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ラザに生まれて  作者: Aju
8/16

8 トマト

 蛇みたいな模様のへいたいの人が、マハド兄ちゃんの木の銃をお父さんの顔の前に突き出します。


「ぼくの!」

 マハド兄ちゃんが言うと、お父さんが手を上げてマハド兄ちゃんにしゃべらないように合図しました。


「子どものおもちゃです。」

 お父さんが答えます。

「ソレハワカッテイル。コウイウモノオモチャニスルハ、フダンカラ見ナレテイルナ?」


 へいたいの人はお父さんに銃を向けました。

「違います! 私はタラントじゃない! 銃なんか持っていない。」


 しかし、へいたいの人はお父さんを乱暴に捕まえ、地面に座らせました。

「ナカマワドコニイル?」

 へいたいの人はお父さんの頭に銃を突きつけ、今にも撃ちそうな様子を見せます。


「お父さん!」

 シャーラは思わず叫んでしまいました。


 お父さんはやっぱり片手を上げて手のひらをシャーラに向け、やめるように合図を送りました。

「大丈夫だ。」

 それからまたへいたいの人に向かって声を上げます。

「仲間なんていない。家族と南に避難するだけだ。ビラの指示に従って。」


 ガン!

 とへいたいがお父さんの頭を銃の後ろで殴りました。

 そしてまた銃をお父さんの頭に当てます。


「ナカマノバショヲイエ!」

「知らない! 私はタラントじゃない!」


 バン!


 と大きな音がして、お父さんの頭の反対側に誰かがトマトをぶつけたように見えました。

 すぐにお母さんの腕がシャーラの顔を抱えて、シャーラはお母さんの腕以外何も見えなくなりました。


「いやああああああああああ!!」

 お母さんの叫び声が聞こえました。

 シャーラの心臓も、口から飛び出そうに胸の中を跳ね回っています。


 おばあちゃんが何か大声で叫ぶのが聞こえました。


 もう一度

 バン!

 という大きな音が聞こえて、おばあちゃんの声も聞こえなくなりました。





 そのあとのことを、シャーラはよく覚えていません。


 気がつくと、夕陽の中を南へ向かってみんなで歩いていました。

 荷車もありません。


 マルラ姉ちゃんは足を引きずっています。

 お母さんもシジ兄ちゃんも、黙って少しうつむき加減に歩いています。

 マハド兄ちゃんは泣きながら歩いていました。


 シャーラも、もう足が痛くて歩きたくないけれど、誰も止まろうとしないので仕方なく一緒についていきます。


 お父さんは、どこに行ったの?


 おばあちゃんは、どこへ行ったの?



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