表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/253

第135話 黄金のメダルは砂に埋もれて

メダル、取れるかな?

「あれは……」

「ねっ、埋まってるよねー?」

「埋まってる……メダルが」


 グリムがフェスタに言われてやって来ると、その指先を見つめる。

 砂の中、そこに落ちていたのは一枚のメダル。

 特殊なコーティングが施されたわけでもない、単に黄金のメダル。

 丁寧な彫はされているものの、たった一枚が取り残される形で砂に埋もれており、上部の湾曲した一部が露出している形だった。如何にも怪しく、近付き難い。


「フェスタ、あのメダルが欲しいの?」

「欲しいって、私、そんなに子供じゃないよー?」

「子供じゃない……確かにそうだろうけど、あのメダルが気になるのは変らないと」

「う、うん」


 フェスタはコクリと首を縦に振った。

 如何やら砂に埋もれたメダルが気になってしまい、集中力が削がれてしまう。

 けれども、明らかに罠の臭いがする。

 グリムも警戒しつつ、腕を組んだまま黙り込んだ。


「正直近付きたくはないかな」

「だよねー。でさ!」

「その目、なにか企んでいるね」

「もっちろん!」


 フェスタは一切隠す気が無かった。

 呆れるほど素直で、グリムは眉根を額に寄せる。

 するとフェスタがニヤリと笑みを浮かべると、グリムにジェスチャーをする。


「そのジェスチャー、もしかしなくても死神?」

「正解! うわぁ、グリム怖い怖い。それに表情が痛いよ!」

「目で睨んでいるだけだよ?」

「目で睨むなら睨んでいるだけでしょ! そうじゃなくてさー」


 グリムはフェスタに煽られたので、少し脅して見せた。

 すると如何にもこうにも効き過ぎてしまったらしい。

 強張った表情で仰け反ると、今にも倒れてしまいそうになりながら、フェスタは必至に謝って、本当の意味を伝える。


「私がして欲しいのは、〈死神の大鎌〉だよー」

「〈死神の大鎌〉? まさか、リーチの長さと湾曲した刃を使って取り出せと?」

「そこまで分かっているならやってよー」


 完全に(くわ)と同じ扱いをされてしまった。

 怪訝な表情を浮かべてしまい、グリムは呆れてしまう。

 ものも言えない。そう思ったのも束の間、フェスタはグリムの腕を引く。


「お願いだよー」

「ああ、もう。分かったから、とりあえず引き寄せてみるから」


 こうなったフェスタは止まらない。

 腕を力強く引かれ、今にも脱臼しそうになる。

 流石に溜まったものじゃない。そう思って武器を取り出すと、大鎌をできる限り伸ばして、砂に埋もれたメダルを探る。


「見えている辺りからしてこの角度……」

「行け行け、グリムー!」

「ちょっと黙ってて。後はこうして……それっ!」


 グリムは下手くそな気持ちのこもっていない応援をされて怒る。

 フェスタを黙らせると、真剣な様子でメダルを睨む。

 彎曲した鎌の刃を当て、そのまま一気に砂ごと引き寄せた。


「とりあえず引き寄せてみたけど」

「メダルだね」

「メダルだ。しかも特に動くわけでも、硬い訳でも、そんなことも無いと……」


 メダルを叩いてみるも、特に変なことは無かった。

 グリムは爪をあてがって、軽く引っ掻いてみるものの、メダルに結果は出ない。

 生物と言うわけでもなく、ましてや何かのスイッチでもない。

 となればただ落ちていただけの金色のメダル。その認識が強いものの、やけに違和感を感じる。


「フェスタ、なにか気になる点は無い?」

「気になる点?」

「例えば動いているとか、色が違うとか、欠けた面が……あっ!」


 じっくり観察をしていたグリムは金色のメダルに違和感を感じる。

 むしろこれは目に見えた違和感で、金色のメダルの下部に視線が奪われる。

 如何にもこうにも、このメダルは……


「グリムー、なにかあったの?」

「あったもなにも、ここが欠けてる」

「欠けてる? 何処が?」

「この辺が。ほんの少しだけ黒ずんでいるよ。変だね、金なのに錆びるなんて」


 グリムの違和感はそれだけには止まらない。

 とは言え、一番の違和感は金なのに錆びる点。

 一応もう一つ挙げるのなら、ポイントして加算されないことだった。


「このメダルは使えないね。元に戻しておこう」

「ええっ!? な、なんで!」

「なんでもじゃないよ。このメダルを動かすのは凶だ」

「その心は?」

「私の直感」

「あっ! じゃあ返しておこうよ。うん、そうしよそうしよ」


 フェスタは急に目の色を変える。

グリムは手にしていた金色のメダルを砂の上に戻す。

すると砂が集まって行き、メダルを飲み込んでしまった。

如何やら斜面になっているようで、メダルが重みで吸われてしまった。


「とりあえず成果は(ゼロ)。とは言わないかな」

「そう?」

「そうだよ。ここに来た瞬間から、私達は成果を得ている。そう思えるのが、行動による対価だよ」


 グリムはそう語った。

 しかしフェスタにはなかなか伝わらない。

 首を捻ったまま呆れてしまうと、頭の上で腕を組む。


「さてと、それじゃあDと合流しようか」

「そうだねー。それじゃあ……」


 一歩目を出そうとした。

 その瞬間、ゾクリとした違和感がグリムとフェスタを襲う。

 この感触は何か。鈍い泥のような……否、砂のようなザラついた感触はと脳裏を過った。


「グリム」

「分かってるよ。でもなにも起きていない。それだけは確かだよ」

「そ、そうだけどさー。はぁー、気のせいかな?」

「どうかな。とりあえずまずはDとの合流を優先しようか」


 グリムとフェスタはそう言うと、メダルから離れるように立ち去る。

 この場所に居ても結果は変らない。

 今のところ得られる結果はその程度で、だけど同時に大きな違和感と期待が渦巻いているのだった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)


ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。


また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