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パーティーでの出会い

季節は、夏。

僕の名前・夏厩夏天(なつまや かてん)という名に2つも夏が付くというのに耐えがたい暑さにダウンしています。

お父さん、お母さんお元気ですか?

僕は元気です。こちらで頑張っています。そっちでは経験出来なかった多くの事をこちらで経験しました。


今、僕は厩舎の掃除をしています。酷い臭いです。



こちらに来てから数日が経っていた。いや、数日どころじゃない。1ヶ月が経とうとしている。

僕はあの1件以来、アリアの客分として迎えられて城で過ごしていた。

働かなくてもいいと言われたのだがヨハンなどの馬の世話をしたいと申し出てこうして厩舎の掃除をしている。

アルバイトの経験もなかった僕がここで働いて少しの賃金を得ているのだった。


「夏天さん、お昼休みだそうですよ」


ノアが教えてくれた。

彼女も僕と同じように厩舎の掃除をしている。

僕が働くと言ったらノアもアリアに言って働き始めた。

アリアはノアに給仕などの女性が任される仕事をさせたかったようだがノアは頑なに拒んだ。


ノアは僕の分の昼食も持って来てくれていた。

昼はいつもサンドウィッチだ。


厩舎の外に出て僕とアリアは鮮やかな庭園にあるベンチに腰掛けた。


「どうぞ」


紙包みに入ったサンドウィッチをノアが渡してくれる。

それを受け取って包みを開いた。するとパンの間に挟まれた野菜とベーコンが見える。


「今日はベーコンが入ってる」


いつもサンドウィッチなのだがパンに挟まれる具材は毎回変わる。


「お肉お好きですね」


「へへ。まあね」


美味い。

僕が頬張るとノアも小さく口を開けてサンドウィッチを食べ始める。

なんだかとても緩やかな時間が流れているなあと僕は思った。それまでが激動だったからかもしれない。


あれから様々な聴取がなされたみたいだ。

ディーノ・ノーパスは息も絶え絶えで会話を少ししただけで衰弱死してしまったらしい。

彼から満足いくほどの情報を聞き出せなかった事からバートン・シェイダンに関する情報の聴取は接点のあった僕になされた。

といっても、僕が答えられる事も多くない。


加えてあのペイトンの弟と言われていたペッシとキンターなどあの連中も城の牢に入れられているらしい。


「今日の夜はどうなさるんですか?」


「そうだね、どうしようかな?」


そう、今日の夜、この困難を乗り越えた祝賀会が行われると言うのだ。

アリアが出席すると言っているし、首都からも偉い人が何人も来るらしい。一応功ある者として出席を求められているのだが祝賀会になんて出席した事のない僕は遠慮したかった。


でも、ノアが色々と助けてくれると言ってくれるのでどうしようか迷っている。


「迷っているんですね」


「うん。だって、僕はパーティーだとか祝賀会だとか無縁な生活をしてたからね。どうしたらいいか分かんないんだよ」


「もし出席されるようでしたらお声かけください。出来る限りサポートしますから」


「うん、ありがとう。でもなあ、祝いの会で着る服なんて持ってないんだよね」


「あら、アリアが用意すると言っていましたよ。そのために寸法まで測ったそうではありませんか」


そうだった。思い出すだけでも恥ずかしいあの時間。

パンツ一丁にされて腕の長さと脚の長さ、胴回り、胸回りなどなど測れる物の全てを測った。

日本人に特有の特徴だと思うのだが僕の短足がここで衆知の事実として数値として表されたのだ。

僕は両親を恨んだ。酷いじゃないか、こんな事ってあるか!


