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第108話 金背鰭リザード

 ワニの頭とトカゲの体を持った不思議なモンスター。

 グリム達の前に現れたのはそんなモンスターで、圧倒的な威圧感を感じた。

 

 体長はおよそ三メートル弱。

 大きめのモンスターとは言えず、中くらいのモンスターだった。

 けれど一メートル弱がワニの頭になっている。


 体が地面を擦りそうなくらい低い。

 四肢は短いわけではないのだが、横に伸びているおかげか、ドッシリとしていた。

 これだけで威圧感を放つのだが、その眼光の鋭さも相まっていた。


 グリム達は鋭い眼光に委縮しそうになる。

 けれどそれは普通のプレイヤーに限られた。

 震えるDを庇うようにグリムとフェスタが前に出ると、武器を構えてモンスターを威圧しに掛かる。


「グリムー。来たよ、モンスター」

「変な形をしているね。でも、それだけだよ」

「二人共頼もしいです。私も頑張らないと!」


 グリムとフェスタは淡々と会話をした。

 Dはその様子を見ていると、自分も頑張らないとダメだと思い、頬を両手でぺチンと叩いた。

 頬が赤くなる。それを見たグリムは「無理しなくてもいいよ」といつも通りそっとケアをする。


「それじゃあやりますかー。あっちも……ん?」

「どうしたのフェスタ」

「グリム、あのモンスターの背中を見てよ。ちょっと光ってない?」

「光ってる? ……確かに少し光っているね。背中の鰭かな?」


 グリムはフェスタに言われて【観察眼】を発動した。

 するとワニの頭とトカゲの体を持つモンスター=リゲードの背中に背びれがあった。

 骨が通っているのかボコっと盛り上がっていて、その周りに柔らかい皮が纏わり付いている。


 けれどこれはリゲードにとっては普通。特にこの個体、セビレリゲードとして当然だった。

 でも目の前のリゲードは何処か違う。背鰭の色が違うのだ。

 薄っすらとした金色に染まっている不思議なモンスター。

 これこそが見分けは付き難いが、セビレリザードのゴールド種。

 突然変異で生まれたゴールドセビレリゲード。=金背鰭リゲードだった。


「もしかしたらゴールド系かもね。丁度良いよ」

「だねー。んじゃ早速先制攻撃だぁ!」


 フェスタは背中に大剣を背負った。

 それと同時に足早に駆けだすと、スキル【納剣】&【抜剣】を交互に発動。

 動かないで警戒している金背鰭リゲードに叩き付けようとする。


 けれどその瞬間、地雷を踏んでしまったのか、金背鰭リゲードは動き出す。

 強靭な上顎をゆっくり持ち上げると、鋭い牙を剥き出しにし、閉じると同時に振り下ろされた大剣を受け止めて見せた。


「えっ、嘘でしょー!? って、なぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 背鰭リゲードは大剣を加えたままゆっくりと半回転した。

 するとフェスタの体がまるでおもちゃみたいに大剣事吹き飛ばされる。


 幸い叩き付けられたのがボンバー岩ではなく、普通に壁だった。

 背中を強く打ってそのまま崩れてしまうが、ピクピクと指先が動いている。

 HPは相当削られたが、上手く即死は回避してくれたらしい。


「フェスタ!?」

「グルムさん凄いパワーですよ! こんなの喰らったらひとたまりも……こっち来ますよ!」


 Dは口を閉じた。金背鰭リゲードは体を左右に揺らしながら、蛇行して襲ってきた。

 上顎を開いたり閉じたりしながら近付いて来る。

 きっと噛み付かれたら一撃でHPは半分を失うだろう。

 そんなものを喰らう気は更々ないので、グリムはDに声を掛ける。


「D、〈運命の腕輪〉を防御で使って」

「防御ですか? は、はい! モード:防御!」


 Dは〈運命の腕輪〉を使った。

 防御用のバリアが周囲に展開すると、グリムとDは金背鰭リゲードの攻撃を未然に防ぐ。


「ンガァッ!?」

「驚いているところ悪いけど、本当に驚くのはこれからだよ」


 金背鰭リゲードはDが展開した防御用のバリアの外で何度も何度も体当たりをする、

 しかし一向に破壊できないので、困惑している様子だ。

 これで反撃が付いていれば最強だったかもしれないが、そんな甘い話はない。

 

