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第122話 その攻撃は通用しない

 グリムの体を弓矢が貫通した。

 外套に命中し、HPが削れた……訳じゃない。


「ぐはっ! ……なんてね」

「グリムー。もう少しまともな演技しようよ」

「えっ? それじゃ、うがっ!?」


 弓矢が命中し、グリムは苦しんだ。

 けれどHPが減ることはなく、一切のダメージを受けることがない。

 つまりダメージは無い。だから苦しくも何ともなかった。


 グリムは軽く演技をしてみせたのだ。

 けれどフェスタにはバレバレで、ジト目になって非難する。

 頬を掻いたグリムは指摘されたからもう一度演技をしてみるも、やっぱりフェスタの表情は渋くて厳しい。


「なんか嘘っぽーい」

「そうだね。わざと嘘っぽくしたから」


 フェスタは正直にグリムの演技を見破る。

 あまりにも嘘っぽく、ほとんど棒読みだった。

 けれどそれはグリムの作戦。鼻っから嘘っぽくやった。


「だ、大丈夫ですか! グリムさん、今、矢が……」

「大丈夫だよ。私の呪いの装備はダメージに関してはほぼ無敵の性能だからね」


 Dは本気で心配していた。グリムの側に寄り掛かると、目を左右にウヨウヨさせる。

 グリムは心配かけないように頭に手を置くと、優しく撫でて説明した。

 グリムの呪いの装備、〈死神〉シリーズはダメージの関しては無敵に近い性能がある。


「本当ですか?」

「本当だよ。それより、今の攻撃は明らかに敵意があったよね? だけど私が動いているのを確認して、追撃を止めた節がある。と言うことは私達の会話を盗み聞きするために、すぐ近くにいると思うんだ」


 グリムは周囲を警戒した。

 森の中に隠れている敵プレイヤーの姿は見えない。

 けれど確実にいるのは分かっていて、グリムは説明しながらチラチラ視線を配った。


「つ、つまり、また襲って来るってことですか!」

「そうだね。まず間違いなく、撒いた餌をそのままにはしないだろうね」

「うっわぁー。んじゃさ、その人達倒すってこと?」

「そういうことになるかな。でも、問題は遠距離攻撃ができる相手」


 敵プレイヤーがこのまま放任してくれるとは思えない。

 撒いた餌を回収する筈だと踏み、グリムは警戒を疎かにしない。

 一番に倒すべき相手を見定めると、二人とアイコンタクトで意思疎通を図る。


「それじゃあまずは弓兵かな? を倒さないとねー」

「うん。D、敵の数は分かる?」

「えっと、正確な数までは。で、ですが三つくらいは殺気を感じます」


 グリムはDに敵の数を探って貰う。

 けれど【気配察知】の性能だと、ある程度しか分からないらしい。

 Dは目を伏せてしまうが、グリムにとってはそれで十分。

 三つと言うことは、最低三人だ。


「なるほどね。それじゃあフェスタ、敵の攻撃に備えて置いて。Dもいつでも防御できるように準備。遠距離の敵は私が狙う」


 そう言うと、グリムはいつでも〈死神の大鎌〉を振り抜ける用意をする。

 けれど敵には気が付かれないよう、細心の注意を払い続けた。

 気配を殺し、無防備な体勢を作った瞬間、今一度空気を切り裂く。


「さぁ、やろうか」


 グリムは振り向きざまに、射られた弓矢を弾いた。

 カキーン! と弓矢を切り裂くと、ポッキリ折れて地面に落ちる。


「ナイス、グリムー」

「ありがとう。それと敵の位置は見えたよ」


 グリムは的確に弓矢が射られた位置を見定める。

 視線を研ぎ澄ませ、一点に意識を絞ると、森の中に向かって素早く駆け出す。

 あまりにも一瞬の出来事。ここまで一秒も掛かっていない。圧倒的に速い反応速度で駆け寄ると、木々の合間に隠れた弓兵を探した。


「多分この辺りに……来た!」


 グリムは敵を威圧する意味でも自分から突っ込んだ。

 すると敵も焦りが見えたのか、グリムの背後の木の裏から弓矢を射る。

 一瞬だけ(やじり)の輝きが視界に入ると、グリムは背面に腕を回して大鎌で弾いた。


 カキーン!


「うっそ!? マジで言ってんの?」


 そこに居たのはそばかすを塗した小麦色の顔の女性。

 大きな目を見開き、人間離れした動きを容易くするグリムにドン引き。

 けれどグリムは容赦をする気はない。ギラリと睨む瞳で見つめると、大鎌を振り上げる。


「見つけた。まずは一人……はっ!」

「キャッ!」


 女性は怖くなってしまい小さく叫んだ。

 けれどグリムは一切の容赦をしない。

 弓を打ち直される前に武器を払い落とし、そのまま体を軸から回転させた。


「せーのっ!」

「ま、待ってって。流石に早いって!」


 女性の首を狙って大鎌を振り抜いた。

 けれど女性は命乞いをすると、しゃがみ込んで攻撃を躱す。

 良い動き。だけどその余裕をわざと与えたのはグリムだった。


 きっとこれくらいはしてくれる。ましてやこの方向に前転する。

 そうなれば視線の先に落ちた弓を手に取るはず。

 短い弓=短弓は速射性が高い。素早く手にすれば、グリムの背後も取れる。

 そう考えるのもおかしくは無く、現に短弓を手にした女性は的を絞ってグリムを射ろうとした。けれどそれすらグリムは予想していた。


「あっ、もう! とっととくたばれ!」

「悪いけど、くたばる気は無いんだ。それに、その攻撃はもう通用しないよ」


 女性が弓矢を射ると、グリムは大鎌で叩き潰した。

 射られた瞬間、最も早いタイミングで弓矢は速度を失う。

 グリムには当然当たらないし、掠りもせず、ましてや〈死神〉シリーズの特徴も活かさなかった。


「う、うっそ……ま、マジで? はっ、マジなわけ!? 私、【速射】のスキル持ってるのに!」

「そんなスキルまであるんだ。でも、個人差はあると思うよ?」

「あー、もう! 負けたからなにも言えないわよ。とっとと、やれって!」

「そうだね。ごめん、でも楽しかったよ」


 グリムはにこやかに笑みを浮かべた。それから女性を見送るように首をコトンとさせる。

 目の前から女性の姿が消えた。おまけにポイントまで獲得できた。

 如何やらかなりのポイントを稼いでいたようで、大体三万ポイントは手には入った。


「こんなにポイントを……てこと、相当な人間がこの道を通って……甘い話は無いんだね」


 グリムは身をもって体験した。

 とは言えまだ戦いは終わっていない。

 大鎌を肩に掛け直すと、急いでフェスタとDの下に戻る。

 まだ敵は残っている。ここからも油断は大敵だ。

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