第112話 鎖鎌の使い手、来る1
グリムとフェスタは殺気を感じて振り返る。
しかし、気が付いた時にはもう遅い。
振り返った目の前は、少しだけ空間が歪んで見えた。
否、空間が歪んだのではなく、半球状に広がり、まるで細い刃のようになっていた。
「グリムー!」
「フェスタ!」
正直避けるのは間に合わない。二人はそう悟ると、各々武器を取り出す。
フェスタがゴーン! と大剣を地面に突き立てる。
グリムも大鎌を振り上げ、衝撃波に叩き付けた。
ギュィィィィィィィィィィィィィィィン!!
大剣と大鎌にとてつもない衝撃が乗る。
グリムとフェスタは予想以上の衝撃と痛みに唇を噛む。
一体何が起きたのか。何が起きているのか。
目を見開き、充血するんじゃないかという勢いで、頭に血液が駆け上がった。
「くっ、お、重い……」
「そうだね。でも!」
グリムは防御を全てフェスタに委ねた。
大剣の幅広を活かし、衝撃派を抑え込む。
表面が削れて行き、フェスタの体が後ろに押し戻される。
踏ん張っている足に負荷が掛かった。
地面の上にジリジリと掘った跡を残して後方に下がって行く。
このままじゃ、フェスタの方が持たないとグリムは悟る。
「グリム、どうする気なのー?」
「どうもこうもないよ。抑え込めないのなら、叩きこうしてしまえばいいんだよ」
グリムは大鎌を振り上げる。何をするのか。フェスタは疑問に思う。
けれどグリムはフェスタの疑問を正面から叩き壊すみたいに、大鎌を振り下ろした。
ドン! と衝撃波を上部から押しつけ、湾曲した大鎌の刃が削り取る。
まるで死神の所業で、衝撃波は威力を殺されてしまった。
ギュン!
衝撃波は一つの塊になると、上下に展開できず左右に広がる。
そのまま空気の逃げ口を探し回って、やがて衝撃波は破裂してしまった。
小さいがちょっとしたものなら破壊できてしまうのではないだろうか。
そんな破裂音も残していくと、まるで何事も無かったかのように衝撃波は跡形も無く消えてしまう。
「うわぁ、ビックリしたー。今のなんだったのかなー?」
「さぁね。少なくとも殺気を感じたから、意図して私達を狙ったんだろうね」
「狙った? なんのためにさー」
「分からない……は嘘になるね。多分、ポイントを奪いに来たんじゃないかな?」
今回のイベントではPvPが了承されている。
そのためポイント合戦は完全に奪い合いになることを見越している。
プレイヤー同士で争うことで、より一層白熱したイベント内容へと変貌。
戦闘系のプレイヤーの本領が発揮されようとしている。
「でもどうしてこのタイミング?」
「フェスタ、それは違うよ。どうしてこのタイミングじゃなくて、今だからこのタイミングなんだよ」
「ん?」
フェスタに説明をしようとしたグリム。
けれどフェスタは分かっていない様子だ。
このタイミングで急襲される理由。それは中間発表された直後だからに他ない。
「気を付けてフェスタ。まだ敵は近くにいるかもしれないよ」
「えー。流石に初激を躱されたからもう逃げてるんじゃー」
「そんなに甘いとは思えない。何故ならポイントが奪えていないのなら、私達を倒し切れていないことと同義で……」
グリムはそこまで口走ったタイミングで、背後に殺気を感じた。
いや、これは殺気ではない。地面に映った影に反応し、大鎌を振り抜く。
カキーン!
グリムの〈死神の大鎌〉が硬い金属にぶつかる。
視線を預ければ、大鎌が捉えていたのは小鎌。
それでも密度と質量があるのか、鎌の湾曲していない刃同士が激しくぶつかり合い、熱を帯びて火花を散らす。これだけの正確無比な真似、その辺の罐使いではできやしない。
「「ふん!」」
このまま押し切ることはできない。そう思った両者は素早く弾き終え、十メートル程離れた。
距離を取り冷静に相手のことを分析する。そう思ってグリムは視線を上げた。
そこには灰色の髪で片目を覆い、ニヤリと笑みを浮かべる少年の姿がある。
手には小鎌。柄の後ろには長く伸びた鎖が付けられ、先端には分銅、いわゆる鎖分銅が伸びていた。
「鎖鎌?」
「へぇー。僕の攻撃を防ぎ切るんだね、しかも反応も速い。うん、お姉さん達なかなかやるね」
少年はほくそ笑んでいた。まるでこの戦闘を心の底から楽しんでいるようだ。
あまりにも異質で気持ちが悪い。そう思わせるのは、先程まで見え隠れしていた殺気を一瞬で押し殺し、距離を取ってグリム達のことを妙に讃えたからだった。
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