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火六事務所へようこそ  作者: 守野伊音
二章 はじめての孤島編
16/31

16怪





 急勾配の階段は、段差が高く幅が狭い。更にその狭い幅に蔦や苔が生えているので滑りやすそうだ。

 一段一段慎重に下りていく私を、柚木さんは急かさず待っていてくれる。優しい友達を持って、私は果報者だ。

 友達のありがたさをしみじみ感じていたら足下が疎かになって段差を踏み外しかけた。咄嗟に両手を広げた柚木さんの上に転がり落ちてなるものかと、錆びた手摺りにしがみつく。ざりっとした感触をしっかり握りしめて事なきを得た。

 ただし私の掌は手摺りと同じ色に染まったため、階段から下りて足場をしっかり確保してすぐにウェットティッシュを取り出して拭いた。


 そうこうして辿り着いた集落は、とても小さなものだった。

 道路は階段と合流したあの一本だけで、その道を挟む形で家が建ち並ぶ。そのどれもが古く、似た作りの平屋だ。家と一、二歩分しか離れていないのではと思えるほど小さな庭を挟み、高いブロック塀が道路沿いにずらりと並んでいる。私や柚木さんが見上げなければならないほどの高さだ。今だと許可が出ない高さの筈だが、古い建物が多いので昔のままなのだろう。


「静かですねぇ」

「そうですね」


 しんっと静まりかえった集落では、歩く時に蹴り上げてしまった小石の音が響く。波の音も聞こえてはいるが、少し距離があるからか高いブロック塀に阻まれているからか、逆に静寂を深めるようなささやかなほどにしか届かない。

 空が狭く感じるほど高いブロック塀にこの静けさ。何だか訪問を阻まれているようで気後れしてしまう。

 観光地などでよく見かける「ようこそ!」と書かれた看板。今まで特別気に留めたことはなかったが、迎え入れてもらったとの安心感は確かにあったのだと初めて気付く。無くてもどうとも思わないし、他にお店などあれば気にせず入っただろう。だが、この場所ではそんな何気ない看板が酷く恋しい。


「……人、住んでるんですよね?」

「空き家も多いようですが、店らしきものもありますし、住んでいると思います」


 示された先では、ブロック塀がぽっかり空いた空間があった。半分空いたガラスの引き戸の奥は薄暗かったが、棚にはパンや洗剤などが所狭しと並んでいるのが見える。看板はないが、確かにお店だ。

 他の家とさほど差がない大きさのため、店内は狭く壁際の棚を合わせても三列しか存在しない。しかしレジと思わしき場所には人がおらず、やはりしんっと静まりかえっていた。外から見ただけだが、呼び鈴らしき物も見当たらないので声をかけるのだろう。


「名産品とか売ってますかね?」

「場合によりますが、ここまで小規模だとコンビニで見かける物がほとんどだと思います。見た感じ、地元で採れた野菜や海産物を販売しているようにも見えませんし。幅広く流通している物がコンビニより高く売られている場合も多いので値札を気をつけてください」

「そうなんですか!?」

「個人商店は薄利多売が出来ませんし、こういった場所では新規の客層を確保することも難しく売り上げはほぼ決まっていますので、その中で利益を出す為にはそうせざるを得ない場合が多いようです。ただし、様々な場合があるので全てがこの限りではありませんがと、何事においてもつけられる枕詞を前提に聞いてください」

「はぁー、勉強になりました。あれ? 柚木さん経営学取ってましたっけ?」


 仕事の都合上、欠席が相次ぐ柚木さんは、前期の授業でいくつかの単位を落としてしまった。前期ではまだ知り合っていなかったので助け合いようがなかったが、友達となった今なら手助けも出来る。

 柚木さんは自分が単位を落としても、私の単位まで落としてしまわないよう気を使ってくれるから尚更だ。

 後期ではせめてノートだけでも写せるように同じ授業を取っている。全て同じとはいかないが、事務所は基本的に二人で回しているのでお互いの時間割は把握していた。その中に経営学はなかったように記憶している。

 私の記憶通り、柚木さんは緩く首を振った。


「いえ。出席点が高かったので、絶対単位が取れないと判断しました」

「ああ……」


 首を振られた動作で重たい眼鏡がずり落ちて、慣れた手つきがそれを押さえる。

 出席点。授業内容の把握に自信が無ければ、それはそれは強い味方となるのに対し、出席の目処が立たなければ勉強だけでは追いつけない絶望の壁。

 彼が前期に落とした単位を思いちょっぴりしんみりしてしまいつつ、海の側まで辿り着いた。


 港と呼ぶにはあまりに静かな場所だ。テレビなどで見る漁港には、船着き場には漁船で獲れた物をすぐ加工できる工場などがあったように思うが、ここにはセメントで固められた空間があるだけだ。

