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友人


「今日だな」


「ええ、今日ですね」


「うん、今日だね」


「準備はいいか?」


「ええ、もちろん」


「うん、ばっちりだよ」


僕、夏厩夏天とノア、サーシャは秘密裏に集まって話し合っていた。

そんな会談も今回で7回目になる。

そして今日、来るべき日がやって来た。


アリアの誕生日。


今日、彼女は17歳になる。

ロンドリアンで17歳と言えばもう大人で自立した女性として見られるらしい。

そして彼女は皇女、ひとりの自立した女性像の模範として立たなければならなかった。


同い年の僕だが僕の生まれは10月だ。こっちでどれくらいなのかは分からないが日本にいた頃はまだ6月だったので当分先のことだった。


盛大なパーティーが催される。

僕たちも出来る限り祝うつもりでいる。


「楽しみだねえ」


「そうだな、アリアも張り切っていたが緊張していた」


「今回はロンドリアンや他の国交のある国から人がやってくる様ですから緊張もするでしょう」


「なんだか僕まで緊張してくるよ」


「あら、まあ」


「しょうがない人だなあ」


僕たちは来賓の客室に待機している。

今は準備をしているところで外はとても騒がしい。


部屋の扉をノックする音が鳴った。


「どうぞ」


ノアが言うと扉がゆっくりと開かれた。


バジャールが入って来た。

彼の様子はいつもと違う。彼も彼で緊張しているようだ。

いつもの兵士としての服装ではなく正装を着ている。

がっしりとした精悍な顔つきが一層際立つ軍服のような服をバジャールは着こなしていた.


「似合ってるね、バジャール」


「ありがとうございます。夏天さんも良いお姿ですね」


僕も正装を着ているがちょっと恥ずかしいぐらいに盛れている。

ノアもサーシャも美しく着飾っていた。


「アリアの様子は?」


「今はご休憩中です。外の空気を吸いたいと言って飛び出して行ってしまいました」


アリアらしい。


「私も誕生日の祝賀会は嫌になる。各方面に挨拶をするんだがいつもへとへとに疲れ切ってしまうからな」


サーシャが言った。


「私も苦手ですね。ああいうのはもうごめんですよ」


ノアも同意する。

僕はあんまり経験がないから分からないな。


すると、部屋の扉がノックもなく勢いよく開けられてめかし込んだアリアが入ってきた。


「もううんざりだ!」


とっっても綺麗だった。


純白のドレス、布が輝いていて着る人を鮮やかに見せている。空気までもがそれに影響されて輝いている様にさえ見える。


「とっても綺麗だね」


「ふん」


アリアはどすんと音を鳴らしてソファに座ると僕たちをじろりと見て言った。


「まあ、お前たちもなかなか良いじゃないか」


そう言うとアリアは愚痴をぼろぼろと漏らしていく。


僕たちは聞き役に徹した。

そうした方がアリアの緊張が和らぐと思ったし、ストレスを少しでも減らせるのなら良い。


いくらか経った頃に部屋の扉をノックする音が鳴った。

それを聞いたアリアは身を隠すように扉から遠ざかったが煌びやかなドレスがそれを許さない。隠しきれないオーラや色々なものが出てしまっている。


「どうぞ」


今度はサーシャが言った。


入って来たのは知らない女性だった。

蒼い長髪、すらっと長い手足と細い胴、直線的なドレスを着こなす抜群のスタイル。

耳にしたエメラルドのイヤリングがきらりと光っている。


「うげ、レベッカ」


アリアが呻いた。


「やあ、アリア様。素敵なドレスじゃないか」


レベッカと呼ばれた女性はつかつかと歩いて来て僕たちの前に立った。


「はじめまして、私はレベッカ・トコット。以後、よろしく」


「よろしくお願いします。夏厩夏天です」


「うん、あんまり似ていないな。似てると聞いたんだが。すまんな、気にしないでくれ。そもそも似てる似てないなんて些細な事だ」


似てるって、誰にだ?

