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救世の巫女   作者: TAO
2/6

02 地球にて


__________________


  地球

___________________





 月明かりが照らす森の中その場に似つかわしくないような美しい毛並みをした一匹の黒猫がぶつぶつと独り言をつぶやきながら道路を横切るように歩いていた。その猫の額には毛の色と同じ黒い宝石が月明かりに照らされてキラリと光輝いていた

 

 その黒猫の尻尾は体長の2,3倍もの長さがあり先が二股に分かれている、その2本の尻尾がフリフリと月明かりの中で踊っていた


「ハァ~全く兄さまの話はいつも長いのじゃ、会えば毎回毎回お前は神としての自覚が足りんとかどうとかせっかく姉さまから逃げてきたっていうのに、これじゃぁ逃げた意味があまりないわい。しかし今度の呼び出しはいったい何なのじゃ全く、今日はすぐに終わるといいんじゃが、、、」



 黒猫はとぼとぼと気が進まないままこの世界、地球の存在する世界の神と呼ばれる存在である兄との再会に重い歩を進めていると遠くからバリバリとエンジン音が聞こえてきた。その音はカーブを曲がるごとにうなりを上げながら大きくなり確かに近づいてきている。


「なんだぁうるさいのぉ、全くどこのバカが運転しとるんじゃ、、、」


 そんなことは言いながらもあまり気にすることなく黒猫はとぼとぼと足を進めるていると...


キュキュッ、ズザァァアァァァ


 音のする方を振り向くとちょうど横向きに倒れ込みながらこっちに向かって吹っ飛んでくるバイクの2本のタイヤが見えた

とっさにしゃがみ込むと耳をかすめるようにバイクが頭の上を滑ってく、そしてそのままガードレールに突っ込んだ

 振り返ると、運転していた男がその衝撃に吹っ飛ばされてこちらを見つめながらガードレールの向こう、崖の方に落ちていくのが見えた、、


「・・・・ぅおっとぉ、ありゃあいつは助からんな、、しかしこりゃまずいぞ兄さまにばれる前にさっさと逃げるのじゃ  、、、」


 そういいながら黒猫は止まっていた足を右に踏み出しその場から逃げ出そうとしたとき、背後の暗闇の中から腕を組み顎を触りながらニヤニヤした顔で近づいてくる和服のような、着物に身をつつんだ長身の男の姿がスッと現れた。


「ん~~~???何がまずいってわが妹よ?」


 今最も会いたくなかった兄の登場に踏み出そうとした足がピタッと止まる


「ま、まだここは約束の場所からは遠いはずじゃぞ、な、何でここにいるんじゃ?」


 ゆっくりと振り向きながら答えると男はゆっくりとさも当然のようにしゃべりだす


「いやぁ約束の時間になってもお前が現れないのでな、何かあったのかと思って心配になって迎えに来てやったのだよ。」


 男はあおるようなねちっこい声で猫に話しかける


「し、白々しいわい、いつもは兄さまの方が時間に遅れてくるじゃろうが、だからわしはゆっくり向かっておったのじゃ、それがいったい今夜はどうしたというのじゃ?自分からやって来るとは珍しいのぉ」


猫の必死の弁明に男は気にすることなく猫を見つめ返す


「いやぁお前にどうしても伝えなくてはいけないことがあってなぁ、まぁまずそれよりも、だ」


 スゥっと男の目が細くなりガードレールにぶつかってフレームごとひしゃげ、白煙を上げて転がっているバイクの方に目を向ける。そしてそのあたりをふわふわと漂っていた雲のような淡く輝く煙をつかみ取った


「これはいったいどういうことだ?私のかわいい妹よ、私の愛する人間が一匹死んでおるではないか?」


 そういって男は黒猫と目を合わせるようにしゃがみこんだ


「そ、そいつが勝手に突っ込んできただけじゃぞ、わしは何もやっとらんわい!」


 黒猫がそう答えると男は饒舌にしゃべりだした。


「ほぉ、私にはお前がぼおっと歩いていて道路に飛び出したように見えたが違うのかな、 「う、(ギクッ)」 いやすまないまさか私の世界に居候の身でありながら、私が丹精込めて生み出した人間を一匹不注意で殺してしまったわけではあるまいな 「 ぁぅ 」 いやまさか私のかわいくて優秀な妹がそんな嘘をつくわけがない、いやしかしどうしたものかこの男の寿命はまだ残っているはずだったのだが、、、」


