2 ばくはつ
火が空を飛んでいったあとには、真っ青な空にいく筋もの白い煙の線が残りました。
シャーラはそれを口を開けて見上げていました。
音は大きくて怖かったけど、きれい。
でも、そのすぐあと、もっと大きくてもっと怖い音が聞こえました。
どおおおおおおおおおんんん!!
シャーラはびっくりしました。
そして音のした方を見ると、建物の間からものすごく大きくて黒い煙が空に向かってふき上がっていくところでした。
大人の人たちの叫び声が聞こえます。
お母さんが家から飛び出してきて、シャーラを抱きかかえました。
「マルラ! 洗濯はいいから、こっちにおいで! マハドも!」
マルラ姉ちゃんは洗濯物をほったらかして、お母さんのところへ走ってきました。
マハド兄ちゃんもボールを抱えて走ってきました。
おばあちゃんが家の中から出てきて、すごい顔で空を睨みました。
「始まった・・・。」
何が始まったのでしょう?
シャーラにはわからないけど、お祭りみたいな良いことでないのは確かです。
何か悪いことが始まったみたいです。
そう思ったら、シャーラは体ががたがたと震えてきました。
また空で大きな音が聞こえました。
シャーラが見上げると、また何本もの火が白い煙を引いて飛んでゆくのが見えました。
今度は違う場所の建物の方にそれは落ちて、その建物が火を噴いてバラバラになって飛び散るのが見えました。
すぐに真っ黒な煙がそこらを覆い、空に広がってゆきます。
どおおおおおおおおおんんん!!
音が遅れてやってきました。
重なってマルラ姉ちゃんの悲鳴が聞こえたような気がしました。
シャーラはサラムとメイルをぎゅっと強く掴んで、耳を押さえてお母さんに顔をうずめました。
お母さんはシャーラを強く抱きしめてくれましたが、シャーラは震えが止まらなくなってしまいました。
「マルラ、マハド! 家に入りなさい!」
そう言ってお母さんはシャーラを抱えて家の中に飛び込んだようでした。
ようでした。というのは、シャーラはずっと目をつむってサラムとメイルで耳を押さえていたからです。
シャーラがそっと目を開けると、家の中でした。
マルラ姉ちゃんもマハド兄ちゃんも、お母さんもおばあちゃんもいました。
みんな怯えた顔をして窓の方を見ています。
外で大人の男の人たちが何か怒鳴っているのが聞こえました。
「シジは無事かしら?」
お母さんが不安そうに言います。
「フゼールは大丈夫だったろうか?」
おばあちゃんが言います。
フゼールというのはお父さんの名前です。
外は大騒ぎです。
救急車のサイレンも聞こえます。
ただ、シャーラがちょっと安心できたのは、あの怖い音はそのあと響くことはなかったからでした。
いつの間にか、シャーラの体の震えも止まっていました。
少しするとシジ兄ちゃんが息を切らせて家に飛び込んできました。
「よかった。誰も怪我してない?」
「シジも。大丈夫だった?」
お母さんはそう言って、シャーラを片手で抱えたまま、シジ兄ちゃんをもう片方の手で抱き寄せました。
30分くらいするとお父さんも帰ってきました。
「みんな無事か?」
おばあちゃんがお父さんに抱きつきました。
「神様がお守りくださったんだよ。」
すごく怖いことが起こったみたいだったけど、シャーラの家族はみんな無事でした。
きっといつもお祈りしていたからです。
シャーラはそう思って、また心の中で神様に感謝のお祈りをしました。