「ノアは行くの?」


「私にとっては何度も出席した事があるような物ですからどちらもで構いません。飽き飽きしていますし、退屈ですよ。でも、夏天さんが行くのなら私も行こうと思います。礼服姿の畏まったところも見てみたいですから」


「ノアはどんな服で行くのさ?」


「私はドレスでしょうね。似合わないなんて笑っちゃ嫌ですよ。お世辞でも似合うって言ってくださらなければいけませんわ、その時には」


見てみたい、ノアのドレス姿。

今の2人の格好は汚れたシャツに作業着のオーバーオール姿だ。ノアはそれもそれで素敵だがドレスともなるとまた違う雰囲気になるだろう。


「僕もノアのドレスを着たところを見てみたいな」


「き、期待しないでくださいね」


サンドウィッチを食べ終わった。

紙包みをくしゃくしゃに丸めると僕はそれをもてあそんだ。

「あら、動かないでくださいね」


そう言ってノアが僕の右頬に手を当ててナプキンで左頬に付いていたクリームを拭った。


「取れましたよ」


「ありがとう」


「どうぞ、お構いなく」


彼女もサンドウィッチを食べ終えて紙包みを丸めてしまった。


「貸して、それ」


僕はノアが丸めた紙包みを受け取ると小学生の頃にお婆ちゃんに習ったお手玉を披露した。


「まあ、お上手」


僕は得意になって数回そんな事をしていた。

ちょっとした意地悪を思い付いたのでノアに2つの丸めた紙包みを渡す。


「ノアもやってみてよ」


「良いですよ」


どうやら彼女は初めてお手玉をするらしい。最初は拙い感じで玉を取り落とす事もあったがすぐに慣れて見事に行うようになった。


「上手いね」


「コツを掴みました」


僕はその瞬間に宙に浮いていた玉を奪い取った。

ちょっと驚いたノアを見て僕が笑うと彼女もにこりと微笑み返して来る。


と思ったらノアはすぐに氷の小さな玉を作り出してそれでお手玉をするのだった。中断する事なく行われて僕は呆気に取られた。

彼女はそのまま氷の玉を2つ3つと増やして計4つの玉でお手玉をしている。


僕はお手上げで負けを認めた。

僕のお手玉技術は2つの玉でしか発揮されないのだ。


「ふん、ずいぶん楽しそうだな」


後ろにアリアが腕組みをして立っていた。


「やあ、アリア。何しにここへ?」


「ふん、お前たちこそここで何をしている、デートか?」


デート!

そんな、これがデート?

いや、確かに女の子と2人きりでご飯を食べてたな。


「はい、デートですよ。まあ、ランチデートというやつですね」


ええーーー!!

ノア!!


「ふん!」


アリアがベンチの前に回って僕とノアの間に割り込んで座った。


「そういえばマリアお姉様に庭園の様子を見るように頼まれていたんだった。ここで見るとしようかな」


「まあ」


ベンチが極端に狭くなった。このベンチは2人がけのベンチなんだなあ。


「き、綺麗な庭園だよね」


「そうだろう、マリアお姉様が懇切丁寧に世話をしている庭園だからな」


「そういえばご挨拶してなかったね」


「今日の祝賀会には来ると言っていた。今は南国のフンボルに植物研究のために訪問していたところだ。今、こちらの方に向かっているようだから挨拶は会の前に出来るだろう」


「南国かー。いいね」


「何がいいものか、暑くてジメジメしていていい事などひとつもないぞ」


「でも、僕は海とか好きだからなー」


「海か。ところで夏天は祝賀会に出席する準備は出来てるのか?」


「え、準備って?」


僕が尋ね返すとアリアはにこりと笑うだけで答えてくれない。


「ノア?」


「礼服はアリアが手配するのなら武勇伝や出身地の話の準備だと思いますよ。会はどうしても中心が夏天さんになるでしょうからみんなお話を聞きに来ると思いますよ」


「嫌だなあ」


語れる武勇伝なんてないぞ。

運動会の熾烈な中盤争いの話でもしてあげようかな。


それにしてもこの庭園は本当に綺麗だ。

この庭園の手入れをしているというアリアのお姉さんにはちょっぴり会ってみたい気がする。



そうこうするうちに夕方になった。

仕事を終えて部屋でゆっくりしていると扉をノックする音が聞こえて来た。


「どうぞ!」


僕が応じるとアリアの侍従の人たちがぞろぞろと入って来る。


「お着付けに参りました」


お着付け!?


