4話 1歳になりました。
1歳になりました。
変化した事と言えば、半年ほど前から離乳食が進み母乳から得られる魔力摂取量が徐々に減ってきた事と歩きまわれる様になった事、それに文字を習い始めた事だ。
文字を早く覚えてこの世界の色々な本を読みたいというのは勿論だが、文字を書くことで指先を上手に使える様にならないと、魔法陣を書くことが出来ないからだ。
母様に文字を覚えたいと初めて言った時はびっくりされたが、直ぐに笑顔で絵本の読み聞かせてくれながら書かれる文字を教えてくれた。
前世では貴族の5男という事もあり母親の呼び方は『母様』というのが一番しっくりきてそう呼ぶようにしている。
そんな事を考えながら、ふと窓の外を見ると裏庭に畑があるのが見えた。
おー! これだ なぜ気付かなかったのかと思い思わず声をあげた。
「おー! かーしゃま 畑! 畑でございます。」
「どうしたの? そうちゃん 畑が気になるの?」
「かぁしゃま 畑に行きたいですっ!」
そう言いながら母様に駆け寄り抱き着いた。
「そうちゃん 畑がそんなに好きなの? 今日は少し寒いし少しの時間だけよ」
「わかりましたっ!」
離乳食により停滞していた母乳の代わりとなる魔力摂取に適した食事に対する解決策が目の前に現れ喜びの感情が、抑えきれず叫んでしまった。
もともとは、ダンジョンや魔力溜り等の魔素や周囲の川や土等にまで高濃度の魔力が浸透している場所でとれた薬草や野菜や野草等の食物にも多くの魔力が含まれている事から、王国の研究者達により調査が進んだ結果、高濃度の土地や水で育った植物はまた高濃度の魔力を含んだ植物として育つらしい。
また、魔素は魔力が多い場所に引き寄せられる性質があるようで、畑の土に魔力を送り定着させていくと、畑の周りの魔素濃度が高くなっていき魔力が多く美味しさまでアップした野菜として育つという事で、王国では一般的な農家にまで知れ渡った技術だ。
まぁ、ここには井戸では無く水道という場所から水をだしているようなので、魔力を多く含んだ魔力水を得るのは難しいが、まずは畑の土地の改良が優先だ。
そんな事を考えているうちに母様は俺を抱き上げ裏口のドアをあけ裏の畑に向かって歩いていった。
しばらくすると、こじんまりと畑にたどり着いた。
どうやら農家というよりは、自分たちが食べる分や近所に配る分くらいを作っているようだ。
まぁ丁度いい
余り大きな土地に魔力を流すとなると俺一人の魔力じゃぁどれ位の時間がかかるか分かったもんじゃない。この1年で魔力量も増えてきたし数日土地に魔力を送り続ければ効果が出てくるだろう。
「かーしゃま おろしてください。 畑に近づきたいですっ!」
「そうちゃん 何するの?」
そう言いながら、母様は俺を足元におろしてくれた。
「美味しい野菜が取れる様にっておまじないをするのです」
そう言って、畑に駆け寄り畑の土を手で触りゆっくりと畑に魔力を送り土の中で圧縮させて土地に定着させていった。
そんな俺の姿をみて母様は無邪気だと思ったのだろう、ニコニコと笑っていた。
意見、ご感想、ご評価、ブックマーク登録を何卒よろしくお願い致します!