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第118話 急流の釣り人達

 イベントも五日目。既に折り返しを過ぎていて、スパートを掛け始めていた。

 グリム達も四日目の時点で二十万ポイント以上は余裕で稼げている。

 上位入賞は確実。と思って油断してはいけない。

 四日目のように襲撃が来るかもしれないので、気を引き締めて最終日まで望むことにした。


「でさー、グリム。今日は釣りに行くんだよね?」

「そうだよ。フェスタが行きたいって言ったからね」

「待ってました!」


 フェスタは大いに喜んでいた。

 それもそのはず、五日目は釣りに行くことになっていた。


 フェスタからのたっての希望。特に予定も入れていないので、無事予定通りだ。

 けれど決して釣りがしたいから来たわけでもない。

 グリム達はポイント稼ぎも兼ねて、こうしてやって来ていた。


 そう、今回やって来たのはフォンスから南に少し。

 そこには急流と呼べる川が存在していて、確か名前はゼーレン川。

 如何してゼーレンなのかは誰も知らないけれど、何やらここでゴールド系の魚が釣れるとの噂があった。


「グリムさん、どんな魚が釣れるんでしょうか?」

「そうだね。淡水魚かな」


 グリムはDの質問に冗談半分で返した。

 するとDはまじまじと受け取ってしまい、「淡水魚ですね!」とはしゃぎ出す。

 流石にこれは良くない。コホンと咳払い一つで持ち直し、Dに改めて答えた。


「川魚の場合、大抵は淡水魚だよ。だけど今回の場合は、やっぱりゴールド系を狙いたいかな」

「ゴールド系……どんな魚なんでしょうか?」

「うーん、そこまでは分からないかな。あくまでも噂の域を出ない眉唾な情報。フェスタ、何処から拾って来たの?」

「ネットの広大な海の中だよ?」

「やっぱり……」


 今回の情報をもって来たのはフェスタだった。やっぱりと言うべきか、頭の中で難航する。

 ネットの中限りなく広い。一度泳ぎ出した魚は、一度消息を掴めなくなるとそれだけで見つけることは二度とできないのも同然。

 そんな眉唾情報の真偽を自分達の目で確かめに行く。

 なんとも冒険。これはこれで楽しいのだが、信じ切りすぎるのも災難だった。


「グリムさん……」

「分かっているよ。正直情報筋としてはよくあることだけど、まだ決めつけるのは良くないよ。全ては自分の目で見て耳で聞いて初めて本物になるんだから」


 グリムがそう答えると、フェスタが「おー」と茶化した。

 変に名言っぽく煽らないで欲しい。

 グリムは眉を指で摘まむと、「まあいっか」と流してしまった。


「でさ、グリムー」

「なに、フェスタ?」

「言いたいことは分かってるよねー? 周り」


 フェスタがグルリと周囲を見回す。

 そこには大きな川がある。晴天の陽気に照らされ、キラキラと乱反射する水面。

 小さな影を泳がせる魚の群れ。目の前には人工的な塊。ルアーが大量に浮かび、群れを成して巨大な影で覆われていた。


「言わなくても分かるよ。でもフェスタの口から……」

「人が多すぎて、こんなの見つからないし、釣れないよー」


 フェスタは子供のように嘆いた。それもそのはず、周りを見回せば人の群れ。

 ゼーレン川を取り囲むように、グリム達の歩む岸もその反対側にも人。

 人、人、人、人、人、人、人……とにかく人が多い。みんな目的は一緒で、格好も体勢も似たり寄ったりだった。


「確かにこれだとバレバレだね。魚より人を釣りに来ているみたいだ」

「ううっ、それじゃあ釣れないんですか?」

「そうだね。私達が入るスペースは残ってないね」


 ゼーレン川を取り囲み、釣り人が群れを成していた。

 多分全員が知り合いと言うわけではない。


 本格的な釣り装備の人、カジュアルな釣り人、釣り方がよく分かっていない初心者。本当に多種多様でこれだけでも人間味が味わえる。

 けれどグリム達には関係の無い話で、逆に困ってしまった。

 これだとグリム達が連れる確率は一方的に下がってしまう。

 せっかく来たのに何の成果も得られない=坊主になってしまう未来が薄っすら見えた。


「どうしてこんなに釣り人が?」

「考えようだけど、フェスタと同じで噂を頼りに来たプレイヤーが大半じゃないかな?」

「噂を頼りにですか? でもそれは……」

「そうだね。噂はあくまでも噂だよ。でもね、人間は深層心理、他人の意見にも左右されやすい生き物でもあるんだよ」


 人間、と言うよりも日本人は噂が隙だと思う。

 ジャーナリストやマスコミが書いた記事を鵜呑みにしたり、そこから発展して、乗ったり反ったりする。それを面白がるのか、つまらなく思うのか、それは本人次第。

 けれど一度伝播した情報と言うものは、人間の心を錯綜させる餌でもある。

 グリムはそう考えた上で自分の言葉として発した。


「噂に踊らされたってことですか?」

「そうとも言える。だけど人間信じたいものを信じるからね」

「そうですよね! 私もグリムさん達を信じてます!」


 Dは目をキラキラ輝かせる。

 嬉しい悲鳴。グリムはにこやかなに微笑み返すと、Dは胸を打たれた。

 ラブコメ風な展開の中、フェスタは空気を破った。


「でもさー、これじゃあ釣れないよー?」

「そうだね。それなら、もう少し上流に行ってみる? 上流は危ないだろうから、人も少ないかもしれないよ」


 今グリム達が居るのはあくまでも下流。

 上流は流れが急で足場も悪い場合が多い。

 それなら行ってみる価値はある。フェスタの目がギラリ光る。


「行く行く、行くに決まってるよー」

「そっか。それじゃあ行ってみようか。Dもいい?」

「もちろんです! 私も付いて行きます」


 全員の意見をまとめ上げた。

 下流は諦め、ここからは上流を目指す。

 狙いのあった魚が居るかは分からないけど、とにかく釣りをしに向かった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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