「グリムさん、どうするんですか?」

「どうするもなにも、こうするんだよ」


 グリムは大鎌を金背鰭リゲードの口が開いた瞬間に叩き付けた。

 彎曲した刃の鋭い部分が食い込むと痛みの余り目から涙を浮かべる。

 絶対に痛いはずで、グリムもDも苦い表情を浮かべる。


「い、痛そうですね」

「そうだね。でもこれで終わらない……よぉ?」


 グリムがバリアの外に出て攻撃を加えると、金背鰭リゲードは大鎌を吐き出した。

 突然のことで足を躓いて転びそうになるがなんとか踏ん張る。

 けれどその瞬間、金背鰭リゲードは逃げ出してしまい、フェスタの方に向かって行く。


「嘘だよね。私の方じゃなくて、フェスタに行くんだ」

「大丈夫でしょうか、フェスタさん?」

「うん、心配は要らないと思うよ。ほら、見てて」


 グリムはDを安心させるように指を指した。

 その先には、体勢を立て直しつつも背中を痛がる素振りを見せるフェスタ。

 大剣を杖のように使いつつ、迫って来た金背鰭リゲードを見かけると、「ばっち来い!」と言うばかりに大剣を構えてみせる。


「とんで火にいる夏の……せーのっ、ぬなっ!?」

「「えっ……」」


 フェスタは大剣を振り下ろすも外してしまった。

 グリムとDも唖然とした。

 それもそのはず、金背鰭リゲードはフェスタの股を丁寧に潜ると、後の壁にしがみついた。


「あ、あれれー? なーんで、私を攻撃しなかったのかなー?」


 フェスタは首を捻る。

 気が付けば大剣を振り回すことのできない高さまで金背鰭リゲードは登っていた。

 流石に追うのは厳しい。ましてや追いながらの攻撃はできなかった。


 茫然と眺めることしかできない中、グリムとDも話していた。

 突然壁に張り付いた金背鰭リゲードの行動は明らかに逃げ腰だったのだ。


「どうして壁に張り付いているんでしょうか?」

「そうだね。多分逃げるんじゃないかな?」

「逃げるんですか!? もしかしてビビりなモンスター? 同情します」

「あはは、それは言わないでよ。でもちょっと困ったな」


 グリムは困り顔を浮かべる。HPを半分削った状態、しかも倒せそうな機会を逃すのは勿体ない。

 その気持ちがグリムよりもフェスタの方が圧倒的に強く力拳を握る。


 けれど首ったけで逃げる金背鰭リゲードを見守ることしかできない。

 そんな唇を噛む悔しい状況に、救いを求める目をした。


「グリム~」

「そうだよね。ここまでやったのに惜しいよね」

「うーん。どうするのー?」

「どうするもなにも、そうだね。それじゃあ追いかけてみようか」


 グリムは少し考えてみた結果、自分の思ったことを素直に伝えた。

 とりあえず追いかけてみる。それで何か見えるはずだ。

 グリムがそう決めたのだが、Dは少し驚いた。


「追うんですか!?」

「あくまで私の意見だよ。二人がどうしたいのかによるけど」


 グリムは二人に委ねてみることにした。

 するとフェスタは想定通り即答。Dもグリムに同意する。


「もっちろーん、行くに決まっているでしょー?」

「わ、私もグリムさんが行くなら行きます!」

「そっか。それじゃあまずは目の前の問題をなんとかしないとね」

「「問題?」」


 二人はまだ見えていなかったが、グリムはある問題に躓いていた。

 目の前の壁。それは崖になっていた。

 引っ掛かりは多いから登れなくは無いのだが、周りは危険物に囲まれていて危ないので無暗な行動ができなかった。

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