「まずはご入浴くださいまし。仕事の汚れを落としてください」


そう言われて僕は風呂場へと案内されていく。


僕の礼服は豪奢を極めていた。軍服に似ていると思った。身体がもう少し大きくて鍛えている風貌の人なら大いに似合っただろうが僕にはどうにも不釣り合いな気がしてならない。

馬子にも衣装という言葉がある事を信じよう。


「とても良くお似合いですよ、夏厩様」


その中で最も年配の女性が言ってくれた。どうやら偉い人のようでテキパキと指示を出していた。

その人が皮切りに次々と褒め称える声が耳に届く。


そうして祝賀会へと向かう。

慣れない衣装で歩くのはそれだけで上手く歩けていないような実感があって僕は段々恥ずかしくなっている。


大きな扉の前に立った。

確か大広間へ繋がる扉だったはず。その向こうはがやがやと騒がしい。

僕はいよいよ祝賀会に向かうような気持ちになって足が竦んだ。


そして扉の取っ手を持った2人の侍従が僕を見て微笑みかけるとこくりと頷いて扉を開いた。

廊下の中心にいた侍従たちは左右に別れて歩き出す。

徐々に開いていく扉の向こうがたったそれだけでシィィンと静まり返ったので僕を怖がらせる。


僕は誰に背中を押された訳でもない。それなのに歩かなければならないと強く思って前へと歩き出した。きっと場に則した衣服の力だ。


僕が大広間に入ると拍手の砲列に打たれて麻痺したように身体が動かなかった。


すると前の方から美しいドレスに身を包んだアリアがゆっくりと歩いてくるのが見えた。

僕は、この姿にさすがにお姫様なんだなあと感心した。堂々としていて優雅だった。

オールバック風に髪を後ろに撫で付けて煌びやかなティアラを付けている。

もう全身が神々しく輝いていた。


「夏天、このまま奥へ行きましょう。さあ」


僕はアリアに連れられて大広間の奥へと歩いていく。

とてもゆっくりで両端にいる人々の顔をひとりひとり見分けられるほどだった。


「会の前にマリアお姉様がご挨拶したいと言っていたが間に合わなかった。後で私がご紹介するから楽しみにしておいてね。お姉様もとても楽しみにしていらしたわ、夏天に会うのをね」


