第110話 爆風を乗りこなせ!
少し長めです。
現実的にできたら凄いけど、めちゃくちゃ危険なことをします。
グリム達は危険な賭けに出ることにした。
多分失敗すれば木っ端微塵。相当なダメージと共に、四肢が爆散してHPが底をつく。
早急に強制ログアウトは免れないだろうと思いつつ、とりあえず試すことにした。
「時間も無いから急ごう」
グリムの掛け声でそれぞれスキルを使う。
グリムの【観察眼】とDの【気配察知】。これだけでボンバー岩を見つけることはできる。
さっきまでは全くと言っていい程、まるで分からなかった。
けれど今では微かな変化で気付ける。
その証拠にボンバー岩にはちゃんと顔がある。ニヒルな笑みを時折浮かべ、何が楽しいのかも分からないが、とにかく笑っていた。
「グリムさん、あそこに三つ繋がってますよ!」
「そうだね。だけど距離がある」
グリム達はボンバー岩を見つけてもそう簡単に出だしができなかった。
それもそのはず崖までの距離感。近くないと狙った通りの爆風を得られない。
そうなるとただ危険に突っ込んだだけの馬鹿でしかないのだ。
「そんなバカになる気はないよ。だからもう少し距離を……あの辺りが妥協かな」
グリムは連鎖できそうな位置にボンバー岩を見つけた。数は四つある。
けれど問題は崖までの距離だ。近い様に見えて高低差がある。
上手く飛び移れるだろうか分からない。これなら崖をよじ登った方が結果的に早いのではと思うが、そんな時間も暇もなく、とにかく早急だった。
「グリムー。飛べるかなー?」
「飛ぶしかないよ。それよりフェスタが問題だよ」
グリムはフェスタを煽るように眼を飛ばした。
痛々しい程で、流石にフェスタも緊張する。
それもそのはず、今回のボンバー岩爆風ジャンプ大作戦は、フェスタに掛かっていた。
フェスタの武器、〈戦車の大剣槍〉これが無いと始まらないのだ。
「点火は私がやるから、タイミングよくその幅広の剣で弾いてね」
「スケボー的な感じでしょ? 大丈夫だってー!」
「私も大丈夫だとは思うよ。でも万が一があるから、用心はしておいてね」
「大丈夫大丈夫。なにかあっても、私が運ぶからさー。私達は、個じゃなくてチームで、いやギルドで一つでしょー?」
なんだかそれっぽくてカッコいいことを口走った。
グリムは口角を少し吊り上げ笑むが、それでも用心は怠らない。
とにかく慎重。だけど時に大胆。そんな境が生まれると、行動に移ることにした。
「それじゃ行くよ」
「いよいよですね。成功するでしょうか?」
「成功するじゃなくて、させるんだよー! それじゃあグリム、すぐに飛んでねー」
「分かってる。それじゃあ行くよ!」
グリムは〈死神の大鎌〉を振り抜いた。
近くに転がるボンバー岩に叩き付けてみる。
するとボンバー岩の表情がニヒルに笑うと、次第に震え出し、爆発する数秒前に待機された。
「点火は完了。よし、せーのっ!」
「グリム、掴まってー」
「ありがと。それっ!」
グリムはフェスタの手を掴んだ。
すると体を引き寄せられ、グリムはフェスタに抱きつく。
真下には大剣が敷かれていて、三人分の体重が掛かる中、ボンバー岩は爆発した。
バコン! バーン、バーン、バーーーーーンバーーーーーン、バーン!
ドーンドーン! ドンドンドーーーーーン!!
けたたましい爆発音が響き渡った。
耳の奥を劈くと、耳を塞ぎたくなる。
けれどそんな暇は無い。何故ならボンバー岩が連鎖して爆発し、爆風を生み出し、足下の大剣が軋み出す。
ガタガタガタガタ!