 漁港ではないと遠目でも分かった。海には小さな船が一船しか存在せず、そもそも船を繋ぐための係船柱自体二本しかない。

 建物はないが、端のほうに古びた軽トラックとワゴンが一台ずつ止まっている。所々さびが目立つも廃車には見えないのできっとまだ使用されているのだろう。

 山に面したこの地に砂浜は存在せず、テトラポットとセメントだけが地面として存在している。そこに当たって砕け散る波ですら少なく、海は穏やかなものだ。だからだろうか。大海原と繋がっているはずの地なのに開放感はまるでなく、何故だか停滞した風を感じる。


「ここは風の吹き溜まりですね」

「山が、あるからでしょうか」

「そうですね。地形的な問題もあるのでしょうが、土地柄も、あまりよくないようです。あの森を見たら一目瞭然ですね。淀みがどこにも流れ出ず、溜まる一方だ」


 ここまで一直線だったにもかかわらず、見事に誰とも擦れ違わなかった。しかし、海へ向けていた視線をぱっと背後の集落へ向ければ、家々の窓に動くものがあった。それらはすぐに影へと紛れてしまったが、恐らく人だ。こちらを窺っていたらしい。……森で見たあれらとは違うと思いたい。

 私と同じ方向を向いていた柚木さんと視線を合わせる。


「人、いましたね」

「そうですね」

「……隠れてたんですかね。私達、そんなに怖そうでしょうか……」


 見たところ観光地というわけではないので、生活の場にずかずかと余所者が入り込んでくるのは不快かもしれない。しかし、家の敷地に入り込んだわけでも、どこかへ勝手にテントを張ったわけでもない。

 駅から下り、ただ通り過ぎただけだ。私達が今まで通った道の全てが私道だったのならともかく、そんな看板もなかった。

 人から嫌われるのはなんとなくつらい。それが関わりのない人であっても、少しもやもやするのだ。そうはいっても落ち込むほどではなく、ちょっとした不快感でもやもやが残る程度だったが、私は未熟者なのでそのもやもやは顔に出てしまった。

 もきゅっと唇を締めた私とは違い、柚木さんはいつも通り無表情である。心の内を顔面に浮かべてしまった私をちらりと見ても、それについて言及はしない。さらりと流してくれる気遣いが今は有り難かった。


「一応駅や道路が通っているとは言え、山の端にある小さな集落で来訪者が煙たがれるのはよくあることです」

「そうなんですか」

「はい。観光地として盛り立てていこうという気がなければ、余所からくる人間は生活を乱す可能性を秘めた敵です。昔は特にその傾向が強かった。病も穢れも、余所から持ち込まれてくるのだと決定づけられる事象は昔から多い。実際、情報が遮断される地域においては犯罪者が旅人として訪れても、それが分かりませんので。たとえ情報が届いたとしても、写真なんて物は有りませんし、名前なんて簡単に変えてしまえる。そして旅には危険がつきもので、ただでさえ今より近かった死が更に身近になる行為でした。その地に根付いて暮らす人々にとっても、そこまでの危険を負って自分達が住む辺鄙な地へやってくる人間は、余程の事情があると判断したとしても仕方がありません」


 そう考えると、確かに恐ろしい。今はテレビやネットであっという間に情報が駆け巡るが、昔は人の足が情報を届けていたのだ。

 過去に訪れた旅人の一人が何か事件を起こした場合、またはそういった噂をどこかで聞いた場合、全ての旅人を警戒することが一番の防衛策だったのかもしれない。

 もやもやしてしまって申し訳なかったと、唇を解く。


「逆に富をもたらす存在は来訪神として祀られ、後世に記録されたりもします。閉ざされた地では手に入らない物品や情報を携えてきた人間は、富をもたらすことがあり、それらを福とみなして感謝した。ですが、来訪神が厄災を齎さなかったというわけでもなく。厄災を齎すからこそ神として祀って封じた場合もあります」

「や、ややこしい!」

「結局、福の神か禍つ神かは会ってみないと分かりません」

「会いたくないです!」

「僕もです」

「お、お仕事!」


 無表情で、けれど万感の思いがこもっているとしか思えないほど深々と頷かれ、思わず仕事の心配をしてしまった。

 今回の事件がどの話に該当するかはまだ分からないが、そういったものが起こした事件の専門家が会いたくない宣言をしていいのだろうか。バイトしか聞いていないから別にいいのではないだろうか。しかもそのバイトは友達なのだから全く問題ないのではないだろうか。