「そ、そうなんだ」


もう緊張と拍手の音でアリアが言っている事の大半が分からない。


「緊張してる?」


「しない方が無理だよ」


「リラックスして。大丈夫よ、みんな、あなたの敵ではないから」


「うん。アリアもとっても綺麗だね」


「ありがとう」


アリアがいつも通りに話すので僕もなんだか落ち着いてきた。多分拍手の音と緊張に慣れたんだろう。


「そのまま壇上へ上って」


言われるままにそこへ上った。


「こっちを振り向いて」


アリアが言う通りに僕は振り向いた。

そこには豪華絢爛な男女、食事、装飾があった。


拍手がより強くなって徐々に収まっていく。

アリアが手を挙げて制したのだ。


僕は頭を方々へ下げた。

どうもどうもとさえ口から出た。


アリアは呆れた調子で額に手を当てていたし、中にはくすくすと笑う声さえ聞こえて来た。

その方が僕には良かった。


「この度の事件で栄えある成果をもたらした夏厩夏天だ。現在は私の客分として城で暮らしている。みな、盛大にもてなしてくれ!」


それからは緩やかな音楽が流れ始め、アリアが僕を案内してくれた。

やれ、どこそこの人で、あれこれの事を職としているなど多くの人々に僕を名乗らせた。

みんな、決まってこの度の活躍ぶりは素晴らしかったと言うのだった。


ノアが言ったようにこの事件のあらましや黒幕、そもそもの原因など話をして次回の活躍も期待すると言われると僕は参ってしまった。


ようやく解放されたのは大広間を前から後ろまで2往復ぐらいした頃だった。


「お疲れ様でした」


こうした会は初めてだと言って夜風に辺りにテラスの方へ出るとノアがグラスを2つ持って来てくれた。


ノアは僕がアルコールを飲めない事を知っている。

グラスの中は果汁のジュースだった。


「こんな感じなんだね」


「はい、1度でいいと思います。何度やってもそう思いますよ」


「どこにいたのさ?」


「端の方にいました。ずっと見ていましたよ。ずいぶん緊張していましたね」


「こんなに緊張したのは初めてだよ」


僕が嘆くのをノアは微笑んで聞いてくれる。

それからも軽くなった僕の口は色々な事を話した。


ノアもドレスを着ている。

アリアと比べるのは良くないように思うけれど彼女が白を基調にドレスアップしていたのに対してノアは灰色を基調に選んでいたようだった。

ティアラもない彼女の頭は見事な銀髪が輝いている。

そしてこれを機に髪を整えていた。


「髪の毛を整えたの?」


「はい、分かりましたか?」


「分かるよ、いつも見てるんだから」


「まあ」


ノアは照れくさそうに小首を傾げて垂れた前髪の影に目を隠してしまうと綺麗な銀髪を撫でている。

彼女の髪は肩の辺りまでの長さで整えられている。以前までは雑に切ったような乱れた髪をしていて聞くとローグロウにある実家から塔までの旅費を稼ぐために自分で切って売って金にしたそうだ。

それまでは腰下まである長い銀髪だったそうでそれはそれで見てみたいなと思う。もったいない。


「そ、そういえば最近、ベルティーナを見ませんね。喧嘩でもしたんですか?」


「ううん、しないよ。全然見ないんだ。どうしてるんだろう?」

「寂しいですね。とても賑やかな妖精たちでしたから」


「うん」


なんだか色々な事を乗り越えて来ただけに彼女の不在は本当に寂しい。

今ごろは何をしているんだろう?


「こんなところに居たのか」


アリアが隣にこれまた素晴らしい美人を連れてやって来た。

アリアにそっくりだった。ただ少しだけ彼女よりも背が高くて肉付きが良い。

おっとりした優しい目をしている女性だった。

1度でも敵意のようなものを抱いたら出来そうにもない目をしている。動作も緩やかに見えるのは着ているドレスのせいと歩く速度が極端に遅いからだろう。


「アリア、ちょっと疲れちゃったよ」


「ふん、軟弱者。また功を成したらこんなものじゃないぞ。首都に呼ばれたらこの10倍はいるからな」


「アリアちゃん、ご紹介してよ」


「あ、はい。マリアお姉様、こちらは夏厩夏天(なつまや かてん)とノア・エメリカです。初めにご紹介にあった通り大変な働きをしてくれたのが両名です」


「はじめまして」

「はじめまして、お会い出来て光栄です」


「はじめまして、アリアちゃんがいつもお世話になってます。姉のマリアです。いつもは南国のフンボルで植物研究をしています。でも、もうすぐ終わる予定なので近々帰ってきます。その時はまた仲良くして下さいね」


