第114話 鎖鎌の使い手、来る3
ついに、10万PVありがとう!
「それじゃあ、死んでよ!」
少年は鎖鎌を押し込んだ。
フェスタの心臓部を抉り出し、即死判定をものにしようとする。
けれどフェスタもそれを許しはしない。大剣で押し返そうとするが、風の膜が阻んで無理だった。
「流石に無理かな……あはは」
フェスタも諦めてしまっていた。
笑いながらやられ待ちをしていると、急に空気を切り裂く音が聞こえた。
光の反射で金色に輝き、回転しながら丸いリング=チャクラムが飛んで来た。
ガーン!
「痛ったぁ!?」
圧倒的な命中精度で、少年の手首に直撃した。
するとあまりの痛みからHPは微かに削れ、フェスタに突き付けていた小鎌を落とした。
それと同時に鎖も緩むと、グリムは鎖分銅から逃れた大鎌を引っ提げ、少年の背中を狙って振り下ろす。
流石にそれは無理だった。振り下ろした瞬間、引き戻した鎖分銅がグリムを背後から急襲し襲い掛かる。
躱すことに意識を狩り取られたため、HPを削らずに済んだものの、フェスタを回収するだけに留まった。
「フェスタ、一旦離れるよ」
「えっ!? う、うん」
フェスタは何が起きたのか分かっていなかった。
けれどグリムは先程飛んで来たチャクラムと、視線の先で立ち止まる少女を紐付ける。
そこに居たのは紛れもなくDで、戦輪を投げ終えて無防備になっていた。
「大丈夫ですか、グリムさん、フェスタさん!」
「D、ありがとう。おかげで助かったよ」
「ありがとー。いやー、間一髪だったねー」
フェスタは呑気に取り合っていた。
けれどそんなことを言っている暇は無い。
丁度Dと合流したタイミング、投げ付けていた戦輪も返って来たらしい。
左腕に納まると、「ご苦労様です」とDは〈運命の腕輪〉を撫でていた。
「感心している場合じゃないよ。それよりD、今上って来た所だよね?」
「は、はい」
「タイミングバッチリ。助けて貰ってありがたいけど、今から戦闘。参加できる?」
「戦闘ですか? ……は、はい。とは言っても、まだインターバルがあるので、モード・防御は使えませんけど、大丈夫ですか? 足手纏いじゃないですか?」
Dは不安そうだった。
それもそのはずいくら強力なバフ効果を持っていても、その反面デバフ効果も強力。
特にDの場合は、性能が圧倒的に高い。
その分だけデバフも重く、動けない、インターバルが長いなど、まさに呪いのアイテム。
だからDにやって貰うのは戦うことじゃない。
疲労している上に相手は相性の悪い鎖鎌だ。
無駄に戦って貰うことはしないとグリムは決め、ここは敢えてあの作戦を決行する。
「ねえ貴方、私と一対一をするのはどうかな?」
「「えっ、」」
グリムは珍しい言葉を呟いた。
フェスタもDも驚く。それもそのはず、Dは自分から前に躍り出ようとはしない。
遊撃手として、的確に攻防を兼ね備える。
その役目を放棄することは即ち、グリムが本気になることだった。
「お姉さんと一対一? いいよ。それでお姉さんが勝ったら、見逃せってことだよね」
「それも一つだよ。もちろん勝つのは私だけどね」
「おお、言ってくれるね。それじゃあ簡単には死なないよね?」
「そのつもりだよ。それじゃあ三メートル近付いたら始めようか」
「いいね、それ。でもお姉さん、本当に死なないよね? つまんないよ、簡単に殺されちゃったら」
グリムは死なないと高を括っていた。つまりは負けないと言うことだ。
初めから負ける気なんて一切ない。そんなものは必要ない。
グリムは勝気があるからこそ、自分から不利な状況に足を踏み出していた。
ニヤリと笑みを浮かべる。
口角を上げるさまが、妙に気持ち悪い。
少年もゾクリと背筋が冷やされ、冷めた汗が流れる。
「それじゃあ行って来るよ」
「ちょっと待ったぁー!」
フェスタがグリムの襟を掴んだ。
急に足止めされたので振り返ると、「バカなこと言ってる?」とフェスタは顔で圧を掛ける。
「グリム、本気で勝てると思って言ってるの?」
「もちろんだよ。負ける気はしない。だって相手は中身のある人間だからね」
「うーん、そんなメタいことを言ってもさ、相手は強いよ? 多分、普段から狂気に囚われているんだよ? 危ないってー」
「そうだね。危険だね。私もそんな危険には首を突っ込みたくはない」
「だったらさー!」
「でもね……」
グリムは口を一瞬噤んだ。
確かに止められる理由は分かる。
ぶっちゃけて言えば、グリム達はPvPの経験は乏しい。むしろほぼ無い。皆無のレベルだ。
けれど戦う理由があった。グリムは清々しい表情を浮かべる。
「これは私だけの勝利じゃない。私はみんなの勝利を勝ち取って来るんだから、危険にだって突っ込むよ」
グリムはそう答える。
これは自分一人のためではないと強く証明する。
その言葉の想いは絶大で、フェスタは言っても無駄だと悟った。
「もう、言っても無駄だよね?」
「約束は取り付けたからね。それじゃあ勝って来るね」
「気を付けてくださいね、グリムさん!」
「任せて。私は深追いはしないから」
グリムはそう言うと、少年の下に足を運んだ。
小高い草原を上がって行く。
その肩には〈死神の大鎌〉と強い想いが乗っかっていた。
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