第133話 ゴライム遺跡は砂の星
最近疲れが取れません。
あれからどれくらい経ったのだろう。
馬車の中に押し込まれ、グリム達は淡々と時間を潰した。
そうして車輪が回転する音が変化し始めた頃、グリム達はようやく異変に気が付く。
「ねぇみんな。そろそろゴライム遺跡に着くよ」
「そうなのー?」
「うん。車輪の音が変わったからね」
グリムの耳はとても良かった。
そのおかげか、車輪の回転音がザラついていた。
ジャリジャリと混じり気のある音。恐らくは砂だ。
「グリムさん凄いです! この音の正体を見破ったんですね」
「まだ見破ったとは言えないよ。フェスタ、窓を開けてみて」
「ほい来たー」
フェスタは荷車の窓を開ける。
すると外の景色が変わっていることに気が付いた。
つい一時間前。そこはまだ緑だった。けれど今は異なっていて、遠くの果てまで砂地一色だ。
「……砂漠?」
「砂漠じゃないよ。せめて砂丘」
「砂丘? うーん、どっちでもいいけど……」
グリムとフェスタの実の無い会話。
本当は実を付けようとすることはできた。
けれど特に話を広げる要素は無く、グリムは少しだけ声を荒げた。
「運転手さん、この辺りって?」
「ん? あー、この辺は通過点ですよ。この近くに古い遺跡跡があって、ここを横切るのも風情ってもんなんです」
「風情……ね」
グリム達はその風情を全力で味わうために来た。
となればここからやることは決まっている。
「すみません、その遺跡って寄って貰えますか?」
「えっ、寄るんですか?」
「はい。できれば降ろして貰いたいんですけど……ダメですか?」
グリムは代表して訊ねると、運転手の男性は少し困ったように喉を窄める。
流石にこんなバカな話は通らないか。
グリムも分かってはいたものの、もう少し順序だてれば良かったと後悔する。
けれど運転手の男性は、そんなグリムの予想を超える。
「ええ、いいですよ。なんなら観光で、少し待ちますか?」
「えっ、いいんですか!」
「はい。特に急いではいないので」
朝早くに出たから、何か意図があるものと思っていた。
しかし実際はゆっくりで、時間の効率がかなりスロー。
恐らく、のんびり街を目指しているのだろう。
グリム達は互いに顔を見合わせると、アイコンタクトで委ね合う。
「それじゃあお願いします」
結果は相も変わらない。ほぼグリムに全権が委ねられていた。
その答えは堂々としており、何故か聞いた運転手も喜ぶ。
「本当ですか! あー、いいですね。あの場所は」
「そうなんですか?」
「はい。実はゴライム遺跡には謎があり、稀に砂の魔人が出迎えるとされているんですよ」
「「えっ、砂の魔人!?」」
ここに来てこの情報は大きい。
まさかイベント限定のものかと思いきや、微かに噂が撒かれていた。
如何やら気が付けなかったのは、プレイヤーの怠慢だったらしく、反省の色を覚える。
とは言え、問題はそこじゃない。
リュウマの予想。その大部分が当たっていたのは確実で、ゴライム遺跡の存在感がより一層際立つ。
きっと砂の魔人はゴライム遺跡に居る。
それはここよりも広がる砂の星に違いない。
そんな妄想が絶えず溢れるると、フェスタはニヤケてしまう。
「いいじゃんいいじゃんかー。楽しくなって来たねー!」
「は、はい! で、でも少し……」
「怖いの、D?」
「ううっ、砂の魔人。私達に倒せるんでしょうか?」
Dの言い分ももっともだった。
正直、砂の魔人がゴーレム系だとして、倒せる保証は何処にもない。
とは言え、それはこのゲームの性質に著しく噛み合っていない。
「D、どんな相手でも倒せるよ。それがこのゲームだ」
「グリムさん……」
「それにさー、ちゃーんと準備もしてきたよねー?」
「フェスタさん……そうですよね。準備は頑張りました!」
一日でできる用意は全部した。
ピジョンの営むデンショバトである程度のアイテムは買い込んだ。
インベントリも即時取り出せる鞄の中も申し分なし。負ける気何て更々ない。
「それじゃあ、えっと、皆さん!」
「頑張ろうか」
「おー!」
グリム達はそれぞれの威勢を奮い立たせる。
馬車の中、荷車の向こうに広がる景色は絶えず変わらない。
砂が遠くまで支配しているが、風化したと思しき遺跡へと向かう最中、グリム達の向上心は更に高まるのだった。
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