「庭園を見ました。立派な庭園ですね」


「ふふ、ありがとうございます」


「お姉様、帰って来るんですか?」


「さっきお話したじゃない。もういつもしっかり聞いてねって言ってるのに」


「いいえ、お姉様は私にはしていません。他の者ですよ」


「そうだったかしら。う~ん、今知ったんだから良しとしましょう。でも、それなら私はどこで誰にお話したんだったかな」


「いつ帰って来るんですか?」


「実は今回の帰省で大方の荷物は持ってきてしまったの。後は向こうに置いてる機材や持って来れなかった標本を持ってくるだけなのよ」


「お姉様はいつも急ですね。フンボルに行くって聞いたのも前日でしたよ」


「あら、言ったわよ。だから、しっかり聞いてねって言ってるのに」


アリアはマリアお姉様には勝てないみたい。

そんなやり取りを見ているのが新鮮で面白かった。


それからは色々な話をした。

マリアさんの話しぶりはやっぱりおっとりしていてずいぶん聞き取りやすかった。


夜はどんどん更けていく。

夜空に浮かぶ星は僕が日本で住んでいたあの場所では見られないような満点の星々だった。

この景色とアリアとノアのドレス姿を見れただけでも今日の祝賀会に参加して良かった。


祝賀会はそうして終わった。


部屋に戻って礼服を脱いだ解放感をひとしきり味わって僕は眠りについた。

ベッドに横になって目を閉じた瞬間に何かが部屋の中で動く微かな気配がある。

僕は似た感覚を思い出している。


ベルティーナだ。


起き上がって呼びかけた。


「ベルティーナ?」


他に人は誰もいないのに僕は声を潜めて呼びかけていてそれがちょっとだけ可笑しかった。


「あら、勘は良いってワケね?」


ベルティーナじゃない。


「誰?」


あの姉妹でもないように思えた。


「グランディーナよ、よろしくね」


あの日にいなかった姉妹だ。確か最近とても忙しくしていると言っていたっけ。


「よ、よろしく。それで何しにここへ?」


なんだか嫌な予感がする。


「別に用って程でもないわ。ベルもお姉さま方もみーんな、あなたの事を話してるんですもの。ちょっとだけ気になって見に来たのよ。ふーん、それがお顔ってわけね。それほどかっこいい感じじゃないわね、私の良い人の方がかっこいいわ。それにあなたほど簡単じゃないの、あの人の方が断然難しいわね。でも、そこが良いって事ね。あら、怒っちゃ嫌よ。でも、怒っても良いのよ、私の用は済んだから出ていくだけだわ」


姉妹と言うだけあってそっくりだったがこのグランディーナはほんの少し冷たい性格をしているように感じた。


「ベルティーナは元気?」


「ええ、元気よ。あの子が病気なんてしてるところ想像できる? 私はそんな無駄な事はしないわね。だって、考えるだけ無駄だもの」


「最近、見なかったからちょっとだけ心配してたんだ。元気なら良かったよ。帰ったら僕も元気だよって伝えておいてね」


すると、グランディーナは大きく笑い始めた。


「ねえ、一つ聞いていいかしら。いいえ、一つ聞くから答えてよ。そうよ、聞いていいかしらなんて前置きなんて要らないわよね。あなた、べルティーナと約束をしてないの?」


はて、何の事やら分からない。

いつかべルティーナが約束をたくさん拵えるなんて言っていたけれどその時に約束なんてしただろうか。


「約束?」


ヤバい。何かあるような気がするし、無いような気もする。


するとグランディーナがまた笑った。今度は宙に寝っ転がって足をバタバタさせて手を腹に置いて笑っている。


「そんな事だろうと思ったわ!!」


グランディーナは笑い続けた。


「どういう事さ?」


「あの子ったら『あの人が来てくれるのよ!!』なんて言って家中の掃除や整頓に追われてたのよ。それでいつかしら、今日かしら、明日かしら、なんて言って待ってるんだから。そういうお転婆なところがあるのよ、あの子には!!!」


僕、言ったかもしれない。


ベルティーナは僕が家を訪ねるのを待っていたから来なかったんだ。

しまった、大失敗だ。でも、いつの事だろう、そんな約束をしたのは。


グランディーナが笑い続けている。

なんだかそれが段々腹立たしく思えて来た。


「ねえ、止めてくれないかな。そんな風にして笑い続けるの」


「あら、あんたが私に注意したの? 嫌よ、よしてよね。私はベルティーナじゃないのよ。グランディーナなのよ。あんたの言う事を聞いて、はいそうですかって従う女じゃないのよ!!」


グランディーナは「私に注意なんて二度としないでよね!!」と続けた。


なるほど、姉妹でもやっぱり性格が違うもんだな。

僕の妹たちもオタク趣味なんてまるでない類の人間だもの。


「あーあ、もう笑ったら疲れちゃった。どんな人か見るために来たけれどよく分かったわ。私の良い人の方がかっこいいし、頭が良くってよ!」


「困ったなあ」


「ふふ、それじゃあ、私は帰るわね。もう用が済んだもの!!」


グランディーナは飛び去ってしまった。

この姉妹は嵐のようだけどそれぞれ形や性質は異なるみたいだ。


僕は決めた。


ベルティーナに会いに行こう。


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