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ラザに生まれて  作者: Aju
1/16

1 朝の光

 シャーラは窓から差し込む朝の光の中で目覚めました。


 薄いケトルをぽおんと跳ね除け、すぐにキッチンに行きます。

 キッチンではお母さんとおばあちゃんと一番上のお姉ちゃんのマルラが朝ごはんを作っていました。

 いい匂いがいっぱいです。


「おはよう、おばあちゃん! おはよう、お母さん! おはよう姉ちゃん!」

「おはよう、シャーラ。今日も元気だねぇ。」

 おばあちゃんがコンロで鍋をかき混ぜながら、穏やかな笑顔をシャーラに向けました。


 お父さんは居間に座ってスマホをいじっています。

 家にたった1つだけのスマホです。

 お父さんは仕事に行くから、スマホを持たないといけないのです。


 お父さんのまわりを真ん中のお兄ちゃんとその下のお兄ちゃんが、ふざけながら走り回っています。

「怪獣だぞう!」

「きゃあははは!」


 お父さんは気に留める様子もなく、スマホを見ています。


 ただ、いつもとちょっと違って、この日お父さんはスマホを見ながら少し困ったような顔をしています。

 何か困ったことがあるんでしょうか。


 シャーラの家はラザでは幸せな方なんだと思います。

 お父さんに仕事があります。

 だから、シャーラの家の朝ごはんにはパンもトマトスープもオリーブもちゃんとあるんです。

 近所の子たちの中には、パンとバターしか食べられない子もいます。


「さあさあ、ごはんだよ。食事の前に、ちゃんとお祈りしなさい。」

 お母さんがそう言って、シャーラもお姉ちゃんやお兄ちゃんたちと一緒に床に並んで座って朝食前のお祈りをしました。

 今日のごはんがあることと、家族がみんな元気にしていられることを神様に感謝するんです。


 お祈りを済ませると、にぎやかに食事が始まります。


「あ! ぼくのナス、とった!」

「こらこら、マハド。お兄ちゃんのものまでとっちゃダメだよ。」

 お父さんが髭の中で微笑みながら言います。

 お父さんはいつもみんなに優しいお父さんです。


「まぁだたくさんあるから。」

 そう言ってお母さんが、真ん中のお兄ちゃんの器に自分の器からナスをひとつスプーンですくって入れました。

「へへ・・・。」と頭をかくマハド兄ちゃん。


 シャーラより1つ上のマハド兄ちゃんはイタズラが大好きです。


 朝ごはんが終わると、お父さんは仕事に出ていきました。

 真ん中のお兄ちゃんのシジは学校へ行きます。


「男の子は勉強しておきなさい。大きくなった時、仕事が得やすいからな。」

 お父さんはいつもそう言っています。


 でもシジ兄ちゃんは、勉強よりも体を動かすことの方が好きみたいです。

 いつも古い服なんかを丸めて作ったボールで近所の男の子たちと「さっかー」をして遊んでいます。


 マルラ姉ちゃんは井戸から汲んできた水で洗濯を始めました。


 マハド兄ちゃんは、シジ兄ちゃんがいないうちに、と「さっかーボール」を蹴って遊びだします。


 シャーラは家の前に置かれた椅子に座って、おばあちゃんの作ってくれた人形でお話を作って遊び始めました。

 女の子の人形の名前はメイルです。

 男の子の人形の名前はサラムです。


 少し先に見えるオリーブの葉っぱの緑がすごくきれいです。


「サラムお仕事いってらっしゃい。うん、いってくるよメイル。」


 その時、

 ごおおおおおおおお!

 という大きな音が上の方から聞こえてきました。


 シャーラが見上げると、何本もの火がすごい勢いで空を横切っていくのが見えました。



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