表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラザに生まれて  作者: Aju
9/16

9 星空の下

 日が暮れました。


 シャーラはとうとう立ち止まってしまいました。

 もう、足が痛くて、胸が苦しくて、歩けません。


「ちょっと、休もうか・・・。」

とお母さんが言いました。


 シャーラたちは、半分壊れた家の壁の隅っこに体を寄せ合って座りました。

 毛布もみんななくなってしまったので、5人で体を寄せ合っているしかないのです。


 マハド兄ちゃんはまだ泣いていました。


「ぼく・・・ぼくが・・・」


 お母さんがマハド兄ちゃんをぎゅっと抱き寄せました。

「あんたは、なんにも悪くない。あんたは悪くない! 悪いのは、あの兵隊たちだ!」

 マハド兄ちゃんの泣き声が、また大きくなりました。


 それを聞いていて、シャーラも涙が出てきました。

「う・・・うえ・・・・」

 シャーラは自分がいけないような気がしてきました。

 お祈りの時、ちゃんとお祈りしなかったから。

 他のこと考えたりしたから・・・。

 神様が怒っちゃった・・・・。


「わたし・・・が、ちゃんと・・・お祈り・・・しなかっ・・・」


 お母さんが、シャーラもぎゅっと抱きしめました。


「悪くない! あんたたちは、なんにも悪くなんかない! ・・・・ただ、ラザに生まれたってだけだ・・・。」


 お母さんも泣き声になっていました。


「ごめんねぇ・・・。ごめんねぇ・・・。産まなきゃよかったねぇ・・・。」


 それを聞いて、シャーラはちょっと怖くなりました。

 生まれなかったら・・・、シャーラはどうなっていたのでしょう?


「生まれなかったら、よかったのかな・・・。」

 シジ兄ちゃんが、ポツリと言いました。

「そんなことない!」

 マルラ姉ちゃんが大きな声で言います。

「わたしは、シジ! あんたがいるから幸せなんだから!」

 そう言って、マルラ姉ちゃんはシジ兄ちゃんを抱き寄せました。


 シャーラは怖い考えが出てくるのを止めようとして、空を見上げました。

 降るようなきれいな星空です。


 その星空を、またあの火がいくつも飛んでいきました。




 いつの間にか眠ってしまったのでしょうか。

 シャーラは夢を見ていました。


 その夢の中には、お父さんもおばあちゃんもみんないて、明るい陽射しの中で笑っていました。


 そこに、空から火の玉が落ちてきてシャーラの目の前で爆発し、みんな火の中に包まれてしまいました。

 お父さんもおばあちゃんもみんな燃えています。


「ぎゃああああああああああああああ!」

 誰かの叫ぶ声でシャーラは飛び起きました。

「ああああああああああああ・・・!」


 叫んでいたのはシャーラでした。

 お母さんがシャーラをぎゅうっと抱きしめてくれました。

「あ・・・あ・・・あ・・・」


「大丈夫。大丈夫。なんにもないよ、シャーラ。」

 お母さんがシャーラを抱きしめたまま、優しい声でそう言った時、後ろから知らない人の声がしました。


「あんたたち、毛布もないのかい?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 前話が衝撃すぎて……。 まさかこんな展開になるとは思いませんでした。 シャーラたちの家族は何も悪くないのに、何故こんな目に遭わなければいけないのか。 最後の言葉には希望が持てるようにも思える…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