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踊り子

踊り子たちの待機していた部屋は大広間のすぐ傍だった。

城内はまだばたばたと騒がしい。

城の中を調べる人々と誕生日会の片づけをする人々が忙しく動いていた。


扉をノックすると背の高い女性が出て来た。


「なに?」


一目見て僕たちが城の正式な者、つまりは王族の者ではないと見て取ると攻撃的な様子で対応して来た。


「城の内部で盗難被害が報告されています。疑うわけではありませんが持ち物を調べさせてください」


「疑うわけではないのに調べさせてなんて笑っちゃうね。はっきりと疑わしいと言えばいいのに」


僕らを見下ろしながら女性は言った。


170センチちょうどの僕が見上げている。180センチ以上はあるだろう。


すらっと細い身体をベッドの上に投げて女性が言った。


「好きにしなよ。何も出やしないからさ」


その部屋にはこの背の高い女性しかいない。

他の人は別の部屋にいるんだろうか。


女性の荷物を調べるのはノアとサーシャに任せる。


「他の人はどこにいるの?」


僕が尋ねると踊り子の女性は起きて僕をまじまじと見て何も答えないでまたベッドの上に寝転がった。


「夏天、あれはあの娘の恋人魔法だよ。実際にはいない」


サーシャが教えてくれた。


あれが魔法だったなんて信じられない。

ならこの女性は魔法を使いながらしっかりと踊りを見せていたのか。


「で、見つかったの?」


「ないな」


部屋を出る前に僕は踊り子に尋ねた。


「いつこの城を発つの?」


「すぐにも出るよ。明後日には別の仕事があるからさ。そのあとは暇なんだ。ゆっくりする」


直斗の勘は当たってる。


僕たちは踊り子に協力のお礼を言って部屋を出た。


「書斎に戻りましょう」


ノアの提案に従って僕たちは書斎に戻った。


すると、そこにはもうみんな集まっていた。


「楽団たちの荷物には怪しい物はなかった」


アリアが報告するとレベッカさんやサーシャも報告した。

盗まれた物は見つからなかった。


そんな時にアリアの姉・マリアさんが書斎に入って来た。


「お母様からお話が聞けたわ。お母様が言うには犯人をチラッと見たと言うのよ」


有力な手がかりだ。


「なんでもすらっと背が高くて細い男だったらしいわ。あと大きな鎌が光るのが見えたと言っていたの」


マリアさんが言う事に僕は自分の耳を疑った。


その特徴に心当たりがある。


ペイトンだ。


「アリア、ペイトンじゃない?」


僕が言うとアリアはすっかり忘れているようで首を傾げた。


「ノア?」


ノアを見ると彼女はこくりと頷いてくれた。

どうやら覚えているらしい。


「アリア、あのペイトン・コリダーの特徴が正しくそれです。背が高く、細身で鎌を武器として使う」


ノアの詳しい説明でようやくアリアはペイトンの事を思い出したらしい。


「あいつか………!!」


額を打って閃くとアリアが素早く手配していく。


「よし、緊急手配だ。バジャール、パメラ、カティアは兵士たちにペイトン・コリダーという男の特徴を伝えよ。レベッカたちは城内の者たちに伝えてくれ。マリアお姉さまは引き続きお母さまの傍にいて欲しい」


やっぱりアリアは凄いや。

でも、僕たちに指示を出さないぞ。

どうしたんだろうか。


「アリア、僕たちは?」


「私たちはペイトンの弟・ペッシの所へ行く。近々に移送予定だったはずだ。もし本当にペイトンなら弟もこの機に助け出すかもしれない」


ペッシ!


「分かった!!」


僕たちはアリアの案内で牢獄がある城の地下へと急いだ。


城の牢獄は深くにあった。

脱獄を禁じ、救助させないために深い場所に作られていた。


牢番は全部で5人もいた。みんなが武装していてそれなりに戦えそうだ。


怪しい動きはないと言う。


ペッシは囚人服を着て木の手枷と足枷をさせられていた。

それを見ると僕は心が痛んだ。

どこの世界でも罪を犯した人はこうなってしまうんだな。


鉄格子の向こう側で壁に背をもたせかけたペッシが僕たちを睨んでくる。


「ペッシ、今、お前は近々に移送される。その前に吐け、兄の居場所を」


ペッシは答えない。

じっと沈黙して僕を見ている。


「ペッシ、答えろ」


僕はペッシを見ていた。

目が合っている。何かを探り出そうとしているような目で僕を見ていた。


とにかくペッシに何かしらの影響を与えなくちゃダメだと思って僕はペッシから目を逸らした。

牢獄の中を改めて見る。


「今までと違うな。焦りが見える。人も増えているしな。上で何かあったんだな?」


アリアは答えない。


「兄貴でも来たか?」


これにも答えない。

ペッシが僕を見る。


「ジェイク、久しぶりだな。元気だったかよ?」


「元気だよ。ペッシは?」


「こんなところに入れられて元気もクソもあるかよ。へっ、お前がもう少し早く来ていたらカード遊びをここで教えてやったんだがよ」


「要らないよ、カードなんて勝つ時は勝つし、負ける時には負けるさ。あのさ、本当にペイトンについて知らないの?」


「へっ、ジェイクよお、兄弟ってのはそんなに単純じゃないぜ。兄弟はいないのか?」


「妹がいるよ」


「気に入らないぜ、幸せそうに言いやがって」


そんなに幸せそうに言ったかな。


「教えてよ、ペッシ。お兄さんの事を」


「兄貴が俺を助けに来るなんて思ってるなら大間違いだぞ。もし本当に兄貴が来てるなら何かあるのさ、思惑がな」


「このロキアーノにもお前たちが寝泊まりした所があるはずだ。どこか教えてくれ」


アリアが言った。

ペッシはアリアを見た後に僕を、ノアを、サーシャを見た。


「シーリン通りの40番を訪ねな。そこにもしかしたら手掛かりがあるかもしれない」


「礼を言う」


アリアが言う時、ペッシを見なかった。


「ありがとう、ペッシ」


「へっ、俺もどうかしてるぜ。お前の単純な眼を見ていたせいだろうな。とっとと失せやがれ。腹が減る気がするんだよ、お前を見てるとな、少なくとも膨れはしねえ」


「空腹は辛いね。あと僕の名前は夏厩夏天(なつまやかてん)って言うんだ。ジェイク・アロンソは偽名だよ」


「お前は本当にジェイクだぜ。俺みたいな悪党に本名なんて名乗るもんじゃない。ジェイクのままでいた方がまだ賢かったな」


「ペッシは今、更生の一歩を踏み出したのさ。もう完全な悪党ってわけじゃないよ。これからきっと陽の道を歩けるよ」


「けっ、やっぱりお前を見ていられねえ。陽の道なんてお袋みたいな事を言いやがる。俺は寝たいんだ。叩き起こされたからな。睡眠だけがここでの唯一の楽しみなのによ」


「うん、ごめんね。おやすみ、ペッシ」


牢を出ると僕たちは早速、ペッシの言ったシーリン通りの40番を訪ねる事にした。


シーリン通りは空き家の多い通りだった。はっきり言って古い手入れの行き届いていない家ばかりだった。

人の住んでいないように見える家に多くの人が住んでいた。


アリアを先頭に向かっていると十字路で僕の前を1台の馬車が通った。


通り過ぎるのを待っていると口に布をあてがわれて抵抗する間もなく僕は気を失った。



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