12 食料と水
シジ兄ちゃんが帰ってこなくなってからは、お母さんとマルラ姉ちゃんが配布所に水と食べ物を取りに行っています。
マルラ姉ちゃんはまだ少し足が痛そうです。
シャーラもマハド兄ちゃんも一緒に行って手伝うと言いましたが、マルラ姉ちゃんは首を振りました。
「あんたたちはここで留守番してて。」
それから声を小さくして、こうも言いました。
「シジが持ってきてるものを、他の人に見つけられたりしないように。」
シジ兄ちゃんは、どこで食べ物をもらってくるんでしょう?
テントの村では男の子たちが「さっかー」をやって遊ぶ姿も見られるようになりました。
マハド兄ちゃんも時々混ぜてもらっています。
シャーラも新しいお友だちができました。
ミツキというシャーラより1つ上の女の子です。
テントは2つ向こうで、家族と一緒に暮らしています。
ミツキはクマさんのぬいぐるみを持っていました。
もふもふでガラスの目が付いたステキなクマさんです。
シジ兄ちゃんは、約束どおり1週間後には袋を持ってテントに帰ってきました。
袋の中には、どっさり食べ物が入っています。
「わあ。」
とシャーラは声を上げました。
「あんた。こんなにたくさんの食料、どこでもらってくるの? 少しお隣さんにお裾分けしてもいいかしら?」
お母さんが言うと、シジ兄ちゃんはすごく怖い顔をしました。
「だめだ! 絶対に誰にも見せるな! 言うな!」
「シジ、あんた。どこで何やってるの?」
マルラ姉ちゃんが怖い顔でシジ兄ちゃんを睨みました。
「俺は今、この家族でいちばん年上の男だ。だから、俺が家長だ。家長の言うことには従え。」
シジ兄ちゃんの目は、前よりも怖くなっています。
膝や、肘にも擦り傷の痕があります。
ほんとうに、シジ兄ちゃんはどこで何をしているんでしょう。
「あんた、まさか、タラ・・・」
言いかかったマルラ姉ちゃんの顔の前に、シジ兄ちゃんがもっと怖い目をして指を突き出しました。
「言うな! って言っただろ?」
それから食べ物を毛布の下に隠して、カラになった袋を持って立ち上がりました。
テントの外に出て行きかけて、シジ兄ちゃんはみんなをふり返ります。
「大丈夫。訓練だけだ。それに配布される食べ物だけじゃ足りない。俺が、家族を守る!」




