9 星空の下
日が暮れました。
シャーラはとうとう立ち止まってしまいました。
もう、足が痛くて、胸が苦しくて、歩けません。
「ちょっと、休もうか・・・。」
とお母さんが言いました。
シャーラたちは、半分壊れた家の壁の隅っこに体を寄せ合って座りました。
毛布もみんななくなってしまったので、5人で体を寄せ合っているしかないのです。
マハド兄ちゃんはまだ泣いていました。
「ぼく・・・ぼくが・・・」
お母さんがマハド兄ちゃんをぎゅっと抱き寄せました。
「あんたは、なんにも悪くない。あんたは悪くない! 悪いのは、あの兵隊たちだ!」
マハド兄ちゃんの泣き声が、また大きくなりました。
それを聞いていて、シャーラも涙が出てきました。
「う・・・うえ・・・・」
シャーラは自分がいけないような気がしてきました。
お祈りの時、ちゃんとお祈りしなかったから。
他のこと考えたりしたから・・・。
神様が怒っちゃった・・・・。
「わたし・・・が、ちゃんと・・・お祈り・・・しなかっ・・・」
お母さんが、シャーラもぎゅっと抱きしめました。
「悪くない! あんたたちは、なんにも悪くなんかない! ・・・・ただ、ラザに生まれたってだけだ・・・。」
お母さんも泣き声になっていました。
「ごめんねぇ・・・。ごめんねぇ・・・。産まなきゃよかったねぇ・・・。」
それを聞いて、シャーラはちょっと怖くなりました。
生まれなかったら・・・、シャーラはどうなっていたのでしょう?
「生まれなかったら、よかったのかな・・・。」
シジ兄ちゃんが、ポツリと言いました。
「そんなことない!」
マルラ姉ちゃんが大きな声で言います。
「わたしは、シジ! あんたがいるから幸せなんだから!」
そう言って、マルラ姉ちゃんはシジ兄ちゃんを抱き寄せました。
シャーラは怖い考えが出てくるのを止めようとして、空を見上げました。
降るようなきれいな星空です。
その星空を、またあの火がいくつも飛んでいきました。
いつの間にか眠ってしまったのでしょうか。
シャーラは夢を見ていました。
その夢の中には、お父さんもおばあちゃんもみんないて、明るい陽射しの中で笑っていました。
そこに、空から火の玉が落ちてきてシャーラの目の前で爆発し、みんな火の中に包まれてしまいました。
お父さんもおばあちゃんもみんな燃えています。
「ぎゃああああああああああああああ!」
誰かの叫ぶ声でシャーラは飛び起きました。
「ああああああああああああ・・・!」
叫んでいたのはシャーラでした。
お母さんがシャーラをぎゅうっと抱きしめてくれました。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「大丈夫。大丈夫。なんにもないよ、シャーラ。」
お母さんがシャーラを抱きしめたまま、優しい声でそう言った時、後ろから知らない人の声がしました。
「あんたたち、毛布もないのかい?」