第134話 ゴライム遺跡
誰も来ないけど、スポットになった遺跡。
そんな場所は、現実にあるんですかね?
「あいよ、ここがゴライム遺跡だ」
「ありがとうございます」
グリム達はゴライム遺跡へやって来た。
如何やら想像していた以上の場所のようで、馬車から降りた瞬間、グリム達は表情を歪める。
それは完全に砂に侵食されていた。
否、砂に攫われてしまっていた。
と言うのも、広がる景色は小さな砂状の粒が舞い踊り、指先に触れてみると、如何やら塵のようだ。
「これは……塵?」
指先で摘まんでみると、砂と言うよりも塵だった。
何かの成分だろうか? 瓦礫が崩れたようで、少し痛い。
表情を歪め、グリムは顔色を変えると、フェスタとDは周囲を見回す。
「うわぁー、ぜーんぶ砂だー」
「フェスタさん、砂は怖いんですよ。口の中に入らないように気を付けてくださいね」
「分かってるよー。って、グリムー? そこでなにしてるのー?」
グリムは様々な思考を同時に巡らせていた。
しかしフェスタに呼び戻され、考えることを止める。
とにかく言っても仕方ない。今はゴライム遺跡に賭ける。
「なんでもないよ。それよりゴライム遺跡は……」
「えーっと、あれじゃないですか?」
「「あれ?」」
Dはキョロキョロ視線を配ると、見えた建物に指を指す。
それは巨大な建造物で、かなり古い代物。
砂岩のような塊で、所々に装飾が施されていた。
「あれがゴライム遺跡」
「た、多分ですけど……」
「多分ね。とにかく行ってみよう。そうすればなにか分かるから」
グリムはDの手を引いた。
ギュッと掴むと全身に熱を帯びる。
Dは緊張でもした様子で瞬きをすると、グリムの歩幅に合わせて少しだけ足早に歩き出す。
「あー、待ってよー」
その後ろをフェスタが続いた。
頭の上で手を組むと、スタスタと楽しそうに地面を蹴り上げる。
粒状の塵が舞い上がり、本物の砂の嵐を思わせて舞うのだった。
「うわぁ、近くで見ると壮大だね」
「す、凄いです……」
「本当に大きい。でも、なーんにも無いね」
「当り前だよ。だけどこれだけ遺っているのが凄いんだ」
ゴライム遺跡。グリム達も軽く調べてみたが、如何やら古い神殿らしい。
神殿と言っても、造りに応じた物ではない。
あくまでも何かの式典のために何世紀も前に造られた。あくまでもその域を出る代物ではなく、何を祀っていたのかも、どんな儀式や式典を経験したのかも分からない。
あまりにも情報が少なく、今分かるのはモンスターの出現率は極めて低く、非常に安全な代わりに面白みのないスポットだった。
「とりあえず一時間は時間を貰ったから、その間にポータルだけは踏んでおこう」
「と、登録をするんですよね!」
「うん。もしかするとなにかのために再び訪れるかもしれないからね。その間に、砂の魔人を探す。その方針でいいよね?」
「「はい!」」
「いい返事だよ。それじゃあ行こうか」
グリム達は各々が手分けをして砂の魔人を探すことになった。
とは言え、そう簡単に見つかるとは思えない。
何かに擬態しているのかも。そう思ってくまなく探して見回るが、グリムは石像や砂像が無いか見て回る。
「とりあえずスフィンクス的なものは無いと」
スフィンクスはピラミッドを守る守護獣だ。
その役割を果たす番人が居ないか見て見るが、残念なことに一番好感触を味わえそうなものは無い。
「となると次に見つけるのは……」
ゴライム遺跡は大きな建造物だ。
とは言え所々は崩れそうになっている危険な建造物でもある。
柱の裏に回り、周囲に意識を配るグリムは、モンスターらしき影は無いことに気が付く。
「この辺りにはモンスターが出現しないように細工されている? それともここはあくまでも観光地な側面でしかない? だけど砂の魔人の噂は一体何処から……」
考えれば考える程分からなくなってきた。
グリムは腕を組むと「うーん」と唸り声を上げる。
それだけしかできないので、グリムは首を横に振った。
「いや、仕方ない。ここが完全にイベントの場所と外れている可能性もあるよね」
自分の意見が必ずしも正しいとは限らない。
それこそ、このゴライム遺跡は完全なブラフ。
好条件に当てはまっているだけで、実際にはまるで意味を成していないのかもしれない。
そんな気がしてならず、グッと奥歯を噛むと、「はぁー」と溜息を漏らす。
「とは言えもう一度見て回ろう。きっとなにか……」
「グリムー。ちょっと来て欲しいんだけどいいかな?」
「ん?」
そこに居たのはフェスタだった。なにやらモジモジしている。
ゲーム内でトイレ? かと思ったのだが、そんな雑念はさっさと捨て去り、フェスタが何か引っかかったのだろ察する。
「もしかしてなにか見つけたの?」
「見つけたって言うのかな? ちょーっと気になって」
「気になった? どんなものが」
「それは見た方が早いんだけど、こっちこっち」
フェスタは手招きをするとグリムを見つけた物まで誘う。
下手な罠でなければいいがと内心では思いつつ、グリムも考えていられないのでフェスタを追い掛けた。
「フェスタ、一体なにを見つけたの?」
「うーんと、小さい……」
「小さい? 小さい像的な?」
「いや、像じゃなくて……あれなんだけど」
フェスタは立ち止まって指を指す。
グリムは後ろから指の先を見つめると、そこは地面。塵積もった砂岩の上に何か落ちている。その形は確かに小さい。だけどかなり古ぼけている。丸い硬貨……もしかすると歴史物かも知れないと思ったが、砂の魔人には一見して関係なさそうで、グリムは見るや否や首を捻ってしまうのだった。
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