 そう言って男は手のひらの上の煙を見る、煙はじたばたと男の手から逃げるように動いていた


「むーーわしが悪かったわい、なんじゃ、さっきからねちねちと結局何が言いたいのじゃ」


「ほう、自分の非を認めるか、よしそこでだお前達の世界、ロイシュだったか、そこでまた奴が不穏な動きをしているという情報が入った」


ロイシュそれは男が管理する地球と同じように、この黒猫が神として管理しているはずの世界だった


「や、奴という呼び方はやめるのじゃ、姉さまは姉さまなのじゃ」


「ふん、あやつが犯した大罪を忘れるわけにはいくまい、現にお前たちの世界は崩壊しかけたではないか。その崩壊を止めるためにお前は傷つき、そしてこの世界に逃げてきた、違うか?」


「そ、それは」


 黒猫は悔しそうにうつむく、


「そしてまたロイシュで異変が起きようとしている、一度逃げ出したとはいえお前はあの世界での責任がある、戻って決着をつけてこい」


「無理じゃ、たとえ帰ったとしてもわしにはもう力が、姉さまを止める方法がない」


「では、何もせずにただ崩壊だけを待つか?200年前、お前が救ったあの世界は、お前が助けた人間、獣たちはどうなる?何、力だとなんだと考える前に一度帰って世界を見てこい200年も時は経っておるのだ何か変わるかもしれん」


 そういうと男は立ち上がりぶつぶつと何か呪文の用なものを唱える、最後にぱちんと指を鳴らすと何もなかった目の前の空間に亀裂が入り漆黒の門が現れた


「ほれ、ロイシュへの扉だ、帰って何をするか自分の眼で見て考えろ」


「そ、そんな簡単にわしの世界への門が開けるなら自分で片をつければいいじゃろが」


「はぁ、お前はまだ言うか」


 男はため息をつくと猫の首根っこをグイっとつかみ持ち上げる


「あそこはお前たちの世界だ、崩壊するにしろ救うにしろ自分の眼で見届けてこい、何もする前にあきらめるな」


 男は少し怒ったようにそう言うと黒猫を門の方にひょいっと投げる


「おい、こらまだわしは帰ると決めたわけでは、、」

「あぁ、それと餞別だ、ついでにこれも持ってっとけ」


 男は猫の言葉にかぶせるようにそう言うと反対の手にまだ持っていた死んだ男の魂も扉の方に放り投げた


「はぁ?そんなもん何の役に立つ?いらんわーーー」


 そう言い残しながら黒猫と魂は門の中に吸い込まれていった





「くっくっく、まあそれを決めるのは俺じゃない。意外とつかえるかもしれないぞ、物は使いようだ」


そういって笑いながら一人残された男が門を閉じようともう再び呪文を唱えているとその肩に1羽の白い鷹がふわりと留まった


「全く、よかったのですか?あんな強引に妹様を帰してしまって」


留まった鷹が女性の声であきれたように話し出した


「お前か、見ていたのなら来ればよかったであろうに」


男が再びぱちんと手を鳴らすと開いていた門が消え去り元の暗闇が訪れる


「嫌ですわ、たとえ兄妹とは言え神同士の喧嘩に割って入る勇気は私にはありませんもの、それよりどうして死んだ人間の魂も送ったのです?」


男は鷹の頭を指でぽりぽりとなでながら答える


「なに、特に深い意味はないさ、少々強引でもないとあいつはまた逃げるからな、それにむやみに魂を漂わせていてはこっちの仕事が増えるだけだ、向こうで何かの役にでもたてばいいさ。はっはっはっ」


「あぁ、ただあなたがサボりたかっただけですか」


そう言うと肩の上の鷹は月を見上げてハァとため息をつくのだった、、、、、


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