悪役令嬢は仲間を作るそうです
パチン
「シャル〜」
目を開けてみればそこは見慣れたあの草原、そして目の前には白髪の女性がいた。
「エト...その姿に戻ったんだ。」
「そうなのやっと戻りつつあるのよ〜ってそれよりイアンツィーだった!!」
パチン
「うわぁー!!」
エトがまた指を鳴らすと、イアンツィーが叫び声をあげながら降りてきた。というより落ちてきた。
「もう、うるさいわね。」
パチン
エトの指の音と共にイアンツィーは地面スレスレで止まって、落とされた。
「痛い...。」
「夢空間なんだから痛いはずないじゃん。さっきからうるさいわよ。イアン。」
「レっレダ様。何故お呼びに?と言うより、シャルさんとはどういう...」
「あぁー本当にいっつも質問が多いよ。イアンの心はなんでそんなにネガティブな言葉しか出ないのかな〜。まさかシャルちゃんにもビビるとは思ってなかったー。」
(どういうこと??)
「シャルちゃん。この子はちょっとした知り合いなの。シャルと同じように何回かここに呼んだんだよね。」
いつもより少し早口で話すエトはいつもより感じた。まるで何かを隠すように、どこか無理やり笑うように見えた。
(どうして。)
「シャル、ノームルも言ってたけど、神を信じすぎてはいけないよ。私は神だけど、なんでもできる訳じゃない。だから、一人くらいシャルの事情を知っている仲間がいた方がいいと思ってね。」
(なんで、そんな突き放すようなこと。)
「いくら運命の女神だとしても、最後に全てを決められるのはあなたたち人間だから...」
「待って!!エト!!」
私はいつの間にか子どものように泣きじゃくっていた。しかし、エトの指は鳴らされた。
パチン
「ごめんねシャル...」
シャロルがいなくなるとそこに残ったのは、イアンツィーとエトだけだった。
「本当にどういうことなんです?」
エトが少し涙ぐむので話しかけるのは躊躇われたがさすがに気になって話しかけた。
「私は光の女神としてではなく、運命の女神として一人の子を助けてしまった。しかも、死という大きな運命をねじ曲げたの。その影響は今も続いている。それによってもう私でさえ未来は見えなくなってしまったわ。」
「その一人って…」
「そう。あの子シャル...いえ、シャロル・エト・ヴァンビルゼね。」
「やはり、彼女はヴァンビルゼ家の子なのですね。あの黒髪に吸い込まれそうなあの琥珀眼。ヴァンビルゼ家でなければおかしい。」
「でも、今周期で彼女はヴァンビルゼ家とは関係ないわ。私の力では生まれる場所しか変えることが出来なかったの。本当は今周期で彼女の母のような薄桃の髪にしたかったのに〜」
さっきの涙などなかったようにエトは目の前の机を叩いて悔しがった。
「薄桃ってそれもそれでノームル家の象徴じゃないですか...えっ?シャルさんのお母様ってノームル家の方なんですか??」
「はぁ〜イアン。絶対にシャルの味方だって約束して。彼女がいなければ、あなたの妹は今頃死んでいた。命をかけるくらいいいでしょ?」
サラリとエトは怖いことを言う。これこそが神なのかとイアンツィーは思わされた。
「もちろんです。」
「ふ〜。よし、じゃあシャルちゃんをよろしくね。もう帰って、シャルの話聞いてあげて?今ちょっとパニックかもしんないけど...」
パチン
「......。」
私は何も考えられなかった。
エトが...裏切る。
一人になった私を助けてくれたのはエトだ。そのエトが裏切るなんて考えられなかった。
「シャルさん。私が思うに、レダ様はきっと私たちの味方です。いえ、絶対にシャルさんの味方です。そして誰よりも私たち、人間を愛している神です。それは色んな神と接してきた私が保証します。」
見上げれば、そこにはイアンツィーが手を差し伸べていた。いつの間にか私は道にしゃがみこんでいたようだ。
夕日が影を作りその表情はよく見えないが、イアンツィーは優しそうに微笑んでいるようだった。
「あっ...」
差し伸べられていた手はいつの間にか私の頬を撫でて涙を拭いた。
「《規約:我がイアンツィー・ガべ・ドレッディーンの名の元。対象:シャロル・エト・ヴァンビルゼ。この真名を掛けて僕は、シャルさん。君の味方です。君の全てを信じます。》だから、シャルさんの話を聞かせて貰えませんか?」
そう言ってイアンツィーは改めて私に手を伸ばした。
(真名を掛けるって...)
真名を掛けるということは私に命を捧げるも同然になる。私が死ねば、イアンツィーも死ぬ。そんな関係になる。
(そんなの....)
「っ!!」
イアンツィーは真剣そのものだった。私を平民の少女だからと侮るようなことはもうしない。私に断らせる気はないようだ。
『シャルの事情を知っている仲間がいた方がいいと思ってね。』
(そうだよね。仲間...隣に誰かがいるというのはとても大切なこと。)
「いいですよ。話します。私の事、イアンツィーさんのことも教えて下さいね!!」
私はそう言ってイアンツィーの手を取った。
私たちの手の甲には、天使の羽のような紋様が光を放ち、刻まれて消えていった。
I˙꒳˙)ちなみに...最後に出てきた天使の羽のような紋様、これが《規約》の証となります。天使とはこの世界では光の女神の使いとなります。つまり、その使いがずっと見守っている。監視している、規約違反はできない。ということになります。
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(人 •͈ᴗ•͈)