大剣がボンバー岩の爆風に煽られる。
すると少しだけと浮き上がり、渓谷に吹く上昇気流に巻き上げられる。
「これって浮くの?」
「どうだろうー。浮いて欲しいけど、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
正直浮くかは分からない。いや、この程度の風圧なら無理だ。
けれどそれは一瞬の誤りだった。
おかしなことが起こり、突飛に大剣が浮き上がった。
しかも数ミリではなく、数センチ、数メートル、体重さなんて無視して、巻き上がった砂埃と一緒に大剣が宙を舞う。
「うわぁ、本当に浮いてる!? しかもかなりの風圧が発生しているね」
「あはは、あはは、あはははは! 凄い凄い、こんなに飛べるんだー!」
「こ、怖いです。ううっ、下が完全に……」
「惨状だね」
眼下を見つめると、とんでもない爆発が起こっていた。
如何やら複数のボンバー岩が爆発し、連鎖してとんでもない爆風を巻き起こしたのだ。
考えてみれば当たり前だ。ゲームとは言え一応物理は関係する。
四つ分のボンバー岩で飛べた訳ではない。
たくさんのボンバー岩が連鎖して、大剣の重さを加味した上で、グリム達を宙に舞わせたのだ。
「凄いな。それにしても本当に浮けるなんて思わなかったよ」
「いやいや、浮けるじゃなくて、飛んでるじゃない?」
「そうだね。でも安心するのはまだ早いよ。まずは崖の上まで着地……はできそうかな?」
正直崖の上には辿り付けそうだった。
それもそのはず、想像以上に爆風が飛ぶ。
そのおかげか、不安定になるまで浮き上がった。
足元の大剣がユラユラ揺れる。
正直これ以上は難しく、早めに着地する必要が出た。
だけどここに来て想像に無い問題が浮上。まさかの高く飛び過ぎてしまった。
「マズいねフェスタ。高すぎる、これはダメージ覚悟かな?」
「だねー。でもさ、これ死ぬくない?」
「死ぬだろうね。少なくとも、変なとこ折ったら即死かな」
「そ、そんな! こ、怖いです」
Dは震え出してしまった。
それもそのはず、崖の下が三メートル。
ダメージは必至で、首を負ったら即死判定は免れない。
生憎危険な状態で、賭けに踏み出すのは厳しい。けれどそんなことを言う暇は無く、大剣が重力に飲まれ、落下するしかなかった。
「飛ぶしかないね。D、私に掴まって」
「と、飛び降りるってことですか!?」
「それしかないよね。フェスタ、飛ぶよ!」
「うーん、その心配は要らないかな。それじゃあ行ってみよう!」
「はっ?」
グリムはDを抱えると、大剣から飛び降りようとした。
けれどそれをする前に、フェスタは大剣の柄を握った。
何をしようと言うのか。まさか馬鹿みたいな突飛なことをする気か。
瞬きをして反発するが、フェスタは気にせず大剣を倒し、そのままグリム達を吹き飛ばす。
「それじゃあ、せーのっ!」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
グリムとDはフェスタに吹き飛ばされる。
このままだと受け身なんて当然取れない。
それに加えてDは目を瞑ったまま恐怖でグリムに抱きついている。
下手な受け身は取れない。
そう思ったグリムはDのことをしっかりと左腕で抱きかかえると、右腕で〈死神の大鎌〉を取り出し振り上げる。
「衝撃を殺せるかな?」
完全な賭けだった。グリムは大鎌を振り上げると、地面に落下する前に振り下ろす。
そうすればほんの少しは衝撃を殺せるはず。そんなゲームチックな発想に囚われると、グリムは試してみるしかない。
物理が働いているのならできないことはない。
だったらやってみるしかないので、大鎌を振り下ろした。
「そらぁ!」
グリムは大鎌を振り下ろした。
とんでもない衝撃波が生まれた。
体が浮くことはない。けれど衝撃を殺すことは叶ったようで、最悪死ぬことはなかった。
HPはほとんど削られたが、それでも無事に生き残れた。
「ふぅ。助かった」
「た、助かったんですか?」
「一応ね。それにしてもフェスタはやってくれるな」
グリムはフェスタのことを睨んだ。
大剣の自由を手に入れたことで、いつの間にか着地していた。
ほぼ完璧な受け身を取ったらしく、グリムよりも軽傷で済んでいる。
流石に腹が立ったのだが、グリムは寛容で忘れることにした。
「ごめんねグリムー、Dー。あのままじゃ私もヤバかったからさー」
「それは分かるよ。でもね、少しは考えて欲しかったな」
「ごめんごめーん。でも結果オーライってことで、OK?」
「OKじゃないけどね」
グリムは口に出して怒りはしなかった。
けれど目で威圧を掛けると、フェスタはビビって汗を流す。
滲んだ汗で体が冷え込むと、それを見ていたDもゴクリと喉を鳴らしてそのまま黙るしかなかった。怒ったグリムは普段優しい分怖いと印象が付くのだった。
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。
下の方に☆☆☆☆☆があるので、気軽に☆マークをくれると嬉しいです。(面白かったら5つ、面白くなかったら1つと気軽で大丈夫です。☆が多ければ多いほど、個人的には創作意欲が燃えます!)
ブックマークやいいねに感想など、気軽にしていただけると励みになります。
また次のお話も、読んでいただけると嬉しいです。