「どうするもなにも、無益なことはしないよ」
「無益って?」
「無益は無益。ここは……逃げるよ!」
「「えっ!?」」
グリムの言葉にフェスタとDは驚く。
意表を突かれたようで驚くも、素早く踵を返したグリムの姿を見て、砂の手から距離を取ることにした。
「に、逃げてどうするんですか!」
「正直、相手は砂だ。普通にやっても勝てはしないよ」
「とは言ってもさー」
フェスタがボヤくのも無理はなかった。
ゴライム遺跡の中を走って逃げるも、背後には砂の手が蠢いている。
今にも近付いて来そうで、指先が掠めようとした。
「くっ、それっ!」
グリムは大鎌を使って、砂を払い落とそうとする。
しかし案の状のことが起きた。
大鎌の刃はスルリと砂の手の中を通り過ぎ、一瞬だけ形を崩すも、それ以上できなかった。
「やっぱりか……」
「こうなることも読んでたってこと?」
「読んでたってこと。それとこれではっきりしたよ」
グリムは砂の手を目の前にして、改めて気が付いた。
砂の手。その頭上を睨むと、HPバーが表示されている。
如何やら名前は表示されていないが、砂の手はモンスターで、如何やらこれこそが砂の魔人=砂の魔人の手であると推測した。
「砂の魔人は砂の手だったってことね」
「そ、それが分かってどうするんですか?」
「そうなんだよね。情報が開示された。その正体が判明した。結果的には、真相に辿り着けた訳じゃない。本当の問題はここから」
一番ヤバいのはこのモンスターが砂であること。
つまりはどんな攻撃も砂に絡められる。
攻撃を幾度となく叩き付けようが結果は変らない。
全ての攻撃は無に帰して、体力だけが奪われ続け、空回りの連続になるのだ。
「とは言え、ここまで来て倒さないのは無いかな」
「た、倒せるんですか!?」
「倒せるじゃないよ。倒すんだ。それじゃあ、やってみようか」
グリムは〈死神の大鎌〉を構え直す。
戦うしか道は無い。それなら戦って未来を勝ち取るだけ。
その威勢を振りまくと、フェスタとDも感化するのだった。
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