 結論が出たので、私も深々と頷いておいた。



 今は引き潮なのか、船着き場の縁から海面が遠い。それをいいことに腰掛けて足を垂らす。他に座れる場所もないので苦肉の策である。

 足を揺らし、海風を感じながら空高く飛ぶ海鳥を見上げて苦肉を楽しむ。仕方なく普通と違うことをするって、何とも楽しいものである。


「島まで乗せてくれる船って、あれでしょうか。それとも後から来るんですかね」


 一船だけ止まっている船を示せば、柚木さんはちょっと考えた。


「木賀矢さんの話によると、話をつけてある連絡船の時間まで後三十分しかありませんし、あれだと思います。ですが船主はいませんので、最終確認しながら時間まで待ちましょう」

「はーい。あ、おやつ食べます?」

「食べましょう」


 ちょうどおやつ時。小腹も空いてきた頃合いだ。

 示し合わせたわけではないが、各々自主的に持ってきたおやつを吟味した結果、柚木さんが持ってきたようかんを二人で分ける。小さな長方形になっているようかんの包装を一部はがし、はがしていない部分を持って食べていく。私が栗ようかんで、柚木さんが芋ようかんだ。

 私はどっちでもよかったのだけれど、お互いどっちでもよかったので、適当に役を決めてじゃんけんをした。先に勝ったほうがその役のようかんをゲットするのだ。

 基本的に何でも美味しく頂ける私達は、違う種類の物を食べる場合、分け合うか、それが難しければこのどちらが勝っても幸せになれるじゃんけんを決行する。


「それでは始めましょう」

「ふぁい」


 先に食べ終わった柚木さんとは違い、私の口にはまだようかんが滞在していたため、間が抜けた返事になってしまった。もぐもぐしながら続きを待つ。


「まず、僕達は木賀矢さんの遠い親戚として滞在します。これは、寬枝さんの失踪に島民が関わっている可能性を完全には除外できなかったためです。僕達が寬枝さんの失踪事件について調べていると分かって妨害されると面倒、失礼、厄介だからです」

「成程」


 私の口からようかんが退去したので、はっきり返事ができた。


「とりあえず、地域文化論の授業とでもしておきます。僕と梓さんは従姉妹です」

「分かりました!」

「ここまでで質問はありますか?」

「呼び方、柚木君にしたほうがいいですか?」

「呼び慣れていない呼称を使用した場合、ぼろが出やすいのでこのままいきましょう。話し方も、お互いの親が厳しかったとでも言えば大丈夫でしょう。親戚筋なら似たような教育方針でも不思議がられません。外へ流動する人間が少ない地域では特にその傾向がありますから」

「了解です!」


 無理に話し方を変える必要がなくてほっとする。促され、空になったようかんの包装を柚木さんへ渡す。それを一纏めにして鞄にしまった柚木さんにお礼を言いつつ、二人揃ってペットボトルのお茶を煽った。

 その後もいくつか情報の摺り合わせと確認を行う。この仕事は基本的に現地に行ってからが勝負となるので、どれも簡単な確認作業だ。一通り終えても、十分しか経っていない。


「では、最後に、いつもの注意事項を確認します」

「はい!」


 バイトを始めてから今まで何度も聞いてきた言葉を頭の中で反芻する。

 正直、空で暗唱できるほど聞いてきたが、大事なことは何度確認しても無駄にはならない。自身に染みつけば染みつくほど、いざその時が来たら反射的に思い出すことができるからだ。

 だから今日は、柚木さんより先に私が言おう。


「柚木さんの指示を守ること。勝手な判断をしないこと。何かを視たり感じたりしたら、些細なことであっても全部柚木さんに報告すること。その結果、気のせいだったならそれでよし。もし何らかの事象により思い出せなかったとしても、思い出せない事実を覚えているのであればそれを報告すること。一人になる場合は全部柚木さんに報告すること。恐怖に駆られて逃げ出すときも絶対柚木さんを連れていくこと。何かを視てもついていかないこと。見失いそうなら見失うこと。何らかの事象により強制的に一人になった場合、仕事の達成及び荷物の回収は後回しで、命を守る行動を優先すること。ですよね!」

「はい」


 一言で言うなら、彼の指示に従って一人にならないよう行動しましょう、である。そのどれも当たり前のことなのだが、どうにも守れない人間が多いらしいのだ。

 ふと車の音が聞こえた。

 海へ向けていた視線を背後の山へと向ける。しかし山自体はあまり見たくなかったので極力下げ、道路だけが視界に入るように調整した。

 集落を左右に生やした道路を一台の白い車が走っている。近づいてくるにつれて、それが軽トラックだと分かった。

 時々派手な音を響かせている。遠目にも黒い煙が上がっているのが見えたので整備不良が疑われた。軽トラックは段差で大きく車体を揺らしながら港へ入ってくると、船の前で止まった。

 運転席から出てきたのは七十代ほどの男だった。小柄で痩せた男は、皺だらけの顔を更に厳めしく顰め、荷台に積んだ荷を下ろしていく。動く度背中のシャツが浮いているので、相当痩せているのが分かった。