僕が尋ねる前にアリアが口を開いた。


「レベッカ、何しに来たんだ?」


アリアが尋ねた。


「何って、ご挨拶に決まってるだろう」


そう言ってノアとサーシャにも挨拶をしていく。


アリアはこのレベッカさんが苦手のようだ。

相手にするのが面倒と言うよりも接し方が分からないという感じに見える。


「やあ、バジャール。聞いたぞ、何かやらかしたらしいな」


「汚名返上の機会を待っているところだ。あまり騒がしくするな、レベッカ」


「馬鹿を言え、今日は祝いの日だ。これからもっと騒がしくなるのに私が喋っている事がどんな障りになる?」


そう言ってレベッカさんは喋り続けた。

どうやらアリアとは遠戚の間柄らしい。

と言っても遠すぎてほとんど無関係だ言っていた。


そしてアリアの姉マリアさんのお付の護衛らしい。


「さて、また会おう。本当はみんなで来るつもりだったんだが嫌がる者がいてな」


それはショックだな。

マリアさんに無礼を働いた覚えはないけれど。


「相変わらずですね、レベッカは。パッと来てパッと去る」


中性的な顔立ちをした美人だった。


そして遂にアリアは呼ばれて行った。


それから程なくして僕たちも呼ばれて大広間に入る。

そこにはもう既にたくさんの人がいた。


アリアのお父さんは多忙で来れないらしい。

アリアにそっくりの母親が奥にあるとても豪華な椅子に座っていた。

周りにはたくさんの人たちがいる。


そして鐘が鳴らされた。

大きく高く響くと途端に大広間の中は水を打ったように静まり返った。


大きな扉に侍従が居るのだろう。

ゆっくりと開かれていく扉の先にアリアがいた。

とても綺麗だった。

星の煌めきを帯びている。


なんて綺麗なんだろう。

これには見惚れる。


ぼうっと見ているとアリアと目が合った。

彼女も僕たちを見ていた。

ちょっとだけ微笑んだように見える。

その姿での優しい微笑みは女神のようだ。

ゆったりと余裕を持って魅せるように歩いて行く。


天井から下りるシャンデリアの光も彼女の助けをしているだけになっている。


そうしてアリアの17歳の誕生日会が盛大に開かれた。


僕はお酒は飲めない。

果実ジュースを飲んでいるのだがそんな僕に付き合ってノアもサーシャもお酒を飲まなかった。


「良いんだよ、僕の事は気にしないで」


「いいえ、元から好きではありませんから」


「私もだ。酒は良くない」


ノアは本当に好きじゃない感じだけどサーシャは我慢しているような雰囲気がある。


「サーシャはどんなお酒が好きなのさ?」


僕が意地悪をして尋ねると彼女はじろりと僕を睨んだ。


「夏天〜?」


「だって我慢してるように見えたから」


「我慢してるように見えたのなら正しいな。ウェルガリアでは15歳から酒が飲める。私も大いに飲んだ。飲んで大失敗をしたんだよ。あれ以来、酒は絶っている」


酔うと人が変わるタイプっているらしいね。


僕は料理を食べた。

それはもうとにかくいっぱい食べた。

美味しくて手が止まらない。

テーブルに置かれた料理を端から端まで食べようと思ったが僕の限界の方が先にやって来た。


夜は更けていく。


催し物も盛大だった。

ロンドリアンで有名だという楽団が大広間を音楽でいっぱいにしている。


踊り子のような人もいて楽団に合わせた踊りなどを披露して楽しませてくれた。

とても背の高い人々で踊りは流麗で流れる音楽を乗りこなしていた。


宴もたけなわとなった頃、満腹で身体は熱かったし、人々の熱気にやられて苦しいぐらいだったのでテラスに出て夜風を浴びている。


「こんな所にいたのか」


聞き覚えのある声だった。

それも男の声だ………。

とても懐かしいような………。


僕は声のする方を見た。

見覚えのあるシルエット。


「直斗!」


身だしなみを整えた朝日直斗がそこに立っていた。

隣にはレベッカさんがいる。


彼女が言った似てる似てないっていうのは直斗と僕の事だったのか!


「直斗、どうしてここに?」


「多分、お前と同じ理由だよ」



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