「すみません、飛浦とびうらさんでしょうか。僕達、木賀矢さんの親戚の者ですが」


 先に立ち上がった柚木さんが声をかけると、ちらりと視線を寄越しただけでまた荷物を下ろす作業に戻ってしまう。


「学者先生から、話は聞いとる。乗れ」


 私達に背を向けたまま言葉が返された。


「お手伝いしましょうか」

「いらん。触るな。さっさと乗ってじっとしていろ。何も触るな」

「分かりました。ではお邪魔します。梓さん、行きましょう」


 取り付く島もない対応だが、柚木さんは意に介した風もなく私を振り向く。飛浦さんは一人で十箱以上ある段ボールを下ろしている。更にそれを船へ積むのだろう。それを横目で見ながら船で待っている姿を想像すると、なんとも居心地の悪い気持ちになる。しかし船の持ち主が触るなというなら、仕方がない。決定権は彼にある。

 私は飛浦さんによろしくお願いしますと頭を下げ、柚木さんの後へと続いた。


 飛浦さんの作業は手慣れており、彼がこの作業を幾度もなく繰り返していることが見て取れた。確かに、この様子だと手を出したほうが邪魔かもしれない。

 段ボールは口が閉じている物もあれば開いている物もあった。見るとはなしに見えてしまった中身は、野菜や洗剤、服や靴といった日用品だ。発泡スチールの箱もいくつか積み込まれているので、あちらは生鮮食品だろうと当りをつける。白い箱が揺れる度、きゅあきゅあ鳴る音に小さな鳥肌が立つ。

 荷はあっという間に運び込まれ、軽トラックは元々停まっている二台とは反対側に止め直された。そうして船はあっという間に出発した。


 船に詳しくはないが、この船がクルーザーなどの船内を重視した船でないくらいは分かる。元々は漁船として使用されていたのではないかと当たりをつけた。しかし、網など漁業に必要となりそうなものが全く乗っていないので、今はそう使用されていないようである。

 船内は荷物でみっちみちになっていた。雨が降っていないから問題ないが、私達は必然的に海を身体いっぱいに感じられる甲板にいた。海を近くで見られて、ちょっとわくわくする。

 最初はどうなることかと思ったけれど、いざ船が出発すると当然のように私はわくわくした。何故なら、船旅は初めてなのだ。


「柚木さん!」

「はい」

「私、船初めてなんですよ!」

「そうですか」

「はい!」

「よかったですね」

「はい!」


 惜しむらくは、さっきまで晴天だった空が急速に曇天へと移行してしまったことだが、帰りは晴れたらいいなと未来へ希望を託せば特に気にならない。

 濃い潮の香りに包まれながら、世界自体が揺れる不思議な場所で漂う。飛行機とは違った不安定感が不思議だ。しっかりとした床があるのにその下は空白で地面は遙か彼方な飛行機と、しっかりとした床はあるしその下はたっぷりの水があるのに空白と呼んでも差し支えのないほど遙か彼方な足場。

 歩けない場所を悠々と進んでいくなんて、よく考えれば凄いことなのだが、それを当たり前にしてくれた過去の偉人達はもっと凄い。


「船酔いするタイプじゃなくてよかったですね」

「あ、そうですね。その可能性を全く考慮してませんでした! 柚木さんは、船慣れてます?」

「離島への移動手段は船が多いので、乗る機会は多いですね」

「じゃあ、私もこれから何度も乗れるんですね!」


 船旅に慣れている未来の自分を想像してみる。何だか格好いい。


「船旅で面白かった事とかあります?」


 木賀矢さんからの事前情報では島まで一時間はかかると聞いている。これを機に、いつもは話題に上らない内容を膨らませるのも手だろう。

 そんな軽い気持ちで聞いたのがいけなかった。

 私は誰を相手にしているのか忘れていたのだ。そう、私の友達は代々悪霊退治を家業にしているのである。

 特に興味なさそうに曇天を見上げていた柚木さんは、私の問いに視線を下ろした。


「海面を見た瞬間女に顔を鷲掴みにされて引きずり込まれた話と、夜行船でずっと僕を覗き込んでいた顔のない男の話と、看板を楽しそうに駆け回る焼け爛れた子ども達の話、どれがいいです?」

「どの話も二度と船に乗れそうにない気配をひしひしと感じるので辞退します」

「じゃあ家族旅行の話にしますか?」

「是非そっちでお願いします!」


 聞く前から怖いことが分かりきっている話から、救いを求めてほのぼの家族旅行へ舵を切る。


「では、父が海へ引きずり込まれた話と、母が船から消えた話と、僕が死者しかいない船に乗った話、どれがいいですか?」


 救いはなかった。







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